第15話 その手が持っているもの
ボートのモーターを操作している戦闘傀儡にポールが直撃した。操縦主が壊れて動きが止まる。その隙に少年は距離を稼ぐ。
ボディーを電気ショックで焼かれた傀儡を別の戦闘傀儡が海に放り出す。ライフジャケットのせいで壊れた傀儡は海をぷかぷかと浮いてる。生命がないのにライフジャケットをしているのが少し面白い。
またボートが動き始める。しかしその直後に2本目のポールが飛来する。
(ドスン!)
「よし2体目の撃破!ナイスコントロール!この調子だ」
少年の頭上を続けて3本目と4本目が綺麗に弧を描き次々と飛んでいく。残る2体もポールが突き刺さって停止した。
『運搬を完了しました。次のご命令を』
「よし。待機していろ。ポールの回収に行くか」
少年は波に逆らってボートを反転させる。ポールを回収するついでに追って来た戦闘傀儡を調べる。まずは海に落ちた奴から回収だ。海にぷかぷかと浮いている戦闘傀儡をボートに引き上げる。
「重いな。君も手伝ってくれる?」
「あうあうー」
「言ってみただけだよ笑。次はボートの方だね」
追って来たボートに横付けする。少年のボートよりも一回り大きい。3体の戦闘傀儡は胸にポールが突き刺さった状態で空を仰ぐ様に倒れていた。その中の一体は突き刺さったものを引き抜こうと両手で掴んだ状態で停止していた。どこか美しいと思える姿だった。
「なんか海賊ぽいね。乗り込んでやろう」
ゆらゆらと揺れるボートに飛び移って調べる。戦闘傀儡に突き刺さったポールを引っこ抜いていく。
どれも直撃の衝撃と電気ショックのせいで損傷が激しい。一番状態のいい傀儡の首の裏にみると、少年が持っている傀儡と同じ充電ケーブルの指す場所があった。武装の禁止プログラムがダウンロードされてるかしか違いはないみたいだ。誰の命令で襲ってきたのかデータを調べる。
「ダメだ。セキュリティが高度すぎる。分からないや」
傀儡本体は諦めて持ってたライフルを調べる。傀儡も人間と同じライフルを使う。これは人型ロボットである傀儡シリーズの歴史に関わる。
戦闘傀儡の開発段階では、傀儡専用のライフルを開発してその代わり本体の指の構造を省略する事も検討された。人間と同じ様な手にすることはコストが高かったからだ。
この発想は道具指向型設計思想と呼ばれた。その為、この設計思想で作られたライフルは人間が使うことができない。引き金もついていないライフル。しかし専用のライフルは採用されなかった。
理由は大きくは二つあるとされている。一つは戦闘傀儡の手の構造を簡略化してコストを下げたとしても、専用の道具を生産すると道具と本体全体で見て、さほどコストの削減には繋がらなかったこと。
二つ目は傀儡は人間の労働者と共に行動することが原則とされたからだ。一緒に作業するのには、同じ道具を使えることは利便性が高かった。
これを本体指向型設計思想と言う。整備コストが高いにもかかわらず戦闘傀儡が人型をしているのはこの背景にある。戦闘傀儡の手は冷たいが確かに人の手の形をしている。
少年は戦闘傀儡のライフルを構えてみる。
『登録ユーザー以外の操作を感知しました。トリガーをロックします』
「やっぱりか、僕のと同じだ。スマートライフルか。管理ソフトが組み込まれてる」
少年はしゃべるライフルを見ながらあることに気がつく。
「このライフル、弾がはいってないぞ」
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