第8話誰かの視線

 今日はマユと会う日の前日ということもありマユは色々と`準備`をしたいらしく今日は一緒にはしない。マユに「なんの準備だ?」と聞くと「もう、デリカシーがないよっ!」となぜか怒られてしまったのでなんの準備かは分からないけど多分明日のデートの準備だろう。


「……デート、か」


 これってデートなのか?俺の気が早りすぎなのか?それにしてもどんな顔なんだろう…別にどんな顔でもいいけどマユがなんかどんな見た目でも別れないで的なことを言ってたから気になってしまう。


「まっ、マユがどこの誰でどんな見た目でも別れたりしないけどな」


 俺はそんなことを呟きながら基本スペースをうろうろしていた。基本スペースはゲームを始めたらまず来る場所で基本的にはなんでもある。そして人も多い。


「……ん?」


 なんだろう、ゲーム、つまりは二進数で作られたプログラム空間だ。そんな世界で視線なんて感じるのかは分からないけどそれでも何かしらを感じる。…これが第6感ってやつなのか?

 試しに後ろを振り返ってみるも…


「誰もいない、か」


 なんだろう。なんかだいぶ怖くなってきたな。ゲーム世界とはいえ誰かにつけられてると思うとやっぱり怖いもんだな。`トラウマ`を思いだす。


「やめよう…」


 俺はVRの電源を切り、早急に眠ることにした。そこで俺は夢を見た。これは、正夢とは少し違うけど過去の記憶から引っ張り出された記憶だと思う。


「ま、─冬?」


「─に?誠──?」


「なんで──後ろをつけて──?」


「えっ、だって好きなんだもんっ!」


「うわあああああああああああっ!!…って、あれ、夢…?」


 いや、まあそれはそうか。俺と真冬はもう別れてるんだし。それにしてもまさか1ヶ月間ストーカーされてた時の夢を見るなんて…


「絶対にさっきの視線のせいだな」


 と、言いながら俺は時計を見ると時刻は朝の10時だった。夢というのは本当に一瞬のように感じてしまう。


「早く支度しないと…」


 俺はまずは朝なので妹が作ってくれているであろう朝ごはんを食べるために1階に向かった。因みに俺の家は2階建てて俺の部屋は2階にある。妹の部屋はすぐ隣にあったりする。


「おはよう」


 俺は妹に一言挨拶するとホワイトデー並に言葉が返ってきた。


「おはよう!お兄ちゃん!もう起きてきたんだね!ご飯なら作ってるから私のことを考えながら私のことを考えて舌と歯をうまく使ってゆっくりと食べてねっ!」


「あ、ああ、分かった」


 と、相変わらずのいつもの調子で俺は安定に引く。そう、この妹、世間的に言うブラコンの粋には余裕で達している。でもそれが嬉しいのかと言われると微妙だ。ラノベとかなら実は妹が義妹で…!とか妹のことを恋愛対象として見てしまっている…!とかよくある展開だけど俺はそう言う感情は一切無いし名前だって生まれた時から狛神の姓を持っている。


「まっ、普通に好きだけどな…」


 家族愛的な意味ではだけど。

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