第13話 ラッキースケベと引き換えに
「まあ、これでお互いさまということで、もう喧嘩しないでね?
「なにするのよ性悪女!」
「貴女の香辛料を返してあげただけですわ」
目が治った途端に喧嘩をはじめたレーネとラクシャに、
「喧嘩しないでっ、それに2人には聞いてほしい大事な話があるんだ」
どうにか2人を説得して、すぐじゃなくても帰って貰う流れにしないと。
「いまこの村に、2人も、いや1人だって受け入れる余裕はないんだ。オレはここの領主で、村に責任がある。だから、」
「まあ! 丁度よかったです。わたくし、
「で、でも少しくらいチーズがあっても、」
「ふふ、ロアンさま。古代種・
「ホントにっ!?」
「はい。わたくし、手ぶらで押しかけるほど厚かましくはございません」
ラクシャが
「っ!? わたしにだって
黒い丸薬を
でも拒んだら、きっとまたスネるんだろうなぁ……。まあ、必死に、
「ほらロアン、あーん」
と迫る顔も可愛いし。ここはひとつ、恥ずかしいけど口を開いて、
「っ!?」
舌にっ、舌にレーネの指が触れちゃったよっ!? 一瞬の、柔らかく滑る舌触りっ! あまりのことに、思わず丸薬を飲みこんで、
う゛ぅ゛ぅ゛、
「美味しい?」
「そんな枯葉の塊、不味いに決まっています」
「ラクシャには聞いてない」
「小娘がわたくしを呼び捨てにするとは不敬ですよ」
「もうっ! これ以上喧嘩するなら今すぐ帰って貰うよっ」
「……わかりました。ロアンさまがそう
「わたしだって、ラクシャの高飛車な態度を我慢するよ」
全然休戦する気のない2人に非難の目を向けると、ようやく口を閉じたので……。
………………っ!。
しまった、これじゃ2人を家に連れていくしかないよ。でもいきなり、婚約者と彼女を名乗る女性が2人も増えたら。タトラやミトラ、いや村の人たちになんて思われるか……。
くぅぅぅぅぅぅっ、なんかもう、逃げだしたい……。湖に揺らぐ満月さえ陽キャに見えて。口には
こうなったら。ひたすらにレーネの指の感触を思いだし……、オレは襲いくる現実に
†
重い足取りのまま家に着き、重いキッチンの扉を開けると、
「お帰りなさいロアンさま。誰かとご一緒ですか?」
「お久しぶりですタトラ殿。ロアンさまは、わたくしを出迎えにきてくださいました」
椅子から立つタトラに、ラクシャが答えた。テーブルには、もう夕食が並んでいる。
「ラクシャさまっ? 出迎え? えっ、ではロアンさまと?」
「はい、ロアンさまに娶って頂きました」
「娶るとは言ってないよねっ? エルトス教会を瓦礫にすればいいだけだよねっ?」
「そうよラクシャ、嘘言わないで」
「!? ロアンさま、そちらのかたは?」
タトラに尋ねられると、レーネがオレの陰に隠れる。いや、自分で自己紹介してくださいっ。オレが紹介しちゃうと、ぼっち的に負けた気がするんですけどっ。
「…………この子はレーネ、ちょっとした知り合いなんだ」
「ずっと一緒にいようって、ロアンに言われたから」
「ずっととは言ってないよね? ってか、喋れるなら自分で自己紹介してねっ?」
「まあ、そうなんですか」
タトラがにこやかに、冷ややかな笑顔を浮かべる。あれれ? 今日何度も味わったこの感覚は……。
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