第30話 応仁の乱を起こしたポンコツ将軍? 足利義政

 朝廷軍を退け、室町幕府を樹立させた武人! 初代将軍、足利尊氏


 南北の平定に力を尽くした、陰の功労者! 2代目将軍、足利義詮


 南北を合体させ、室町の栄華築いた知将! 3代目将軍、足利義満


 外国との貿易は止めた。親父嫌いの将軍! 4代目将軍、足利義持


 酒の飲みすぎで早死にした、アル中将軍! 5代目将軍、足利義量


 キレやすさは天下一品! くじ引き将軍! 6代目将軍 足利義教


 早死にした悲劇の将軍! 足利義勝


 初代~3代目はカッコいいですが、4代目からおかしくなってきますね。


 8代目将軍、足利義政あしかがよしまさにつける通り名は、『ポンコツ将軍』がふさわしいでしょう。


 


【やる気があったのは最初だけ】

義政「さあ! 将軍になったから、頑張るぞ!」


 最初は積極的に政治を行っていた義政でしたが……


「あーしたほうがいいですよ!」

「こーしたほうがいいですよ!」

「そーしたほうがいいですよ!」


 外部からの政治に介入され、どんどん主導権を失っていった義政は……


義政「俺の思い通りにならないし、将軍の意味なくない?」


 こんな感じで、やる気を失っていき、政治ではなくアートに興味を持ち始めました。その結果……


義政「こういうね。質素で、深みのある感じがいいんだよねぇ」


 義政を中心に東山文化が発達していき、地味だけど奥ゆかしい美しさを持つ銀閣寺が建てられたのです。



【乱れていく情勢。しかし将軍はアートに夢中】

 世の中が平和だったら、将軍がアートに一生懸命でも問題なかったでしょう。しかし国内の情勢は徐々に乱れ始めていました。


 まずは義政の妻である、日野富子ひのとみこのお家騒動です。


 富子は子供を産むのですが、すぐに亡くなってしまいました。


富子「うわーん! なんで死んじゃったのよ」


 残念ですが仕方がありません。


富子「おいまが呪ったからよ! 捕まえさい!」


 なんと! 富子はとんでもないことを言い出しました。お今という女性は、義政の乳母うば、要するに育ての親です。


 現代だったら、「呪いのせいだ!」と言っても、笑われるだけですが、この時代の人々は呪いや祟りを本気で信じていました。


サムライ「富子さん! わかりました! お今、お前を逮捕する!」


お今「ちょっと待って、私呪ってなんかいない、いやあああああ!」


 なんと富子の命令でお今が、逮捕され、島流しの刑の処されました。


 育ての親が大変な事になっているにも関わらず義政は……


義政「いやぁ、俺が作った銀閣寺、いいねえ」


 アートに夢中でした。


 こんな感じで室町幕府内は、足利家よりも、嫁の一族である日野家の権限が強くなっていきます。


 幕府内がグダグダしている中、飢饉が発生しました。この災害により、多くの餓死者が出てしまいます。


 国の一大事。将軍の手腕が試されますが……


義政「いやあ、こういうね。地味だけど、奥ゆかしいのがいいんだよね。俺の考えた東山文化、最高!」


 飢饉が起きているのに関わらず、義政はアートに夢中でした。さらに……


人民「お腹すいたよー ( ノД`)… 」


 人々が餓えているのに、関わらず義政は……


義政「俺の考えた書院造、やっぱりいいわぁ。」


 こんなことを言ったかどうかわかりませんが、情勢が乱れているのに、日本庭園を造営したり、『花の御殿』と呼ばれる自宅を改築したのです。


 これを現代で例えると、金融恐慌が起きて多くの人々が失業している最中、内閣総理大臣が家を新築するようなものです。


 もはや政権を奪おうとしなくなった朝廷ですら、しびれをきらし……


天皇「足利くん、多くの人民が苦しんでるのに、それはマズイよ……将軍として、しっかりして!」


 このように注意を受けますが……


足利「こういう、奥ゆかしいのがね……」


 やっぱりアートにしか目がなく、天皇を無視しました。



【母の愛が国を揺るがした!】

義政「俺、政治よりアートに向いてるわ。さっさと将軍を譲って、隠居しよ」


 こんな感じで、義政は早々に政治から引退しようと考えていましたが、あと継ぎとなる子供がいません。そこで、弟をあと継ぎに選びました。


義政「俺、子供がいないから、義視が次の将軍やってよ」


義視「わかった!」


