第79話琴葉は帰ったら話したい

「え…」


 それで琴葉が兄離れしてくれるなら俺だってこんなに苦労してない!

 っていうか琴葉は俺と恋人になりたいのか…?

 なんか前に付き合ってあげてもいい的なことを言ってたけど多分冗談だろうし…

 俺のそんな考えなと露程も知らない男子生徒が俺に言ってくる。


「お兄さんが言えば絶対大丈夫ですって!おねしゃす!」


「……」


 でもまぁ…この男子生徒も勇気を振り絞って琴葉に告白してるわけだし、別に俺は琴葉と恋人関係になるつもりなんて微塵もない。

 だから恋人になれないっていうぐらいはいいだろう。


「琴葉、俺は琴葉とは─────」


「お兄ちゃん、なんか付いてるよ?」


「え?あ、あぁ…」


 琴葉はいきなりそう言うと俺の脇腹当たりを触り────つねった。


「痛っ!な、何を─────」


「ほこりついてたよ!お兄ちゃん、帰ったら洗濯しないとね!」


 と、琴葉は笑顔で言った。

 その笑顔を見て男子生徒はおろか周りの女生徒までもが和んだ顔になるも、琴葉とずっと一緒に生活している俺にはその一見完璧な笑顔をしている琴葉の目が笑っていないことに気づいた。

 そして琴葉はほこりを取るフリをして俺の耳元に口を近づけて言った。


「今何言おうとしたの?何言えばいいか、わかってるよね」


 そう言って笑顔のまま俺から離れた。

 …えっ、怖っ!本当に俺と一緒の環境で育ってきたのか?


「えっ…あぁ、えっーと…」


 さっきの琴葉の「何言えばいいか、わかってるよね」の意味は多分断れって意味なんだろうけど…俺としては琴葉に俺以外の恋人ができるのは大歓迎だ。

 それがこの男子生徒かどうかはともかくとして、とりあえず俺が恋人になることはないと宣言しておかないと本当に琴葉には恋人ができなくなる。

 ここは琴葉と少し仲が悪くなるとしても兄として言うべきだ。


「そうだな、俺は琴葉とは──────」


`キーンコーンカーンコーン`


「あ…」


 学校中にチャイムの音が鳴り響いた。


「じゃあホームルーム始まるからみんな席に座ってー!」


 そう琴葉が言うとみんな各々の席に着き、さっき琴葉に告白した男子生徒は急いで教室の外に出て行った。

 そして琴葉は俺とのすれ違いざまに言った。


「帰ったらちょっとお話ししようねお兄ちゃん」


「…え?」


 琴葉はそういうと自分の席らしきところに着いた。

 …チャイムのせいとはいえ俺は何も言ってないからきっと怖い話じゃないはずだと信じたい…


`ピロン`


「…ん?」


 危ない…マナーモードにしてなかった。

 俺は一応スマホ画面を見てみ──────


『マユ』


「─────っ!?」


 マユから…!?こんな時間に…?

 いや、まぁマユの学校も今日祝日だったとしても何もおかしくないけど…

 俺はマユからのメッセージを確認することにした。


『マトくん、今から遊べる?』

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