第35話緊急クエスト

 俺は家に帰ると同時に、すぐにVRを起動し、ゲーム世界にログインした。

 今日は本当に大事な日だ。───PVP。これは遅刻なんてできるわけがない。そう思い、家に帰った瞬間にログインしたが、マユはオンラインだったけど、ユリはまだオフラインだった。


「まぁ、まだ5時とかだし、仕方ないか」


 そう思ってたが、少しするとユリもオンラインになった。


「ん、学校からちょうど今帰ったとか、そん感じか…?」


 ともかくこれでマユとユリがオンラインになった。そういえば何時からやるとか決めてなかったような気がするけど、どうするんだろう。


「…ん!?なんだこれ!」


 俺の目の前に、『緊急クエスト』という文字が出た。何気に一年近くしてるけどこんなことは初めてだ。緊急クエストは大抵夜中にしかないみたいなことを聞いたんだけどな…それにしても…」


「このタイミングでか…」


 PVPはどうなるんだろう…そんなことを思いながらも、俺は三角形の黄色の緊急マークとともにどこかに強制的に転送された。本当に一瞬で転送されるのか…


「えっ!?」


 周りには大勢のプレイヤーがいる。ちょ、ちょっと待て、なんだこの人数。基本スペースの広場の軽く倍はいる。

 俺の前に『制限時間1時間 緊急プレイヤーバトルロイヤル』と表示された。


「…え?いや、え?」


 冗談だろ?バトルロイヤルって…殺し合えってことか…?こんないきなり…?俺の動揺なんて全く気にせず、文字が出てきた。


『これから1分間、装備を整えるためのインターバルとします』


 1分間で装備を整えるとか無理だしなんなら俺なんてレベル3とか4だ。勝てるわけがない。…いや、そこは流石にレベルは均一化されてるか。そう思ったが、ここで最悪の返答が文字として出てきた。


『なお、実力重視の緊急クエストなのでレベルは均一化されていません』


「はぁ!?」


 お、おいおい、嘘だろ?周りを見渡すと初心者っぽい人からかなりガチ勢の人とかが見受けられる。


「リタイアは…できないのか」


 こうなったら逃げ惑うしかない。どうせなら上位を狙えるだけ狙ってみよう。まあ、みんなだって戦闘がしたいわけじゃないだろうし、優しくゆっくりと殺し合えばいい。


『プレイヤーキルをしたプレイヤーにはポイントが加算され、それが一撃キルだった場合は、ポイントがさらに加算されます』


「……」


 俺は一瞬、「なんだこのクソゲー」と思ってしまいそうになった。

 一撃でキルってことは絶対派手な感じになってしまう…しかもそれを運営側から提唱するなんて…あの遺跡の時から薄々感じてたけどこのゲームの運営さんは絶対に性格が悪いと思う。…でもデザイナーさんとかプログラマーさんとかは本当にすごいと思うため、企画を考えている人に少しだけ講義をさせていただきたい。


『では、バトルロイヤル開始を宣言します!』


 その文字とともに音声が流れてきた。よ、よし!全力で逃げ延びる!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る