第63話琴葉は怒っている

 本当にこのままでは二次元で美少女が服を融かされるみたいなことが俺の身にも起きてしまう。…需要なさすぎて自分でも気持ち悪いぐらいだ、そんな展開は避けたい、けど…


「下、早く、融かす…ぁ、ぁ…」


 ルナは完全に暴走状態だな…かといってルナの手に押さえられてるせいでログアウトもできない、本当に手で操作することでしかログアウトできないのをどうにかしてほしいな…


「……あ」


 そういえば、これ仮に下を融かされたらどうなるんだ?

 ゲームの中だとトイレに行きたいなんて思うこともないから自分の体の局部まで見ることはないからわからないな…


「……」


 い、いやいやいや、流石にそんなところまで再現されてるわけないよな…

 ちょっと現実とは違うけどこのアバターは現実の俺を元に作ってるから、体格とかはそのままなんだけど…ま、まさか下半身の局部まで一緒なんてことはないはずだ。

 そもそもそんなところ最初に設定してないし?でもマユの話によると性行為とかもできるらしい。

 ……ど、どうなってるんだ…?


「マト…はぁ、はぁ…」


「ルナ、落ち着け、と、とりあえず早くクエストを─────」


『ブチッ』


「…え?」


 そんな電子音とともに俺の視界はブラックアウトした。…え?どうなってるんだ?何も感じない、感覚が消えた。


「…ん?」


 感覚が戻り目を開けたら、俺はゲーミングチェアに座っていた。


「…え?」


 ど、どうなってるんだ…?ログアウトした…?でも俺は何もボタンを押せてなかったのに…?不具合的な何かか?だとしたらナイスタイミングだけど…


「…あっ」


 俺は自分の上半身と下半身を触ってみるも、特に異常はない。


「ほっ…」


 何を安心してるんだ、あれはゲームなんだから現実に影響があるはずがないのにな…感覚が残ってるからどうしても気になってしまった。


「お兄ちゃん」


「…ん?琴葉?」


 なぜか琴葉が俺の部屋にいる。鍵は…いちいち閉めてなかったからこの部屋には簡単に入れるけどなんで入ってきてるんだ?


「時間」


「…時間?」


 俺は部屋にある時計に目を向けると、その針は時刻深夜1時15分を指していた。


「……」


「私1時に戻って来なかったらお兄ちゃんの服脱がすって言ったよね?」


「…言ってたな」


 でも俺の服は別に脱がされたりはしていない。


「お兄ちゃんがゲームしてる間に上の服だけ脱がしたから」


「えぇ…」


 別に妹にだから何か思うわけでもないけど恥ずかしさはちょっとあるな…


「それでも帰って来ないから電源コード抜いたの」


 なるほど、それでいきなり切れたのか…タイミング的にはナイスタイミングだったな。


「もう15分も過ぎてるんだよ?何してたの?」


「な、何してたのと言われましても…」


 ルナに動かなくされて危うく服を全て融かされそうになったなんて言えないしな…


「ちょっとゲームをしてたんだ…」


「そんなのわかってるよ!ゲームの中で何をしてたのって聞いてるの!」


「え、えーっと…そ、それより、は、早く寝ないか…?」


 ルナのことを考えるのは後だ、今は琴葉のことをどうにかしないと…


「早く一緒に寝たいのにそうさせなかったのはお兄ちゃんの方でしょ?」


「うっ…」


 それを言われると何も言い返すことができない…


「…はぁ、でも明日学校だし、早く寝よっか」


 そう言って琴葉は俺のことをベッドに引き寄せ、俺と肩を合わせて布団を掛けた。…やっぱりちょっと恥ずかしいけど俺たちは兄妹だ、変なことは考えるな…

 俺はできるだけ変なことを考えないようにとして、いつの間にか夢の世界に落ちていた。

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