第13話 鉄道






しかし、輝彦の感覚では既婚の女性が、

たやすく大学生などと恋愛するものだということがまず信じられなかった。

そういう世界もあるんだろうと思うしかなかった。



現実に、それが発覚して鉄道に身を投げたとの事である。



死を選択する人の感覚は理解し難い。

友里恵など、13歳でもっと辛い目にあった、

にしてもそんなことが信じられない程愛らしい少女である。



「ここの店は呪われている~」と、おどけた調子で

バイト仲間の男子大学生、康夫がニキビ面でそういう。



そう、男子も輝彦をおじさん扱いせずにクラスメートのよう

に振舞う、それが輝彦にはなんとなく嬉しかった。





絶対に戻す事の出来ない時が戻ったような、そんな気がして。



おじさん扱いしないとは言え、彼等は輝彦を同等とは思わず

あくまでも先輩、のような感覚で接する所が彼等の育ちの良さを思わせた。



取材先で見かける例では、年長者を殊更に卑下する者も多く



おそらくそれらは、被虐体験に基づくものだろうと輝彦は思っていた。

だから、友里恵や由香、康夫らは健康的だ、と思えて、

それに安堵するのだった。

時代が変われども、若者が変わってしまう訳ではなく

大人、社会が彼等を苦しめるように変わってしまったのだろう。


彼等若者のために、否

社会全体のために、弱い者を苦しめるような行動を

戒めるべきだ、と輝彦は思う。



それで、何の得があるのだ?と

そういう人が居る。



例えば、彼等若者が希望を持って社会で働く事ができれば

経済が振興し、結局社会全体が潤う訳だから



それは、意義のある行為であると輝彦は思うし





少なくとも、少女が

大人の玩具として、商的対象になるような行為は

戒めなくてはならない。











「どーしたの?」と、ふと考えに耽った輝彦を

友里恵は無邪気に見上げた。



かわいいな、と思ってにこにこすると

彼女も、にこにこ。








だけど、フリーの輝彦にとって

ちょっと息苦しく思えるのも

正直なところだった。


恋は素晴らしいと思う。

けれど、どの女の子も

なぜか、土着して

つまらない毎日に収束する事を

拘束するようで


どうも、そういう所が気になり始めると

恋は終わるのだった。


フリーライター、なんて気楽な人間には

恋は出来ても、絵空事で終わってしまうのではないかと


輝彦自身思うのだった。



そうすると、友里恵が言う

「好きな人と、お店を持って暮らす」なんてのも


自分には無理かな、なんて

ふと輝彦はそう思っていた。


もとより、友里恵を妻にするというのも

絵空事っぽいのだけど。



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