第3話 好きな男に自分のことを知ってもらいたいと思うのは当然だろ?

 〇に×を重ねたペイントが描かれた時間は、午後5時38分。まだ陽が沈みきっていない頃だった。


 黒いフードを深くかぶった2人組が異能を使って路地裏に1人の若者を動けないくらい暴行したあと、財布を盗み、壁に赤いスプレーでペイントして帰っていった。


 被害者の若者は16歳の健常者。映像を拡大すると、顔に一生残るであろう火傷やけどが見当たった。


ひどいな……」


 英司は拳を握りしめていた。心の内にある怒りが沸々ふつふつと全身を熱くする。


「異能をこんなことにしか使えない奴らを見ると、反吐へどが出る。殺したいほど憎い」


 そう静かに吐き捨てる凛も、異能者である。


 彼女の異能は『額に触れた生物の記憶を忘却させる』能力。


 人の記憶を忘れたい過去から自らの存在に至るまで幅広く忘れさせる力だ。


 以前、『嫌な過去を忘れる力なんてうらやましい』と英司が言ったところ、凛は冷たい目でこう返した。


『過去を克服こくふくするから人間は成長するのよ。だから私の能力は、人の成長を止める、百害あって一利なしの力。歴史を重んじる人類を冒涜ぼうとくしてる』


 凛は自らの異能を心底嫌っていた。望むことなら無くしたい。健常者になりたい。


 凛の異能は自分に使うことは出来ない。出来たら、とっくに自分が異能者であることを忘れている。


 そう淡々と語る凛に対し、英司は何の言葉もかけられなかった。


「ま、こいつらをボコボコにするために俺達がいるんだろ?」


「……そうね」


 凛は一瞬だけ机の上にある可愛らしい少女の写真を見た。その子の時は小学3年生で止まっている。


 異能者に殺された。犯人はまだ捕まっていない。あるのは、犯行に使われた一本のナイフのみ。このナイフは今、アジトここにある。


 凛の真の目的は、この少女を殺した犯人を見つけること。そして、犯人に死ぬより恐ろしい思いをさせること。


 もう7年以上捜査しているが、進展は全くない。


 それでも凛は諦めない。


 警察で追えないなら、私が追う。法で裁けないなら、私が裁く。


 そのために、私の人生がある―――――と。


 2人は目をモニターに移し、監視カメラの映像をいもづる式に2人組を追っていった。


 バイクを2人乗りし、赤信号無視や黄色線無視の走行で一般道を爆走する。


 高層ビル地帯から段々と建物の高さが低くなり、やがて建物が少なくなってくる。そこで監視カメラの映像が途切れた。監視カメラが無いからだ。


「カメラでの追跡ではここまでか」


「次は衛星写真を活用して奴らが根城としている場所を特定するだけよ」


 凛はバーチャル地球儀システムを起動し、リアに上空から足跡を辿たどらせる。


 1分後、とある地点で映像が止まる。


「――――お嬢様、ここにいる可能性が高いです。」


 導き出された場所は、とある倉庫だった。


 倉庫の屋根には〇に×のペイントが大きく描かれている。自分達のアジトだということを、アピールしているのだろう。


「リア、この倉庫を調べて」


 はい、と返事してから3秒と経たず調査結果を報告する。


「3年前に潰れた物流倉庫です。現在は所有者不明となっています」


 次いで、リアは住所を告げた。現在地から北東20㎞の所にあるという。


「ドローンで偵察ていさつしよう」


「無理ね。高性能で鎮圧能力・殺傷能力ともに高いけど、偵察にはむかないわ。音がうるさすぎてバレるもの」


「じゃあどうするんだ?」


「いつも通り、あなたが行ってつぶしてくるのよ。アハト2号機で」


「お、ならスカイウォーカーを試す時が来たな」


「いや、今回は出番無いわね。倉庫の近くまで車で行き、その後は忍び足で倉庫に近づき、罠とドローンを仕掛けて奇襲きしゅうする」


 英司は頷いた。彼の目はもう高校生の目をしていなかった。


「今から10分後、ミーティングを行うわよ」


 ※


「こちらアハト、目標地点に到着」


「倉庫の中はどう?」


 倉庫の窓から中を覗く。


 倉庫の中は隠れ家のようになっていて、人が過ごしやすいように家具が置かれていた。


 人数はリアによると無能力者26人、異能者3人の計29人。ほぼ全員が未成年と予想した。1人の少女を除き、トランプやダーツで賭け事をしていたり、酒や大麻を楽しんでいたりしている。


