第48話 世界の理とやらは存在しない
歩美は生きている……。そんな一言で俺は救われたかつて守れなかった人を、守る為に生きてエミリア達も救うと。
「さぁ!来てください!」
(あいつは人質にエミリアがいる、もしあいつが死にそうな時必ずエミリアを人質として取るだろうな)
なるべくエミリアを最優先に助ける為に俺はエミリアに近づく。
「そうはさせませんよ!」
「チッ!」
レッドルはエミリアに近づく俺をことごとく邪魔してくる。
「邪魔だ!どけ!」
拳を振りかざしレッドルの腹へと拳を打ち込む。しかしレッドルはそのようなダメージは一切喰らわない。
だからこそレッドルには余裕の隙が生まれる。
「エミリア!」
俺は油断している瞬間にエミリアに一瞬で近づく。
だがレッドルもそれを止めようとこちらに焦った様子で翼を広げた。
「し、しまった!?」
その声に反応したのか、エミリアは「うぅん」っと唸り出し意識を取り戻した。
「オ、スト君?」
「あぁ!エミリア無事だったか!?」
「う、うん!私は無事だよ!」
どうやらエミリアはなんの怪我もなく無事なことを確認した俺は風属性魔法の風刀ふうとうで縄を切る。
「きゃ!!」
エミリアをお姫様抱っこし安全な場所まで連れていき下ろした。
「貴様!よくも人質を!」
「やっぱり人質だったか………」
やはり思った通りエミリアは案の定人質になる(予定)だったらしい
だがそれはもう叶わない。人質を失い俺を引き止めるものが無くなった今俺はこいつだけを殺すことに集中出来るからだ。
「じゃあ手っ取り早く事を済ませるか」
「なんだと!?」
「お前はもう充分生きたはずだ……そろそろ地獄に行かないとな?」
俺は全力で行こうとした。
ーーしかしその瞬間、バン!っとドアが開き外から入ってきたのはザァベスト達だった。
俺はその人物に驚く。何故アイツらがここにいる?どうやってここまで来た?などと思い浮かべながらも一旦冷静になる。
「ザァベスト…」
「やっと見つけたぞ!オスト!」
「ザァベスト、シルク、リベストア、ブレアそしてあと誰だ?そいつは?」
「そんな事より!エミリアはどこなんだ?」
「そこだよ」
俺はエミリアのいる方向に指を指す
するとザァベスト達は近づき「早くこっちに!」っと手を取りドアの前まで戻る。
「オストもいいだろ?エミリアを取り返したんだ!早く帰ろうぜ!」
帰ろうか……それもいいかもしれない。だけど俺にはやるべきことがまだ残っている。
緋悪魔レッドルを殺すまでが俺の復讐であり使命だ
こいつはエミリアを誘拐した。更にはエミリアを殺そうとまでに至った
だから殺す!こいつは生かしたら行けない人物だ
「それはごめん……無理だ!俺はこいつを殺す」
「…………」
悲しそうな表情で俺を見てきた
だが心変わりはもう無い。エミリアはザァベスト達に任せたら大丈夫なはずだと思い俺はーー本気を出すことに決めた。
「皆……エミリアを頼む!あとは任せろ!」
「ほう?来てください!成長した力を!」
レッドルは地面に向けて火属性魔法の中級魔法【
〘炎灯〙とは地面から炎の柱が出てき上に立ったら最後一般人ならば焼き尽くされるほどまでとされている魔法だ
それを俺は軽く避ける。
「なるほど……お前の魔法の無詠唱はそんなものなのか」
俺はわざと煽るようにレッドルにそう言うと
「なんですか?貴方ごときが私より上回るとでも?」
「あぁそうだよ」
こいつに勝つにはこいつ以上のスピードや力が必要だ
ならそれに対応できる魔法となれば1つしかない
俺は全身に魔力を巡らせ初級魔法【身体能力強化】を使うがこれではレッドルの速さには追いつかない。
もっと速く!素早く!そして神速並の速さを手に入れなければならないとすればそれ以上の魔力を使う。
身体能力強化を超えし技。
〘身体能力強化(極)〙
体中から謎の青い雷が身に纏っているせいかやけに身体中が痛い………まるで何かに押しつぶされそうな感覚だ。一瞬でも気が緩んだら体がバラバラになるかもしれないような重たさもある。
だけどあいつを超えるにはこれしかないーーでもこの痛みは流石に。
「そうだ……あれを使うか」
どんなときも回復を一瞬で終わらす魔法。
〘ハイヒール〙
ハイヒールを常時俺の体にかけるとすこしはマシになったのかほんの少し気を緩んでもバラバラになりそうな重たさはなくなった。だがそれは『ほんとの少し』という事であって完全に緩んでしまうと確実に死んでしまうのだ。
だが、ここで耐えきらないとエミリアたちが危ない
「そんな体で一体どこまで戦えますかね?実に気になります!」
「あぁそうだな!俺も気になるんだよ!」
身体中が痛い中俺はレッドルに神速並の速さで近づき拳を顔に振るう。
だがレッドルはそれを止め空中に投げ飛ばされた。
「チッ……!」
その場で回転をし壁に足を付け思いっきり力を入れ回し蹴りをしながらレッドルを蹴る。
レッドルを思いっきり地面に蹴った俺は確実にダメージを与えたっと思っていたが煙からはレッドルが手で俺の蹴りをガードしていた。
