第52話真冬とるな
「……」
れ、冷静になれ。この前の花龍院の時だってそうだけど、今はもう真冬とは友達として親睦を深め合うっていう方針になってるんだ。
真冬だってそれで納得してくれてるし、俺だけ変に意識してたら前と何も変わらない、ここは普通に接しよう。
「と、友達のるなだ」
「む……」
るなはまたも俺の左手首をつねった。
「痛い痛い!」
本当に地味に痛いからやめてほしい。しかも毎回不規則につねってくるから対処のしようもない、なんでつねられないといけないん────
「やめて」
真冬はるなに対してそう言い放ち俺の手をつねっていたはずのるなの右手の手首を俺から離し、真冬の右手で軽く掴んでいた。
「……」
るなが手から力を抜くと、真冬はその掴んでいた手を離した。
るなは真冬のことをものすごく嫌そうなものを見る目で見ている。
「ねぇ、誠くんのなんなの?」
真冬がるなに対してそんなことを言い出した。…何を言ってるんだ?
状況が飲み込めないためちょっと静観しておこう。
「マト、は、私の、婚約、者…」
「マト…?」
マトはH・J・Oでの俺の名前なため、真冬には何を言ってるのかわからないだろう。まあ誠からこを抜いただけだから簡単にわかるか。るなの喋り方だと自然に一文字抜けてしまっても違和感はない。
「マト…まさか、そんな…」
が、真冬は俺の思っていたのとは全く違う反応を見せた。…なんだ?どこか焦っているように見える。
俺がそんな真冬を見ていると、真冬は俺の方に振り返り俺に質問してきた。
「ね、ねえ、誠くん、この人とはどこで会ったの?」
「…どこで…?」
俺は質問の意味がわからず、しばらく沈黙してしまう。
本当の初めてと言うのであればゲームだけど、それを言ってもわからないだろうし初めて会ったのは学校だと言うことにしておこう。
「今日初めて会ったんだ、学校で────」
「なんで、嘘、つく、の…?会った、の、ゲーム、の、中」
「えっ…!?」
真冬は驚いている。確かに真冬みたいな基本的には優等生な女生徒にゲームの中で会いましたなんて言っても驚くに決まってる…
「…そうなの?誠くん」
「え?いや、まぁ…ゲームって言っても真冬にはわからないかと思って…」
「私は────…そうだね、でも…なんでもない」
真冬はそう言うと、るなの方を少し見てから自分のクラスに戻っていった。
「…私、あの人、どこかで、見た」
「ん?ああ、そうなのか…?」
まあ真冬は可愛いと美人を併せ持ってるから普段は学校に行ってなかったるなでも入学式では見てたのかもな。
俺たちは廊下の隅に行く予定だったが、真冬と話している間にも時というものは過ぎていて、このままでは本当に往復するだけになってしまいそうなのでやっぱり家に帰ってからH・J・Oで落ち合うと言うことになった。
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