第49話るなとお話し

 好────きかと言われればどうなのかわからない。

 嫌いでないことはわかるけど好きかと言われればこんな短期間じゃわかるはずもない。

 俺なら逆にこんな短期間で「好きだ」と言ってくる人なんて信用できない。

 でも、るなは少なからず俺に好意を寄せてくれてるみたいだけど、それを信用できないのかと言われれば答えはノーだ。…自分でもそこの線引きがよくわからないな。


「俺にはまだわからな────」


「あ、お兄ちゃん!…その人お兄ちゃんのお友達?」


 能天気な声で琴葉が話しかけてきた。…空気を読むという言葉を知らないんだろうか。もうちょっとタイミングというものがある。


「あー…そうだ、お友達だ」


「……」


 るなが何故か不服そうにしてるけど、一旦それは置いておこう。


「そうなんだ〜、お名前は?」


「るなだ」


「るなちゃん?」


 年上なのにも関わらず相手をちゃん呼びできるところが俺とのコミュニケーション能力差を表している気がする。


「そうだ」


「よろしくです!るなちゃん!」


「……」


 るなは特に何も答えなかった。元々人付き合いとかは得意そうじゃないし、琴葉とるなじゃ性格が真逆だ。そう簡単に打ち解けそうじゃないな。


「と、とにかく俺はもう学校に行くから!」


 俺はとりあえずこの空気をどうにかしようと、学校の鞄を持ってるなと一緒に玄関を出た。あの沈黙の空気は苦手だ…


「だ、大丈夫か?るな」


「…うん」


 やっぱりちょっと人見知りなのかもしれない。まあとはいえ俺だって知らない人にいきなり元気よくちゃん付けで話しかけられると困惑するか…


「……」


 でもそれにしたって元気がない気がするな。どうしたんだ?


「どうした?るな」


 玄関の外に出て、家の前に出てからるなはさっきよりも重苦しい空気を放っている。…もしかしてやっぱり学校に嫌な思い出があるのかもしれない。


「…太陽、にが、て…」


「…え?」


 太陽…苦手?日焼け的なあれか…?


「それならどうやってここまできたんだ?」


「マトのこと、考えて、来た、から…大丈、夫…だっ、た」


 それでいけるってことは日焼け的なことじゃないのか…


「な、なら、俺と話しながら登校しよう」


「おはな、し?」


「そ、そうだ、話しながらなら、来た時と一緒で日光なんて気にすることないだろ?」


「…う、ん」


 そして俺たちはできるだけ日陰を移動しながら、学校に登校した。話しながらだと案外大丈夫みたいで、楽しそうにしていた。

 が、教室に入る直前、俺はいきなり男子生徒に話しかけられた。


「おい!」


「えっ、何…」


 クラスメイトとはいえほとんど話したことがないのにいきなり「おい!」とか言われると俺だって驚く。


「何他校の女侍らせて見せつけてんだよ!」


「他校の…女、侍らせる…?」


 何を言ってるんだこいつは…そうか、そういうことか。


「この人はクラスメイトだ」


「クラスメイト…?こんな綺麗な人クラスにいるわけねぇだろ」


「同じクラスの鬱宮るなだ」


「……」


 俺がそう言うと、騒がしかったクラス中が静かになった。

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