 こうして、次期将軍は弟の足利義視あしかがよしみに決定したのですが、問題が起こるのはこの後……


「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」


富子「やったわ! 男の子が生まれたわ!」


 なんと、次期将軍が決まってすぐ、義政の妻、富子が義尚よしひさという男の子を生むのです。


義政「やった、ついに子供ができたね」


富子「将軍のあとを継ぐのは、義尚にしましょう!」


義政「いや、もう、あと継ぎは義視に決まってるから」


富子「いやよ……私は、この子を……義尚を将軍にしたいよの! 義視じゃ嫌だ!」


 ここで、義政が「コラ、富子! あと継ぎは決まってるんだから、ワガママ言うじゃない!」と、ガツンと言えば、よかったのかもしれません。


 しかし義政が富子を止めることはありませんでした。そして……


富子「持豊もちとよくん! 義尚を将軍にしたいのよ! 協力して!」


 室町幕府でも有力なサムライ、山名持豊やまなもちとよに協力を求めたのです。


持豊「富子さんが、そういうなら、わかりましたよ」


 一方、富子が義尚を将軍にしようとしていることを知った義視は……


義視「俺が次期将軍に決まってるのに、富子がワガママ言ってるみたいだから、勝元くん、協力してよ!」 


勝元「わかりました!」

 

 義視は細川勝元ほそかわかつもとという人物に、協力を頼みます。


 こうして室町幕府内であと継ぎが決まっているのにも関わらず、『富子VS義視』による、後継者争いが発生しました。


 まさに“母の愛が、国を揺るがした”と言っても過言ではないでしょう



【さらに、ややこしくなる争い】

 日野家VS足利家によるお家騒動が起きている最中、争っているのは幕府内だけではありませんでした。


 同じ頃、畠山家はたやまけと、斯波家しばけが、後継者問題でケンカしていました。


 さらにややこしくしたのが、畠山家が斯波家までもが、将軍家に加勢していた山名持豊と細川勝元を頼った事たです。


 各一族のお家騒動が重なり合い、一つの大きな争いとなりました

 

 こうして1467年『応仁の乱』という、大戦争が京都で勃発したのです。


 ややこしいので、簡単にまとめます。



・西軍

大将 山名持豊


将軍家 日野富子&足利義尚




・東軍

大将 細川勝元


将軍家 足利義視



 京都では西軍と東軍がぶつかり合い、戦場となりました!


西軍「オラオラオラオラオラオラ!!!」


東軍「無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」



 京都で大戦争を繰り広げていにも関わらず、将軍の義政は……」


義政「この、奥ゆかしいのがね。いいんだよ」


 争いを止めることはなくアートに夢中でした。




【そして戦国時代へ】

 ポンコツ将軍をよそに、応仁の乱は激しさを増していき、なんと11年も争い続けたのです!

 

 戦争によって、京都の都は荒廃していくし、室町幕府内で争っているから足利家の権威は低下していきます。そして……


持豊「急に、体調が悪く……ウッ!」


勝元「急に、体調が悪く……ウッ!」 


 もっとややこしいことに、両軍の大将が戦ではなく、病気によってなくなりました。


 こうして決着がつかないまま、応仁の乱は終了。


 勝敗が曖昧なので、なんともスッキリしない争いだったと言えます。


 結局、将軍は義政の息子、義尚が継ぐのですが、室町幕府の権威は地に落ちており「足利家? なにそれ美味しいの?」と言われる有り様。


 応仁の乱の影響で、室町幕府は「もうやめて! 足利の信用は0よ!」状態になってしまったのです。


 応仁の乱の火種は各地へと燃え移つり、日本はあらゆるところで戦が起こるカオスな状況になっていましました。


 さあ、いよいよ、サムライ達が争い血で血を洗う戦国時代がやってきます。


 室町幕府は戦国時代になっても滅びる事なく、あの有名な戦国武将、織田信長が登場するまで存続します!

 しかし応仁の乱以降が戦国時代と言われているので、室町時代編はここで終了し、次回からは戦国時代編を始めたいと思います!


 

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