twenty three bullets エヴァンスのチームリーダー:児島誠司郎

「で、どう展開する? 児島」

「え?」

 俺の問いの意図が分かっていないらしい。

「どう戦うかってことだよ」

 俺は呆れながら説明する。

「普通に囲い込めばいいんじゃないですか?」

「ま、それが一番簡単だよな」

 梁間はやる気になったようで早速ゴーグルをかけた。

「作戦も決まったし、行くぞ」

「いってらっしゃ~い」


 北原はフィールドに通ずる扉を開けた。扉が開かれ、中に入っていく。

 フィールドから控室に空気の流れができると、仄かな薬品の匂いが鼻をくすぐった。広々とした空間は身長より遥かに高く組み立てられた収納棚に、たくさんの段ボール箱が入れられている光景で埋め尽くされている。

「物流倉庫か……」

「本格的ですね」

 滝本は壮観な光景を見回して呆気に取られていた。

「さ、児島リーダー。配置を決めてくれよ」

「児島リーダー!?」

 噛みしめるように繰り返す児島。

「なんだよ」

 梁間は児島の反応をいぶかしげに問う。

「もう1回言って」

「児島リーダー、さっさと配置を決めろ」

 俺は鬱陶しい児島を急かす。

「児島リーダーを雑に扱わないでくださいよ椎堂さん!」

「真剣にやらないとずっとベンチだぞ」

「うっ……分かりました」


 児島は等間隔に並べられた収納棚の景色を見回す。

「えっと、新内さんと北原さんは後方サイドに張ってください」

「了解」

「あと、梁間さんは今回ショットガンですから最前衛に」

「おっす」

「そのすぐ後ろに滝本さん。で、梁間さんを挟んで僕と椎堂さんが両サイドに」

「了解」

「じゃ、早速配置に」


 児島の号令でみんなが散らばる。弾倉に弾を込め、安全装置を外す。弾を込め終えた俺は、開始の合図を待つ。

「両チームの準備完了の確認が取れました。開始5秒前、4、3、2、1……」

 有料でゲームの審判役をしてくれる施設のスタッフが、カウントしてゲームの開始を告げる。

 俺は隠れることなく歩いていく。

 1人でかつ序盤から隠れる必要はない。普段なら足音に警戒をする。しかし、必ずキツネ役は1回発砲する必要があり、たとえ1人やられたとしても、チームの方が有利だ。ただ人の背丈を軽く超えた収納棚が陳列されているため、視界は悪い。


 陳列棚の間をどんどん進む。各通路の幅は確保されており、動きやすい。奥行きのある視界の先にはまた違った雰囲気の空間が広がっているようだ。俺はその場所に辿りつく。

 ローラーコンベアが円を描いて設置され、円の外側から真っすぐ伸びるローラーコンベアのラインが4つ。壁にできた小さな口に続いている。本格的に物流倉庫を模している。

 俺がいる右側の壁際には、折り畳まれた段ボールを雑に入れているカゴ台車がいくつも並んでいる。もう中間地点くらいには来ているはずだが、一条の姿はまだ見えない。

「こちら椎堂。誰か一条の姿を見たか?」

「左サイドはいない」

 カゴ台車がずらりと並んでいる壁際にはフォークリフトが停めてある。

 静かだ。足音すら聞こえてこない。不自然なほど一条の気配がないことを疑問に思いながら警戒を強めて進む。

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