第48話るなは不安

「はぁ…はぁ…はぁ…」


 るなを家に入れたら、なぜか過呼吸気味になっている。


「ど、どうしたんだ…?」


「マ、マトの、お家…匂い…」


 その単語だけ聞くと危ない人に聞こえるからやめた方がいいな。


「あ…」


 さっきまで上機嫌だったるなの顔が一気に暗くなった。情緒不安定とはまさにこの状況のために使う言葉だな。


「どうした…?」


「…さっき、女の人の、声、した」


「女の人…?」


 …ま、まさか…お、お化けとか…?


「……」


 い、いやいや、お化けなんているわけがない。何を言ってるんだ。


「き、気のせいだろ…?」


「気のせいじゃ、ない」


「で、でも俺には聞こえなかったし…」


「さっき、インターホン越しに、女の人の声、した」


「インターホン越し…?」


 インターホン越しってことは今じゃないってことか。なんだ、それなら琴葉だな。今女の人の声が聞こえたのかと思って本当に心臓が止まるかと思った。


「それは琴葉だな」


「琴、葉…?」


「ああ、妹だ」


「妹……」


 俺がそう答えると、またもるなが黙り込んだ。


「マト、彼女、いる?」


「え…」


 これは本当に難しい質問だ。別に遠距離恋愛だったとしても、お互いがリアルでも恋人になると言っているのであれば俺的には堂々と恋人だと言えるが、俺とマユはあくまでもゲームで恋人なだけで、リアルに関してはお互い相手がどんな人なのかすら知らない。


「んー、いるような…?いないような…」


「それ、どっ、ち…?」


 それを明確に答えられたら答えてるんだけど…今度思い切ってマユに確認してみるか…?でもそんなこと言ったら引かれるかもしれない…やめておこう。


「ま、まぁ…き、気になる人がいるぐらいだ」


 ちょっと違うけど表現とレベルとしてはこのぐらいだろう。


「…私は…?」


「…え?」


「私、気にな、る…?」


「え、えーっと、どういう意味で…?」


「恋愛」


「……」


 え、こ、この質問の意味がわからない。昨日今日あったばかりで恋愛感情的に気になるかどうかなんて言われても反応に困らされるだけだ。

 俺がしばらく黙っていて不安になったのか、るなが伺うように聞いてくる。


「私のこと…嫌い?」


 なんでこういう時だけは辿々しくないんだ…

 るなのことは好きか嫌いかで言えば好きだけどかといってこんな会ってばかりで恋愛的に気になるということでもない。

 まず嫌いというところはしっかりと否定して置かないと、今にもるなは泣きそうだ。


「嫌いじゃない」


「じゃ、じゃあ…大嫌い…?」


「大嫌いでもない」


「じゃあ、消えてって思って────」


「思ってない思ってない!本当に嫌いじゃないから!」


 嫌いじゃないって言ったら普通反対の好きの方を連想するはずなのになんで嫌いをより悪化させていくんだ…なんかどこかで聞いた話によると男性は恋愛をポジティブに捉えて女性はネガティブに捉えるとか聞くけど…これがそれなのか?


「…そ、う…ぇへへ」


 今度は溶けるような顔になっている。本当に情緒不安定だな…


「じゃあ…好き…?」

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