nine bullets 北原夏希
1ヶ月後。あれからエヴァンスチームはちょくちょく練習しているようだが、練習量は確実に足りないらしい。
俺は相も変わらずペイントスクエアへ通っていた。更衣室で着替え、セーフティエリアへ入る。とりあえず試射に行こうと思った時、北原さんを見つけた。1人で席に座って、携帯をいじっている。
スナイパーライフルは、スコープや弾倉などが外された状態で横長の白いテーブルに乗っている。女王の貫禄というべきか。北原さんは場所を取るスナイパーライフルをテーブルに置いているため、前方の席の人が置けるスペースがなくなっていた。
臼井さんはいないのだろうか。俺は北原さんに近づいてみる。
「1人か」
「おう。椎堂か。ああ、今日は1人だ」
北原さんは笑顔で接してくる。話してみると結構優しい人だと思えてからはそんなに恐怖心を感じなくなった。
「珍しいな。北原さんが1人なんて」
「まあな」
「他の奴等は?」
「仲間集めに奔走中だ」
「北原さんはしなくていいのか?」
俺は真向かいに座る。
「私もしようと思ったけど、私はしなくていいって言われて、何もやることないから練習だよ」
「そうか」
逃げられるんだな。
「北原さんと臼井さんは同じ施設で会って話すようになったのか?」
「いや、初めて会ったのは会社だ」
「え?」
北原さんは携帯に視線を落としながらも話してくれる。
「私達は同じ会社で働いてるんだ」
「そうだったのか」
「同期で入ってあいつが広報課、私が経理課。違う課で話す機会なかったけど、趣味が同じっていうことが分かってからはなつかれてね」
そして、たまにこうして顔を上げて会話してくれる。意外と親しみやすそうだが、なんせ顔つきが基本睨んでるからな。
「意外だな」
「あいつはああいう感じだから、いつの間にか隣にいるのが当たり前になってたな」
北原は微笑を浮かべる。呆れているようだが、それがなんとなく信頼し合っているような笑みに見えた。
「それを言うなら、お前と児島が一緒にいたのはなんなんだ。会社の先輩後輩か?」
「いや、ランダム形式でたまたま同じチームになって、危なくなってたところを助けたら犬のようにくっついてきただけだ」
「ふふ、お互い変な奴になつかれたな」
北原さんは口角を上げ、薄い笑みが自嘲と嘲笑に揺れる。
「まったくだ」
俺は気苦労が絶えない無邪気な男の顔を浮かべて
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