第73話 師匠と弟子

ドン!ドン!っと爆音並みの音を出しながらリノアが作り出した【絶障慈炳】の中で拳と拳で殴り合う。


その様子はお互いに全く譲らない状況だった

しかし俺の拳はリノアにはほとんど届かないのだ。


(もし仮にこいつが絶対物理耐性を持ってるだとしても必ず当たるはずだ)


そうーー仮にリノアが絶対物理耐性を所持していた場合、当たってもダメージ食らわない為拳が届かないということは無いはずだ


しかしリノアはそれを怖がるように避ける。つまりこいつはもしかすると絶対物理耐性を持っていない可能性があるのだ。


(なら話は早い……!)


一気に間合いに入ろうと近づくが近づくにつれてリノアは段々と遠くなっていく、それに何だか身体がものすごく重たい


それに……この魔法触れて行く度に力が抜けていく気がする。


でもーーそんな事にいちいち気にしてはいられなかった


「さぁ、続きをやろうか」


「あぁいいぜ!」


地面を抉るような力で蹴ると大きく空中に飛びリノアは足に風属性魔法を付与する。


すると付与した足を空中で蹴り風を発生させた


風撃ふうげき


鉄砲弾のような形をした風が猛スピードを出しながら襲ってくるが反射神経のお陰か【絶守ぜっしゅ】を発動させた。


絶守とは絶対障壁とは違い己自身の身を守ることに特化した防御魔法なのだ


(なるほど、今の魔法は中々の威力だ)


まずはその場しのぎに〘第1式 炎灯華〙を壁中に撃つとそこら中には煙が俺達を囲むように見えなくする


そこで風属性魔法と土属性魔法の合属性魔法【空天】を何も無い所に四角形の足場を作るとそれを使い一気にリノアに近づく


〘第3式 雷翔星〙


雷を使った第3式を行使しリノアに向けて放つ


ーーだがそれはまるで子供の遊びをされているっと錯覚するような力を感じとった


もうここはあれしかない


【異空間収納】から剣を取り出し構える


もうこいつには武術・魔法でやり合っても勝てはしないのだ。ならば剣術も遠慮なく使わせてもらう


「へぇ〜剣を使うのか!なら遠慮しなくてもいいな?」


「………っ!?」


その『遠慮しなくてもいいな?』っと言う言葉を聞いた瞬間、俺の剣はいきなり飛ばされそうな風力を受けた


(なんなんだ!?こいつの今の力は)


まるで戦闘マシーンになるだけの存在だけに生まれてきたかのようなそんな感じがする


「へぇ〜今の風を食らっても何もないんだ……珍しい」


その言葉に疑問を持つ、なんでさっきとは違い『今の風』という発言に引っかかるのだ。


人の魔法は魔力と適正で全てが決まる。


魔法には基本的にS,A,B,Cとランク差で決められており俺は1つを除きそれ以外は全てがSランクとされている。


もちろん一番低いランクは無属性魔法がAなのだ。


ーーしかしそれとは裏腹にリノアは風属性・火属性・水属性など全ての属性魔法がSランクとされている


俺の苦手の分野の時魔法ですら軽々とこなす程だ、正直羨ましい。


その時、あることを俺は考える


(もしかしてこの風には何かがある?)


その何かまでは分からないがリノアが何かを企んでいるとしている場合俺以外のエミリア達まで被害が及ぶかもしれない


危険を外部へと晒さない為にも出来るだけ早く片をつける


『縮地』


リノアの後ろへと回り込み剣を振るう


〖俊敏なれ切られ響く今宵は揺るぎない剣ーー剣式 俊斬〗


光速で剣を振るうがまたもや【盾】で防御されてしまう

ーーだがそれは逆に考えれば防御出来ないようにすればいいだけのこと


(こいつの反射神経は異常だ!何か目を逸らす物さえあれば)


辺りを見渡すと俺はある事を思いつき一か八か賭けに出ることにした。


「そろそろ飽きてしたし……終わらせるか!君では僕を満足出来ないようだ」


「そうか!なら満足させてやるよ!」


そのまま俺は壁に向かって走り出しジャンプすると『獲物』だと思ったのかリノアは火属性魔法を撃つ。


炎緋廻えんしかい


明るい色をした炎の輪っかの形をした魔法は次々に俺を向かってくるが剣を使い滑らすように炎緋廻の軌道をずらす


しかしそれは壁に当たることはなくその場で曲がりまたもや俺に向かってくる


(なら!こうするまで)


俺はその場で大きくジャンプをし軌道をずらすと先程と同じように曲がり俺に向かってくるがそのタイミングで魔法を仕掛ける


「今だ!!」


〘第1式 炎灯華〙


炎緋廻と炎灯華がぶつかり合ったその時、大きな衝撃が俺たちを襲う。


「ほう、、君は僕を楽しませてくれるのか……嬉しいなぁ!」


その不快な笑みは俺を刺激させる


ーーもうここはあれを使うしかない。


古代魔法より上位魔法


〘死縛〙


極意魔法を放つと流石の勇者にも聞いたのか奇声を上げる。


「うぎゃゃゃゃゃゃゃ!!!」


まるで悪魔のような叫び……あいつらを思い出す。


嫌な過去だ、もう思い出したかもない程にその声は悪魔達を思い出させる


耳を塞ぎながらゆっくりと近づきもう一度剣を振るう


〖敵を滅ぼし 瞬なる剣ーー剣式 神滅しんめつ


それは神の如く瞬きもせずに一瞬のうちに頭から胴体そして足まで全身に無数の穴を空ける


それが【神滅】だ。


そのまま膝を地面に付けるとしばらく動かなくなる。


(このまま倒してもいいが……倒すと情報収集が出来ない)


「うっうっ……お前は誰だ!こんな奴聞いたことがない!なにだなにだ!」


流石の魔法耐性(極)があっても極意魔法は対応できないようだ。


「僕は僕はぼ、わ、私はこの子の師匠、アルべナ・ホーラ」


アルべナ・ホーラと言えば原作でも有名な人物だ

ある時は神の魔道士またある時は死者の神と言われるほどの実力者だ。


でも何故……アルべナ・ホーラがリノアを操作しているのか分からなかった。


「アルべナ……何故こんなことをする」


「そりゃもちろん楽しいからさ!」


向こう側で笑っているのが容易く想像ができる。


「でも今回はあんたがその魔法を使えることは想定外だった」


「だからどうした」


「まぁまずはリノアを返してもらうよ!貴重な実験体だ」


「お、おい!!」


すると、リノアから煙が発生すると一瞬のうちにリノアは消えた。それと同時にリノアが作った絶障慈炳にヒビが入る


「あ、やべ!」


パリン!っと割れるとそのまま落下で落ちるが【浮遊】でゆっくりと地面に足をつける。


(でも、、これで分かったあいつはまだ本来の力を発揮できてない……)


あいつはアルべナ・ホーラによってもっともっと改造され強くなる。でもあいつが乱入してくるなんて………想像もできなかった

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