🦢🦢
二羽(中二階──スキップフロアに設えた厨房設備)
「な、なによう、これ……」
鍋つかみを手にはめたまま、振り向く煮菜子。
「現段階ではまだ試作品よ。ちょうどよかった、あなた……。ライバルが登場してくれなきゃ、物語はどうにも広がらないもの」
羅莉子はケモノ的直観で、煮菜子の背後に潜む
「あんた、私と寝たわね?」
「は? 唐突になに?」煮菜子は驚いた。
「皆まで言わせないで。わかってるでしょう? これは映画『ブラック・スワン』のパロディなんだから。作者が………………(チラと天井へ目をやる)まあ、いいわ。いろいろ言いたいことあんだけどさ、つまるところ、私たちは作者の奴隷よ。私たちに自由に物を言う権利などない」
「一番ひどい目に遭ってるのは私だろうが!」煮菜子までつられて本音を
「はっ。それはさ、あんたの持つどうしようもない業が導きだした世界じゃないの」羅莉子は肩を
「ばっ、ばか言ってんじゃねー。誰がおまえなんかと」煮菜子はやけくそになり、鍋つかみを床に叩きつけると、エプロンの紐を解く。「そんなん言うんだったら、脱いでやるよ。見な」
剥がしたエプロンの下から、いつも着ている
羅莉子はそれを目にしても、自説を曲げず、挙げ句、こう言った。「じゃあ、その背中に
羅莉子は物語の秘密をたった二羽目にして
煮菜子は作者にマインドコントロールされていたので、聞かなかったことにして別の話をする。「この卵糖パンには石炭を練り込んであるの。私の生まれ故郷、福岡県は筑豊のシンボルでもあるわ」
羅莉子は毒づく。「ふん。あんたはカステラの切れ端で
「その愛、いいわね。響きがいい。一丁いただくわ」煮菜子は壁の換気扇スイッチの横にあるレバーを引いた。すると、羅莉子の足下の床下収納の扉がぱっくり口を開け、美しき肢体が空を引っ掻きながら奈落へ吸い込まれていった。
「なっ、ああぁぁぁぁ──────」
「手応えのないライバルだこと!」煮菜子は
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