第2話 赤ちゃんとサバイバル
総人口一人となった日本に新しく国民が増えた。少年と赤ちゃんのサバイバル生活が始まる。動画配信者の仕事に加えてワンオペ育児の始まりだ。
「さぁて、どうしようか?」
少年は赤ちゃんの入ってる超高性能ベビーカーのガラスをコンコンと軽く叩く。今はぐっすり寝てるみたいで反応がない。赤ちゃん全体を丸くガラスが覆っていていつでも様子が見られて便利だ。少年のスマホにメッセージが届く
『見守りベイビーアプリと、スマートベビーカー操作アプリをダウンロードして下さい』
少年のスマホに二つのアイコンが加わる。哺乳瓶マークと揺り籠マークのアプリだ。赤ちゃんの日々のお世話を補助するアプリとベビーカーの操作をするアプリだ。このベビーカーは車輪が付いてて、バッテリーで自走するからそのアプリみたいだ。
「へぇ便利だな、遮音機能、夜泣き通知モードってある。親切なもんだ。これで配信の時とかの泣き声が入らないな。泣くのが悪いわけじゃないからね?」
『赤ちゃんが起きました。』
赤ちゃんが目をパチクリさせて「あうわ!」って言った。
「うわ、起きた。おはよう、これからよろしくね。とりあえず車乗ろうか」
どこまでも続く無人の港、そこに留めてある車に2人で乗り込む。赤ちゃんはベビーカーごと、助手席に乗せた。赤ちゃんの様子をフロントに投影しとく。これで運転中も様子を見られる、元気そうでよかった。800万がここから出て行って、赤ちゃんが1人帰ってきた。
「これからまた荷物を取りに行くんだ。もう少しで食料がなくなるからね。君のおもちゃも買ったんだよ。さっきの港で受け取れば良いじゃないかって?それがねぇダメなんだ。荷物を積んだ無人輸送船が着岸できないんだ」
少年は配信してる時以外はあまり喋らない、彼1人しかいないから全て独り言になるからだ。でも今は1人じゃない、どうでもいい話を止めどなく話してしまう。赤ちゃんは「あう!」「っふんひ!」みたいな反応しかしないけど。
少年がいつも物資の補給に使ってるサービスは、韓国から無人輸送船で運ばれてくる。輸送船は海岸に乗り上げるタイプになってる。戦争映画の上陸作戦の時に出てくる船をイメージしてくれたら良い。その中に入って物資を下ろして、また輸送船は自動で韓国に帰る。さっきまでいた港は1人でも多くの日本人を海外に運ぶ為の大型船用設備しかないので、輸送船が揚陸できないのだ。埠頭の高さだけで3メートルある。
「もうすぐ着くよ。新しいドローンを頼んであるんだよね。あと食料とワクチンだね。燃料もあるけど」
輸送船は廃墟になった漁港に着く予定になってる。もうそろそろだ。漁港が見えてきた。かつては水産加工場だった建物が崩落している。その奥から黒煙が昇るのが見えた。
「変だ。なんだ、あの煙…あ、ごめんね大丈夫だよ」
車を海岸に止める。
「マジかよ、こんな事…」
煙の発生源は物資を乗せた輸送船だった。船体が大破して炎上している。ただ幾つかのカーゴは海面に浮いているのが見える。あの中にもしかしたら…
少年は海へと走った。あれには2人分の食料が積んであるはずなんだ。
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