第40話初めてのメッセージ
「……」
メッセージが来てると思ったけど、あの人じゃないかもしれない。なぜなら名前が『マトマトマトマトマト』っていう俺の名前が連続していて、ずっと見ているとゲシュタルト崩壊しそうな感じになっているからだ。
「とは言ってもこんなことする知り合いなんていないしな…」
俺はトーク画面に目を移し、メッセージ内容を確認した。
『私だよ私、わかる?私』
こんな短い文なのに私っていう文字が三つもあることに驚きつつも、俺は返信した。
『わかる』
『マトはどこに住んでるの?』
『言えるわけないだろ!』
っていうか文字だと流暢に話せるのか。いつもは文字にしたら一言一言に点とか空白が付きそうな感じの喋り方してるけど…まぁメッセージ送るときに一言一言点付けたりするのは面倒だろうし、普通か。
『じゃあ私から言ってもいい?』
『だからダメだって!』
『なんで?マトさっき周りに人の目があるからダメって言った、このやり取りなら他人に聞き取られること、ないよ?』
そういう問題じゃなくて普通に会ったばかりの人に住所を教えるなんてリスクがありすぎるしそれは聞いた俺の方にもリスクがあることだ。
『そ、そうかもしれないけど…せ、せめてもうちょっとお互いのことを信頼できるようになってから────』
『マトは私のこと信頼してない?』
『あー、いや…そういうわけじゃないんだけど…』
なんていうか話を切り出しにくいな。この相手が真冬だったら俺が何を言っても絶対に完璧な受け応えをしてくるから何も考えずに言えるけど、この人の場合は仮に俺が傷つけるようなことを言ったら本当に何かしらしそうだ。
真冬も何かしらはしてきたけどこの人の場合は別の意味で…
『じゃあ、マトはなんていう高校に通ってるの?』
『いや、それもちょっと…』
『別に高校がわかったくらいだと問題ないでしょ?』
『んー…』
明らかに問題大アリだと思うけどそれを言ったって聞いてくれる相手じゃない。だからって高校を言うっていうのもなぁ…
『じゃあ私から言うね、私は高園高校って言うところに通って…在籍してるの』
「えっ…」
これが通話だったなら「待て待て!」って無理やり止めることはできたが、文字は打っているときは完全に一方通行だ。文字を打っている本人は打った後の相手の反応しか想像してない。それにしても…
「俺と同じ高校…?」
いやいやいや、高園高校なんて割とありきたりな名前だろうし、同じ名前のところがあってもおかしくない。コンビニだって支店とかあるんだしな、うん。
…その考えは無理があるか。
『どうしたの?マト』
俺がずっと返信しないから困惑している様子だ。とりあえず返信しよう。
『そうなのかー、悪い、明日ちょっと早いから眠ることにする!おやすみ!』
そう言って俺はとりあえず早めに切り上げることにした。実際は明日は早くないけどこれも口実だ。それにしても…
「いや、まさかな…」
俺は同じ高校だとは信じずに、眠ることにした。
そして…ちょうど明日、急激な出会いの幕開けとなってしまう。
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