six bullets 夜の和み
シャワーを終えた後、俺は1人で夕食を食べた。場所はホテル内にある和風レストラン。魚の旨みを染み込ませた雑炊や小松菜とレンコンの煮つけなど全部で7品。不本意ではあるが、せっかく旅行に来たのだから楽しみたい。というか、楽しまなきゃやってられない。
他の奴等と食事も良かったが、仕事帰りにさらわれたり、荷造りをさせられたりと色々あり過ぎてちょっと1人になりたかった。
俺は食事の余韻を感じつつ、レストランを出る。1階のラウンジを横切り、エレベーターに向かう。すると、ラウンジの片隅のテーブル席に座る北原が見えた。1人のようだ。携帯に視線を落としている。
こんなところで何をしてるんだか。ずっと気になっていることを聞きたい衝動が湧き上がってくる。もしかしたら、北原から何か聞き出せるかもしれない。俺は北原のいるテーブルへ近づく。
「こんなところで何してるんだ?」
「おう、椎堂か。女同士で温泉入ってたんだけど、滝本と未生は長風呂派らしくてな。私は先に上がってまったり夜のバカンスさ」
「そうか」
「お前1人かよ」
北原は鼻で笑う。
「北原も1人だろ」
「私は待ちぼうけしてんだよ」
すると、北原は顎をクイっと上げて戻す。何かを訴えるような視線。おそらくだが、俺にもここで何をしているのか聞きたいということだろうか。
だったら口で言ってくれと思う。面倒な合図を送る北原にげんなりしつつ口を開く。
「俺はお前達のせいで疲れたから、1人で静かに過ごしたかったんだ」
「文句なら未生に言えよ」
「お前も片棒を担いでるだろ」
「チームのためと言われたら仕方ない。お前はエヴァンスチームのマネージャーなんだから」
「……は?」
何を言ってるんだ、この女。
「あはははははっ! 傑作だな!! その様子じゃ全然知らされてねぇんだろ!?」
北原は馬鹿にするように笑い、俺を試すように見てくる。
「ま、もう言っていいだろ。臼井の目的を教えてやるから座れよ」
北原はテーブルの端を叩く。俺はなんだか掌の上で転がされてるようでムカついていたが、このまま何も知らないままずっとここにいるよりはいいだろうと思い、渋々席に着いた。
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