 アハトのヘルメットに内蔵されているカメラには最新の異能探知機があり、対象人物が異能者か健常者か判別できる。


「リーダー格は……あの金髪の女のようね」


 凛はアハトのカメラから送られる映像を見てそう分析した。


 黒いセーラー服と根元がやや黒い金髪のロングストレートがよく似合う、不良少女だ。


「女王が座るような椅子に偉そうに座っている奴か。確かに、あいつだけ異様に異能の波長がデカいな」


 織部グループの研究によると、異能者には無能力者には流れていない特殊な波長が体内に流れいる。異能を発動する時は波長が大きくなり、外に放出された波長が異能となる。


 波長は人間の体力と同じで使い続ければ疲れるし、休めば回復する。


 1日に異能を大量に発動すれば発動しないこともある。


 また、波長には個人差があり、鍛えれば強くなる。


 異能探知機は波長を読み取って数値化できる反面、異能の内容は読み取れない。


 波長が強いほど強力であろうという予測するしかない。


「じゃあミーティング通り、罠を仕掛しかけて」


「了解」


 腰に装備しておいた小型の砲台を設置しようとしたその時、悪意のある視線を感じた。


 リーダーであろう金髪少女が窓越しにアハトを―――ヘルメットの奥にある英司の瞳を見た。

 

 遅いと思ったが、それでもさっと身を隠す。


「まずい。こちらの存在を知られている」


「…………相手の異能で?」


「わからない。しかし目が合った。


 凛は黙りこみ、この倉庫にたどり着くまでの道のりの映像を調べた。しかし、そこには気付かれる要因は見つからなかった。


「相手が監視カメラを見ていたとか、そういうのは見当たらなかったわ」


「私の方でもさぐりましたが、追跡されている様子も、罠も見つかりませんでした。彼女の周りにはテレビがいくつかありますが、民放の電波しか受信していません」


「窓から影がうつりこんだ、とかは?」


「それはない。月の位置も確認したうえで、細心の注意を払った。おそらく、相手の異能の可能性が高い」


「私もアハト様の言う通りだと思います」


 凛とリアはアハトを装着している時のみ、英司のことをアハトと呼ぶ。英司も、凛のことを名指しはしない。通信傍受ぼうじゅによる身元が割れるのを防ぐためだ。


 英司は再度窓をのぞく。


 髪よりも金色な少女の眼は、やはりこちらを向いていた。


 バレている。

 

 しかし、少女は部下に命令もハンドサインも出さず、不敵な笑みを浮かべたあと、視線を戻す。


 —――罠を張りたければ好きなだけどうぞ。物量で攻めるならどんどんぶちかましてみな。


 そう言われた気がした。


「挑発されているわね」


 アハトから送り出される映像を見て、凛が呟いた。


 しかし、挑発程度で熱くなるほど、凛は魅力的な人物ではない。


 常に冷静沈着。いつも通り思考し、適切な判断を下す機械のような人間、それが英司の知る織部凛だ。


「で、どうするの? 一旦いったん退く? こちらでも確認したけど、あの女の波長はかなり強力。返り討ちにあうかもしれないわ。アジトは分かったし、もう少し入念にゅうねんに準備してからの方がいいわ」


「確かにな。でも」


 英司は少しでも身軽にするために、罠や戦闘用ドローンを倉庫の上に置く。


「ここまで舐められて引き下がれるほど、人間出来ていない」

 

