第20話2度目のクエスト

「まさかマトくんにフレンド申請してくるような身の程を弁えてない人がいるなんて、しかもそれはマトくんの知らない人…」


「な、なあ、マユ、そろそろクエスト行かないか…?」


「もしそれが女なら排除対象、男なら警戒対象」


「マ、マユ…?クエスト…」


「女にしろ男にしろ一刻も早く見つけ出さないともしかしたら私がいない間にマトくんに直接手を出してくる可能性が───」


 全く聞こえてないな。さっきから何を言ってるんだ?ぶつぶつ言ってるせいで要所要所しか聞き取れないけど排除対象とか警戒対象とか、クエストの確認でもしてるのか?因みに今日行くクエストは村の人たちが盗賊に金品を奪われたから返してほしいとのことだった。時代的には多分2500年ぐらい前の設定で、中国の初めての中華統一手前ぐらいの時代だと思う。基本的に、敵にバレないように金品を取り返せとのクエストだからほとんど戦闘をする必要がない。

 マユには戦闘が少ないということで承認してもらった。


「マユ、クエスト行かないか…?」


「───あ、うん!そうだね!」


 マユはようやく俺の呼びかけに気づいたくれたらしい。そんなにクエストが不安なのか…?


「で、今日行くクエストの確認だけど、敵にバレないように盗まれた金品を盗み出すっていうクエスト内容だ」


「…本当に戦闘になったりしないんだよね?」


「もちろんだ、見つかっても最悪金品さへ持って帰ることが出来ればクエスト完了だから無駄に戦う必要は無い」


 なんか本当に戦争しているような気分になってきた。


「そうだよね」


「じゃあ早速行こう」


 俺とマユは前と同じように同時に『クエスト開始』をタップした。すると、これまた前と同じように周りが宇宙空間みたいになって眩い無数の光の線が俺たちと逆流に流れていった。するとやがて視界がはっきりとしてきて…


「おお…!」


 どうやら山のようなところに転送されたらしい。山はどちかといえば盗賊よりも山賊のイメージが強いけど、盗賊も山賊もあんまり変わらないか。それにしても視界が悪いな。山の霧を再現してるのか?高いところに行けば行くほど視界が悪くなるあれか。


「マトくん!大丈夫?」


「え、だ、大丈夫だけど、なんで?」


 まだモンスターも何も出てないのに。


「ここちょっと酸素濃度薄いから」


 そんなこと瞬時にわかるのか。確かに言われてみれば薄い気もするけど健康を考えて山の酸素がないのはそこまで再現されてないみたいだ。


「よしっ、じゃあ早速目的地を目指───」


 俺が目的地を目指そうと言おうとして前に足を出した瞬間、山の慣れない感覚に転んでしまった。


「いたた…」


「大丈夫!?」


「あ、ああ、大丈夫だ、ちょっと転んだだけ───いたた…?」


 おかしいな。痛覚設定はオフにしてあるはずだ。一回一回設定をオフにしないといけないのか?今時そんな面倒くさい設定な訳がないか。試しに設定を見てみるも、案の定痛み設定はオフになっていた。ならクエストに何か秘密があるのかと思ってクエスト詳細を読んでみた。そこには気になる一文が記入されていた。


『なお、このクエストは見つからないことを前提として作られているので、痛覚設定をオンにしています。そうすることによりその場の臨場感をお楽しみください。もしもそれがお気に召さないのであればこのクエストかメインクエストではないので受けなくても問題はありません』


「…まじか」


 俺はこの事実をどうマユに説明しようかと必死に頭を回転させた。

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