第2章 -  4 真実(2)

 4 真実(2)

 



「O型って凄いんですよ!」

 そう言ってきたのは、かなり状態が厳しくなってきた頃だ。

 痛みの方はモルヒネのお陰で楽にはなるが、体力の方はどうしようもない。

 風呂に入るのもひと苦労で、翔太もいよいよ入院のことを覚悟し始めた頃だった。

 突然、驚くよう事実を聞かされ、そんな馬鹿な! と、何度も何度も思ったが、

「あなた、これはね、本当のことなの……今はもう、一般の人だって知ってることよ。まあ昭和の時代に、どう思われていたかは、正直、知らないけど……」

 そう言う妻の言葉はどう調べたって正しくて、つまりこれまでずっと、彼は騙され続けていたってことだ。

「だって、今は余程のことがないとしないでしょうけど、昔はね、他の血液型の人に輸血できたんですからね」

 ――どうして凄いのか? 

 そう尋ねると、即行そんな答えが返ってきた。

「他の血液型じゃできない、ってことか……」

「そうよ、あなたはA型でしょ? だから、あなたは輸血できないけど、いざとなったらね、わたしはあなたに輸血して、ちゃんと助けてあげられるわ」 

 だから血液型が違うってことは、〝カマキリ〟と〝バッタ〟くらいには、違う生き物って言えるんだと、真剣な顔で妻が翔太へ告げたのだった。

 ――血液型なんて、なんの影響も及ぼさない。

 テレビ番組を観ていて、そんなコメントにいきなり反応したのが妻だった。

 そして真相がどうであろうと構わなかったが、彼もそんな妻の反応にポツリと返した。

「そう言えば、俺の父親ってのも、確か、O型だったな……」

「そうなんだ、じゃあ、お母様がA型なのね?」

「いや、A型じゃないな……お袋は確か、B型だったよ」

「え? 嘘よ、それじゃあ、A型のあなたは生まれてこないわ」

 そこで急に笑顔になって、

「A型ってのが、違ってるんじゃない?」

「いや、病院で胃癌の検査を何度もしたしね、こればっかりは、間違いじゃないよ」

「じゃあ、あれよ、ご両親のどちらかが違うのよ。昔はね、結構いい加減に覚えていたらしいもの、血液型……」

 そこで間違いないって理由を話して聞かせ、

「いくらなんでも、母子手帳への記載は間違えないだろうし、父親の方もね、こっちも間違いようがないんだよ。亡くなった時にね、色々と、あったから……」

 そして彼は、逆に妻へと尋ね返した。

「その、A型が生まれないってのは、絶対なの? なんパーセントとかは、そんなこともあるとかさ、あるんじゃない?」

 そう言葉にすると、彼女は少し考えるように横を向き、視線を逸らしたままで呟くように声にした。

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