 スピーカーの向こうで呆れた溜息ためいきが聞こえた。


「……回収、忘れないでよ」


 凛の小言に適当な相槌あいづちをうち、腰の後ろに装備された二挺にちょうの電撃銃を握る。


「リア」


「了解です」


 バックアップを口で頼まなくても察するほど、リアとは息が合う。約1年かけて、ここまで合うようになった。


「決まったようね」


「ああ、正面突破だ」


 窓をぶち破り、そのまま倉庫の真ん中でビール瓶を飲んでいる不良に飛び蹴りをあびせる。


「ぐへぇ……」


 着地した先には、飛び蹴りをモロに食らった不良が気絶していた。


 右足で気絶した不良の胸をぐりっと踏みながら、周りに銃口を二つ向ける。そのうちの一つは、リーダーの椅子に悠々ゆうゆうと座っている金髪少女に。


 銃口を向けられてもなお、その少女は笑みを浮かべていた。黒いセーラー服と金髪がよく似合うと、敵ながら感心した。


 不良が一定の距離を保ってアハトを囲み、罵詈雑言ばりぞうごんを浴びせる。


 それに対し不良の1人に雷の弾を撃ちこむ。


「ぐあっ!」


 弾を受けた不良は、体をしびれさせながらその場で倒れこんだ。


 倒れた後もビクンビクンと痙攣けいれんしている。


 それを見た不良の何人かは、顔から笑みが消えた。


 英司が握る二挺にちょうの銃の名は『ブリッツガン』。


 雷を放つ非殺傷銃で、弾数は一挺いっちょうにつき15発。


 グリップを守るように湾曲わんきょくの刃を備えられたハンドガン、という見た目をしている。


 一応、その刃も凶器になる。扱いにくいことこの上ないが、接近された時の緊急防御手段として使える。


 ブリッツガンは腰にマウントすることで充電リロードされる。


 雑魚敵ざこてきであれば一撃で鎮圧ちんあつすることができるが、異能者の強さによっては数発当てる必要がある。


 反動も少なく扱いやすいのだが、リロード時間は1分で1弾と長い。


 無駄撃ちには気を付けなければ。


「良い調子です。このまま一気に行きましょう」


 リアの褒め言葉を受け、英司は一気に飛び掛かってくる不良を次々と狙い撃った。


 幸い、英司に飛びかかる不良は全員無能力者だ。銃弾一つ食らわせれば戦闘不能になる。


(しかしこの不良達、連携が全く取れていない)


 各自、自分の思うままに向かってくるだけ。


 ならば弾を無駄に消費する必要はない。


 英司はブリッツガンをしまい、腰にあるつかを右手に持つ。


 スイッチを押すと柄の先から雷が放出され、刃の形に収束される。


 この電撃の剣もアハトの持つ非殺傷武器の一つ、『Eエレキブレード』である。


 最短刃渡はわたり15㎝のダガーモードから最長180㎝のロングモードまで自由自在である。


 Eブレードをロングモードにし、不良たちをぐ。


 まともな防具を身につけていない不良たちは、英司の剣技に次々と倒れていく。


 半分倒れたところで、


 ――――ドンッッ!!


