第14話 エルネストの召喚
異国の使節団の訪問が落ち着いて、フレックもデュバルディオも少し時間の余裕が出来た頃、エルネストは、エスタヴィオに呼び出されていた。
「旧年中は公私ともにひとかたならぬご厚情を賜り誠にありがたく存じ上げます。至らぬ私を温かくご指導くださいまして心から感謝しております。陛下におられましてはますますのご健勝のこ⋯⋯」
「堅苦しい挨拶はそれくらいでいいよ。ここは謁見の間じゃないし」
気のいい年の離れた親戚のお兄さんのように微笑むエスタヴィオ。
だが、エルネストには、魔王の微笑みのように感じた。
秩序と礼節を重んじるエスタヴィオが、堅苦しい挨拶は要らぬと言う時は、よほど機嫌がいい時か、厄介な案件を持ってきた時だ。
そして、新年の美酒に酔っているようにも見えなくもないが、恐らく後者に違いない。
「
「いえ、陛下のお呼びとあらば」
「うん。時に、エルネストは、この初夏から2年間、兵役に出るんだよね?」
「はい」
それから、どう話が広がっていくのか⋯⋯ エルネストは身構えた。
「ま、とりあえず、座って。床に膝ついて上目遣いの相手と話したくないし」
「は」
そう言われてしまっては仕方ない。
ここは、謁見の間でも執務室でもない、エスタヴィオの個人的な居間である。
エスタヴィオが寛いで座っているソファとローテーブルを挟んで対面のソファに座る。
そのふかふかの座り心地にかえって落ち着かない。
「エルネストは、今何歳だっけ?」
「はい。17になりました」
「ふむ。フレックが結婚した歳だね。僕もだけれど」
農民も労働階級も貴族階級も、一様に初等科教育、
が、令嬢達は
家庭や婚約者の事情では、卒業を待たずして嫁ぐ事も少なくない。
婚約者のいない令嬢や、婚約者が兵役で離れている場合でも、みな25歳までには嫁ぐものだ。
システィアーナとユーフェミアも16歳になり、本来は相手が決まっている歳でもあった。
「んー、ユーフェミアは、出来れば手元に置いておきたいんだよね。あれは、システィアーナやアナファリテと共にかなり教養を身につけていて、公務も任せられるくらいだからね」
そうですね、と相槌を打つ所だろうか?
エスタヴィオの話の本筋がまだ見えてこない。
「可哀想だけど、状況によっては、アルメルティアやフローリアナは、政略結婚で他国へ出す事も視野に、国内の貴族に降嫁することになるだろうけどね」
同盟国へ嫁がず、降嫁もしない。ならば?
「女公爵家を立ち上げるのですか?」
「うん、たぶん、そうなるかな」
なぜか、意味ありげにこちらを見るエスタヴィオ。
背筋に冷たいものが流れた。
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──婚約者のいない令嬢も、25歳までには嫁ぐものだ
この一文に、セルフツッコミ入れそうになりました
🔪_(︰3 」∠)_
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