「やはりいいものですね!」
ニヤリと笑い左手を俺に向かって差し出すと魔法陣が出現した。
「………っ!?」
このままではあいつらが危ない!一か八かこれに掛けるのみ
俺は【絶対障壁】魔法をザァベスト達に掛けたが次の瞬間、レッドルは俺に向かって火属性魔法を放つ。
〘
その場で爆発を起こし周りには煙が立つ。
その中ザァベストは心配そうにオストを見守っていた。
「オー君!」
シルクが大声で叫ぶと煙の中からはオストが勢いよく現れる。
「あっぶねぇ〜!身体能力(極)を発動してたから助かったけど……あいつはまだ生きてんのかよ……バケモンだな」
俺は前に目を向けると煙の中からレッドルはコツコツっと足音を鳴らしながら「ククク」っと笑い姿を現す。
「いやぁ実にすばらーー」
「黙れ」
俺はレッドルの言葉を遮り拳を出すとレッドルも同じく拳を俺に向けて出しお互いぶつかりあった拳は衝撃波が流れた。
「私の話の邪魔をするとは貴方欲深いですね」
「そりゃどうも!」
拳と拳が離れた時、俺の回し蹴りを食らわすと思いきやフェイントをして拳で顔面を殴ろうとしたがあっさりと避けられる。
「まだまだ甘いですよ?」
「………っ!!」
これでも対処出来るのかよ………。
俺はレッドルの様子を見ていると身体中からビリビリと電流が走る。
そろそろ身体も限界を迎えてきたか!いくら【ハイヒール】を常時発動してるからって人の体では限界が存在する。
そろそろ決めないとやばい!それにあいつは持久戦に持ち込む気だし……。
だがーーあいつを倒すとなれば一発逆転の何かを……
「何か……あいつを倒す為にきっかけとなる何かが……」
ーーその時、俺はあるひとつのことを思い出した。
そうだ!あれを使うしか他に方法はない
たった一つの方法とはーー
(コンマラス!ベクトロン!手伝ってくれ!)
(ん?大事な用なのか?)
(あぁ!コンマラス頼む!)
(仕方ないのう)
(我も手伝ってやろう!)
(助かる!)
念波を使い俺はコンマラス達を呼ぶと空へ飛びレッドルに向けて【分身】を使う。
「さぁ!これで簡単に見分けれないはずだ!」
「だからってどうしました?こんなもの一斉に消せば問題ーーな、いです…」
「どうした!声の大きさが小さくなったぞ?」
「ば、馬鹿な!?何故こんなにも魔法陣が!」
それもそのはず……俺の分身魔法はただの影ではなく自分の行動全てを思うがままに再現できるのだ。
レッドルの周りには無数の魔法陣で囲まれており一切動けない状態であった
「コンマラス!ベクトロン!」
「分かった!」
「任せときな!」
「王者の如くその者の価値を示してその力を発揮せし聖なる王『牙憐』」
「全てを破壊し全てを呑みこの世の全てを凌駕せよ『王竜の伊吹』」
コンマラスとベクトロンは本体である俺が発動した魔法に直接その魔法を打ち込む。
この魔法は喰らうが喰らうほど溜まった魔法が魔力へと変換され合体し一つの魔法として発動する物。
いい感じに魔力が溜まっている……ならばこれを打ち込めば!
触れたと同時に爆発を起こす火属性魔法。
〘
と
己の肉体を喰らい続ける闇属性魔法
〘
を魔法を魔力へと変換する魔法【
「これで終わりだァァァ!レッドル!」
「さぁ来なさい!!」
魔法陣に魔力を込め一気に放つ!。
〘加魔換〙
俺が撃ったっと同時に分身達もレッドルに向けて放つと大量の魔力を肌に感じる。
「グギャャャャャャャ!私が人間如きにぃぃぃぃ!!」
レッドルはその膨大な魔法の中で発狂している。
◆
「はぁはぁ……やっと終わったのか?」
どうやらレッドルの魂ごと消滅しているようだった……。
俺はその場で尻もちを付く。
「オー君!!」
「シルク!!」
「よがっだぁぁ!無事だったんだねぇ!」
「分かったから!泣くのやめよな?」
「ゔん!!」
シルクの頭をよしよしと撫でながらリベストア達を見る。
「リベストアもブレアもザァベストもありがとうな!」
「私達はなにも」
「そ、そうよ!」
「とりあえずお前が無事でよかったぜ!」
「あぁ!」
皆との再会を喜びながらもひとつ疑問に思ったことがある。
「所でそちらの方は?」
「あぁ!この人は海龍といって海の王だよ!」
「へぇーそうなんだ!よろしく」
「あぁ!よろしくね!」
海龍?確かゲームでは敵キャラとして出てきてたよな?。
まぁいいか
しかしまぁ盛大に暴れまくったようだ……体ももう動かない……。
いつの間にか身体能力(極)は消えてるし
「さぁ!帰ろうぜ!オスト」
手を差し伸べてくれるザァベスト
だが俺はそれを断った
「ごめん!ちょっと寄る場所ができた……先に行っといてくれ」
「そ、そうか?分かった!今度こそは戻ってくるよな?」
「あぁ!」
「ならその言葉を信じるよ」
ザァベスト達は一足先に出口へと向かわせ俺はある所へ行った。
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