 人が揺らぐほどの地響きがした。


 震源地を見ると、ドレッドヘアーの男が拳をポキポキと鳴らしている。濃いオレンジ色のサングラスが何とも似合っていない。


 体格は英司の1.5倍くらいと、かなり屈強である。


 このドレッドヘアー、路地裏で一般人に暴行した人間の1人である。異能者だ。


「調子に乗るなよチビが。タイマンはれ」


 いつの間にか、不良たちは英司とドレッドヘアを囲っていた。


 今更タイマンかよ、と英司は思ったが声には出さず、Eブレードをしまった。


「オモチャ使ってもいいんだぜ?」


 英司は半身をきって構えて、ドレッドヘアーを待ちつつ周囲を警戒した。


 ドレッドヘアーは拳を握る。するとそこからメラメラと炎が燃えたぎってくる。


「炎を使うタイプの異能者か。どこでも見るわね」


 異能の中には似たタイプがあり、優劣も存在するが、全く同じ異能を持つことは血縁関係者以外無い。


 例えば、火を使うものでも、手から火球を飛ばすタイプと炎を噴射するタイプがある。また、そのどちらも使える異能もある。


 ドレッドヘアーの場合は火をまとう異能のようだ。範囲は今のところ手のみ。


「アイツの言葉も信用しないでよ」


「言葉?」


 音声は切ってある。大きい声で喋らない限り、相手に聞かれることは無い。


「『タイマン』のこと。タイマンのように思わせて周りからの不意打ち―――ってこともあり得るからね」


「気にめておく」


 英司は右手の拳に力を入れながら、アハトのリミッターを解除した。一瞬でケリをつける。


 両者近づき、拳の間合いに入った。


「オラァ!」


 ドレッドヘアーが豪速の右フックをかます。


「――――っ!」


 英司はフックが来るよりも速く懐に潜り込み、アッパーを放つ。


「がっ……」


 頭が吹き飛んだかと思うほどの速さでドレッドヘアーがる。


 背中を強打したドレッドヘアーは、肺腑はいふに残っていた空気とともに痛々しい呻き声をあげた。


 思うように呼吸が出来ず苦しむドレッドヘアーに英司は、威力を弱めたEブレードを彼の胸に突き刺す。


「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


 生き地獄を味合わせるために、気絶しない程度に威力を弱めた。


 Eブレードの雷撃がやみ、辺りが静まる。


 ドレッドヘアーは痛々しい呻き声を挙げて、身体を痙攣けいれいんさせている。


 アハトの過剰な制裁に、不良達はすでに戦意を喪失し、青ざめた。


 淡いライトとやみにまみれたアハトは、不良の目には残酷な処刑人に映っただろう。


「さぁ次はどいつだ?」


 じり…………。


 反射的に不良達は一歩後ずさった。異能者でさえも。


「お前ら、あと一歩退いたら殺す」


 不良少女のドスの利いた声が倉庫に響く。


 それを聞いた不良達は、異能者ともども叫びおびえながら闇雲に攻撃する。


 英司はEブレードを駆使して、お粗末そまつに襲いかかってきた不良集団を容赦無くぎ倒し、あっという間に鎮圧した。


 残りは黒いセーラー服の少女、ただ1人。


 雷光らいこうらめく剣先を余裕綽々よゆうしゃくしゃくと座る少女に向ける。


「残りはお前だけだ」


「無能力者のくせにやるじゃないか。気に入った」


 少女はやっと重い腰をあげた。右手には日本刀を持っている。


「気を付けてください。あれはかなりの業物。相手の腕によっては、この鎧ですら豆腐のようにスパスパと斬ることも可能です」


 リアの忠告に、英司はさらに気を引き締める。腕が無くなることは、想像すらしたくない。


「城ケじょうがさき紫苑しおん。『ワールド・ペイン』の幹部やってる」


 英司に背中を向け、黒いセーラー服の背に白で描かれた〇に×を重ねたペイントを見せる。


「ダサいグループ名」

 

 凛が毒づいた。もちろん、紫苑には聞こえない。


「今んとこ幹部の序列は9位中、3位。まぁ、順位なんてどうでもいいけどね」


「ペラペラと自分のことをしゃべる奴だな」


「当然だ。だって―――」


 すると、紫苑は恍惚こうこつとした表情を浮かべる。


「好きだからだよ。一目惚ひとめぼれした」


 英司はひどく困惑した。好き? 


