事件調査部、始動! ……指導?


 さて、結愛には公園に通らないように注意を促して登校。

 さらに時は流れて放課後となり、俺達四人は事件調査部へと向かっているところである。あ、スリートに任せてあるからフィオとエリクもすぐに合流予定だ。


 「お疲れ様でーす」

 「ああ、もう放課後か早いな」

 「おつかれい!」

 「あら、若杉刑事が言っていた人かしら?」


 部室に入ると同時に資料に右奥の机に座って目を通していた若杉刑事が俺達に気づき声をかけてくれ、逆サイドの机に座っている男の人がこちらを振り返りながら元気に挨拶をしてくれる。

 年のころは二十代前半ってところかな? 若杉刑事や本庄先生より少し若いって感じ。

 くせっ毛のあるパーマがかった髪を真ん中で分けていて、スーツはきちんと清潔感もあり、結構なイケメン……刑事だと言われれば納得するだろう。


 「紹介するよ、警部補の宇田川 史樹うたがわ しき。今日からこの学校の警戒と事件調査部に協力する人間だ」

 「うっす、宇田川です! いやあ、俺もちょっと前まで高校生だったのに、妙に懐かしく感じるなあ。一応、剣道と柔道、それと射撃の腕は任せてくれ!」

 「お、おう……見た目さわやかなのに口調は豪快なんだな……あ、ですね。俺は神緒修といいます」

 「ははは、よく残念イケメンだとか言われるよ! 敬語は無くていいぜ。しかし面白いな、ここ」


 宇田川さんは俺達のところへ歩いてくると、まず俺に握手をする、


 「お、俺は坂上 霧夜ですだ」

 「田舎者っぽい!? よろしくな!」

 「わたしは興津 真理愛です♪」

 「お、可愛いね! よろしく」

 「私が部長の八塚 怜よ。こっちは飼い猫のスメラギ」

 「ぶにゃー」

 「君のことは聞いているよ、八塚コーポレーションの令嬢だろ?」


 いたのかスメラギ……全然気付かなかったけど、校舎内には居なかったのだろう。


 「その認識でいいわ。異世界の話は?」

 「さっき目を通したぜ。誘拐事件の被害者、八塚ちゃんと、今ここにいない二人が異世界の住人だってことくらいだけどな」

 「……オッケー、それじゃフィオ達が来るまで少し待ちましょうか」


 どうやら口調とは裏腹にしっかり仕事はできそうなタイプだなと思いながら宇田川さんを見ながら椅子に座っていると、俺に目を向けて口を開く。


 「修が……って呼び捨てでいいよな?」

 「ああ、構わないよ」

 「おし。修の前世は異世界で勇者って話も聞いている。それと魔法もな? いっちょ魔法ってやつを見せてくれないか?」

 「俺はいいけど……」


 と、若杉さんを見るとウインクしながら『危なくないやつ』でと訴えていた。それならと、俺は指先に魔力を集中させて一言呟く。


 「<トーチ>」

 「おお!? す、すげぇ……手品……じゃないよな……熱くないし」

 「これでいいか?」

 「サンキュー!」

 「なんでお前が礼を言うんだよ霧夜!?」

 「いや、他の魔法を見たことなかったしな!」

 「いいね、いいね、本庁勤めなんてつまらないと思っていたけど楽しくなってきた! 警部、お誘いいただきありがとうございます!!」

 「お前ならこういうところの方が活躍できるだろうと思ってね。『あっち方面』も強いみたいだし」


 と、笑いながら若杉さんが言ったところで俺は頭にふと疑問が沸く。


 「警部? 刑事じゃなくて?」

 「ああ、一般市民相手なら別になんでもいいんだけど、僕は警部で宇田川の一つ上の階級さ。よくドラマで『刑事』と呼ぶ場合が多いけど、実際には俗称でね。主に犯罪を担当する私服警官をそう呼ぶんだ。昔は巡査とか巡査部長がそう呼ばれていたらしいけど」

 「へえ、そうなんですね。私服の警察官が刑事だと思ってました!」

 「だいたい合ってるけどね、興津ちゃん。で、今日は――」


 と、宇田川さんが話をしようとしたところで入り口が開き、本庄先生が入ってくる。


 「お前……『あっち方面』とはどういう意味だ! まさかえっちなことではないだろうな……!」

 「違う!? 麗香、ちょ、力強っ!?」

 「まだ好きなんだねえ」

 「みたいだな……羨ましい……」

 「せっかくの登場なのに持っていかれたなあ……」


 生暖かい目で二人を見ながら俺達はフィオ達を待つのだった。本庄先生、麗香っていうのか……

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