第33話真冬の考えと誠とのメッセージ
「はぁ…」
私はベッドに添い寝させている誠くん抱き枕に抱きついた。もちろん私の自作で自信作の抱き枕。
「まさか一日空けただけで…」
今日わかったことは、誠くんは1日でも手綱を外すと、すぐにでも別の女の誘惑に負けてしまうということ。これからはどんな理由があっても誠くんから目を離すことは絶対にできない。
「いっそのこと誠くんのことをゲームの世界に閉じ込めておけないかな…」
必要な栄養分だけは点滴で誠くんの体に流して、誠くんのVRを改造してVRの接続を切断できないようにするとか、H・J・Oをプログラミングしてログアウトボタンを無くすとか、そうしたら誠くんにとっての現実はゲーム世界になるわけだし、私だって正式にマトくんじゃなくて誠くんと恋人になれし…
「でもなぁ…」
残念なことにこの世界には法律なんていうものがある。誠くんが何日も学校に行かなかったら不審がられてもおかしくない。一年前は同じクラスだったからなんとか私が手を回せたけど、別のクラスとなると私が担任に連絡するのも不自然…
「困ったなぁ…」
どうしたらマトくんのことを鎖で繋いで置けるんだろ…ゲーム内にログアウトできない場所とかないかな…一定の空間だけログアウトできない、みたいな。そういう空間があればマトくんをずっとそこに力ずくでも閉じ込めて、私とずっと一緒になれるのになぁ…
「その前に、明日はマトくんに纏わりつく女を駆除する日だったね」
明日あの女を駆除する。そうしたらあの女だって私に負けたのにマトくんに会いに来るなんていうことはしないはず。したとしても「私に負けたんだからもう話しかけてこないで」と言えば反論の余地はない。
「ふふっ…」
私は一年前に誠くんととった写真を差し込んである写真たてを見てにやけていた。かっこいいなぁ…本当に神は良い仕事をしたよ。私と誠くんを同じ時代に生み出したんだから。
「…でもまあ…」
神なんていうのがいるんだったら、感謝より怒りの方が強いけど。もし神なんていう存在がいるなら私と誠くんを別れないようにできたはず。
「…なんて、ないものねだりしてもね…」
私はスマホに登録された誠くんの連絡先を見て、思わず口元を緩めてしまう。
ようやく誠くんの新しい連絡先を知れた…友達で、なんて言ったけど嘘に決まってる。絶対に恋人に戻ってみせる。
`ピロン`
「えっ…」
私がちょうど誠くんとのトークを開いていると、その相手の誠くんからメールが飛んできた。
「えっ、えっ、えっ…?!う、嘘…!」
そんなの急すぎるよ!え、き、既読つけちゃった、な、何か返さないと。あ、そ、その前に、誠くんからのメッセージを読まないと…お、落ち着いて…
『真冬…こ、これからは、友達として、仲良くしていこう、本当に友達としてなら大歓迎だから…』
「……」
友達として…?無理。絶対に恋人に戻る。
でも、そんなことを言うと誠くんは私の連絡先を消すかも知れないから、話を合わせておく。
『うん、えーっと、私たちってなんで別れたのかな?』
改めて誠くんに確認しておく。ここを勘違いしていると今後治せるところも直せなくなる。2分ぐらい間が空いて、誠くんからメッセージが飛んできた。
『前も言ったけど、ちょっと束縛がキツいからだ、それ以外は本当になんの欠点もなかったと思ってる』
この文章だけなら2分もかかるような文字数じゃない、多分私のために言葉を選んでくれるために時間がかかっちゃたんだろうなぁ…多分これが文字じゃなくて電話とかなら『ま、前にも言ったけど…そ、その…なんていうか、そ、束縛が強いっていうか、なんというかだから別れた、それ以外は本当に良かったと思ってる』みたいな感じで慌てふためいてたんだろうなぁ…誠くんはちょっと精神的に追い詰められるとすぐに動揺するからね。…そういうところも可愛いんだけど。
『因みにどういうところが束縛がキツいと思ったの?』
私が数秒もかからないうちに返すと、誠くんが今度も2分ほど時間をかけてメッセージを送ってきた。
『例えば連絡先を真冬以外全員消したり…』
そんなの当たり前じゃない?私以外の連絡先なんて誠くんには必要ないし。
『俺が他の女性とちょっとでも話すと店員さんでも怒るし…』
恋人が私以外の女と話してて良い気なんてするわけなくない?
『俺のことを監禁したり…』
浮気しそうになった彼氏を監禁して反省させるのは当たり前じゃない?
『そんな感じだ…』
えっ、終わり…?どうしよう、なんで誠くんがそれを嫌がってるのかわからない、全部当たり前のことなのに…誠くんがちょっと特殊なのかな?
『…じゃあ、もし私がそれを全部しなくなったら私とやり直してくれるの?』
私はそうメッセージを送ると、今までは数分ぐらいかかってたのが、今度は即答で返ってきた。
『もちろんだ、俺が別れた理由が全てなくなるなら、別れる意味もないし、無意味に人の行為を無為になんてしたくない』
「…っ!」
なにそれ!かっこ良すぎるよぉ…!
私はプールでもないのに足をベッドの上でバタバタさせた。もちろん誠くんに抱きついたまま。
興奮して忘れないうちに、私もすぐに返答する。
『わかった、じゃあ、その時は、よろしくねっ!』
『本当にそうなったらいいと思う…けど、ちょっと一つだけ言わないといけないことがある』
…え?なんだろ、怖いなぁ。もしかして女ができた、とか…?今日一緒にいた…あの女…?
『な、なに…?』
私は恐る恐る聞いた。すると、またも即答で返ってきた。
『ちょっとなんて言ったら良いかわからないけど、俺にも気になってる人…って言った方がいいのか、遠距離というのか、よくわからないけどそういう人がいる、だからもしかしたら気持ちに応えられないかも知れない』
私は誠くんの言葉を理解した。気になる人───遠距離───そういう人…
「マユのこと!?」
う、嬉しい!私とマユが同一人物だって気づいてないはずなのに浮気はしないって断言してくれてる!「ううん、いいんだよ、私がマユだから!」と言いたいのを、私は全力で飲み込んだ。そして…
『うん。わかった』
こうして、真冬としての私と誠くんの約一年ぶりのチャットは幕を閉じた。…嬉しすぎて今日眠れるかわからないよ〜!
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