「好きな男に自分のことを知ってもらいたいと思うのは当然だろ?」


 今の状況でどうやって好きになるのだろうか。好きになる場面もなかったはずだが。惑わせるつもりだろうか。

  

(いや、それよりもこの紫苑とかいう女、俺のことを男と言った)


 アハトのヘルメットにはボイスチェンジャー機能は正常に作動している。


 普通に聞けば男か女かはわからないはずだ。なのに紫苑という女は断言した。


 アハトの中の人物が男だと確証を持っている。


 性別くらいバレたところでそんなに支障ししょうは無い。


 こんなヒーロー気取りの行いをするのは馬鹿な男くらいだから。


 ただ、これ以上正体を明かされるのはマズイ。英司がバレていいのは性別のみ。それ以上バレてしまうと、身元が割れる。


 アハトのエネルギー残量は70%以上ある。


 バッテリーに余裕があるため、リミッターを解除したままにしておく。


 短期で決着をつける。


「女だからといって容赦ようしゃはしない。徹底的に潰す。だが、お前が自首し、ワールド・ペインというチンピラグループの内情をもっと細かく話してくれるなら、気絶させるだけで済ませてやる。幹部なら、色々なことを知っているだろ?」


「知ってるけど、教えられない。バラしちゃいけない内容まで喋る根性なしは粛清しゅくせいされる組織だし」


「粛清される前に、痛い目に合わないといいな」


 英司はEブレードを構える。


「楽しみ」


 とんとん。紫苑は自分の頬をつつく。


「私の顔に触れた人間はこの世で2人だけ。お前はどうかな?」


「先人がいるなら楽勝だ」


「無能力者で触れた奴は誰1人としていない」


 紫苑は断言した。


「なら、今日が初めての日になるな」


 英司は一気に間合いをつめ、Eブレードを振るった。


 切っ先がわずかに届かない位置で避けられる。


 英司は続けて剣を振るう。足場が悪い場所へと誘導するように。


 だが、紫苑は思い通り誘導されず、むしろ避けてほしくない場所に移動していく。


「たしかに速いな。とても無能力者とは思えない」


「ちっ……!」


(その余裕たっぷりの顔面に一発入れてやる……!)


 ブリッツガンを構えた瞬間、銃が真っ二つになる。


「……っ⁉」


 紫苑が日本刀を振り上げていたのを見て理解した。銃を斬ったのだ。


 剣筋が全く見えなかった。


「いま、心拍数が跳ね上がったよ? もしたして、ビビった?」


 紫苑は前蹴りを英司の胸にお見舞みまいした。


「くっ!」


 英司は地面に背中を強打するが、すぐに立ち上がって距離を取る。


 全力の蹴りでは無いはずなのに、吹っ飛ばされた。並の身体能力では無い。


「どうした? 容赦しないんじゃなかったのか?」


 馬鹿にした笑みを見せつける。


 Eブレードを左手に持ち替え、利き手である右手にもう一挺いっちょうのブリッツガンを持ち、撃つ。


 その全てを避けられるどころか、自分の想定とは違う場所へ避けられる。


 成果は倉庫の窓がいくつか割れたただけ。


(……おかしい)


 ブリッツガンの弾速はハンドガンより少し遅いくらいで、とても見て避けられるものではない。


 英司操作はもちろん、リア操作のアハトですら、発砲を見てから避けることは絶対に出来ない。


 なのに紫苑は発砲を見てから避けている。彼女の身体能力の高さは健常者の比にならないが、それにしたって銃弾を全て避けるのは無理な話だ。


 それに避ける方向だが、誘導を知っているように避けている。


 紫苑がその場所に撃つように仕向けるのではなく、こちらの撃つ場所を知っていて、あえて撃たせている。


 そして一番は、行動に迷いが無く、こちらの出方をうかがう様子が全く見られない。


 何が起こるのか知っているかのように。


 弾数残り3発のところで撃つのをやめて充電する。


 そして、さらに距離を取った。


「あれ? 呼吸が上がってるよ?」


 月明かりに照らされた紫苑の笑みは、絶対に負けないという余裕と自信に満ちあふれていた。


 1つの結論に至る前に、凛が冷静に言う。


「行動が読まれているわね。それも完璧に」


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