第47話 守る為に覚悟を決める
廊下を歩き続けところどころにある部屋を開け続けること約30分程度……俺はかなり疲れていた。
それもそのはずーーアーベルとの戦いで俺は魔力&体力的にもそろそろ疲労感が増してきたのだ。
(でも……やばいな、こんなに疲れてるのにまだ歩き続ける俺の体も)
そんなことを考え続けていると遂に最後のドアが目の前にあった。
「辿り着いた………ここにエミリアとあのクソ野郎の悪魔が」
ギギギィっとドアを開けると目の前には足を組みながらこっちを笑っている緋悪魔レッドルと上にはエミリアが縛り付けられていた。
「エミリア!?」
「よく来ましたね!人間」
「レッドル…………早くエミリアを解放しろ!」
「ふん!しばらくこの小娘は目を覚ましませんよ?」
俺は歯を食いしばり怒りを抑え睨んだ目でレッドルを睨む。
「お前………は俺が殺す!」
「おやおや!威勢のいいこと!その威圧感私は好みですよ!」
「うるせぇぇぇ!!」
火属性魔法【火球】をレッドルにぶつけるがそれはまるっきり効かない。
「チッ………やっぱり無理か」
「当たり前ですよ?貴方ごときでは私に攻撃は通じまい」
やはり効かない………レッドルは悪魔界で最初に作られた、いわゆる始まりの悪魔なのだ。
かつてこの世界には人間界しか存在していなかったがある日、神が「人間だけではつまらん」っと言い残しそれぞれ、悪魔・魔人・天使・人間この種族が作られ4つの壁ができた。
それがーー四族の狭間と言う呼ばれている。
これをこの世界の人達は信じているようだが実際ゲームの世界ではそのようなシーンは一切なく元からこの4種族があった。
(でも……よく閻炎魔もこんなバケモンを作るよな!)
俺は再びレッドルに近づきながら火属性魔法【火槍】を撃つ。
しかしそれは容易く避けられ跳ね返られる。
「くっ………!」
「だから言ったんですよ?貴方ごときで私は傷つけられないと」
「そんな常識も運命も丸ごと今ここで!ひっくり返してやるよ!」
俺は拳に力を入れ思いっきりレッドルに向かって殴る。
「外した!?」
確かにレッドルの顔に直に入れたはず………それなのにあいつは何事も無かったかのように避けたのだ
どうやって避けたかもわからなかった俺は一旦後ろに引く。
(なんで……当たらなかったんだ?確かに当たった感触はあったはず)
拳を見ているとレッドルが「アッハッハ!」っと笑い出し俺に指を指してきた。
「おかしいですね?貴方はなぜ私が攻撃を喰らわなかった?っと思ったことでしょう……それはですね!私が貴方のスピードを遥かに上回ってるからですよ!」
「な!?」
予想外の返答だった。
でも確かにそれ以外の確信はつかない……奴は俺以上のスピードを出しあんな軽々しく技を避けたんだ。
俺は魔法を使わずに単純な身体能力でレッドルに拳を振りかざす。
「ほう?避けられてなおまた来ますか!」
「当たり前だ!お前は俺が殺す!!」
ドンバンドン!っと周りの床、壁、天井全てに穴や凹みが出来てくる。
「ほらほら!もっともっと!来てください!」
「………っ!!」
レッドルが少し目を横見つけると俺は瞬時に懐に入り込み回し蹴りをする。
だがそれの攻撃も跳ね返されてしまった。
「つまらん」
「は?」
いきなりそんな言葉を口にするとレッドルは上にいるエミリアのところに飛び首をはねようとする。
「やめろ!!」
「知っていますか?人間は限界まで心を責められると壊れるか新たに力に目覚めるそうではありませんか!ならば今ここで!それを試してみようと思います!」
「だからってなんでそんなことを」
「それは貴方が弱っちいからです!それが私の理由なんですが?」
「………」
俺は自分自身が情けなかった………
何が好きな女の子を守るだ………何が誰一人見捨てないだ………俺はエミリア達に何もしてやれてないじゃないか………。
俺は異世界の住人だ。この世界に本当は来るべきじゃなかったかもしれないあの場所いや地球であの両親に殺されているべきだったのかもしれない。
だけど俺は自分欲求で生きたいが為に『転生札』を使いこの世界に来てしまった。
だからもしかすると本当は本当の主人公がこいつらを倒していくはずだったはずだ。でも俺のせいでゲームは成り立たなくなった可能性がある。
俺は妹も失い信頼していた家族も失いそしてこの世界でできた婚約者も親友も友達も全てを失ってまた一人ぼっちになるのかな………。
俺は頭を抱えながら地面にへたれ込む。
「おや?これはまさかの失敗パターンですかね?」
レッドルはそんなことを言うがその言葉は俺には一切届かなかった
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、俺はまだ生きていたいしあいつらともっとこれからも関わっていきたい
「お前は失敗作だ!死ねよ!失敗作!」
俺の心の中で俺が話しかけてくる。
俺は失敗作………
「そうだ!お前は失敗作だ!親からも見放されこの世界でも死ぬ!だから何も出来ない!つまり失敗作」
そうだ……俺は何も出来ないじゃないか
「でもなんでお前如きにあいつらが話しかけてくるんだろうな?無能なお前が!」
無能、あの時両親からは「無能なお前なんていらない!」っと言われたんだっけ?
「ゲームしか出来ないこの無能なガキは死ねよ!なぁ!」
そっか。死なないとダメなんだ。俺は俺が生きていることでこいつらに迷惑をかけるならそれならいっそ…………死ぬべき……な……ん……だ
「ふざけないで!!」
俺の脳内には聞いたことがある声が聞こえてきた。
居ないはずのシルク達だ。
「なんでオー君は死ぬの?なんでよ!もっと生きてよ!」
「そうだぜ!?オスト!お前ここで死ぬのか?」
「そうですわよ!オスト!まだ結婚式もあげてないのに」
「オベストはこのまま死んじゃうの?」
皆が俺に何か言ってきている。でも………。
「なぁ邪魔だよな?こいつら!ならいっそ殺しちまえよ!」
俺自身が話しかけてくる。俺は死にたいんだ……
でもなんでみんな俺の邪魔ばっかしたがるんだよ……俺はただの平凡でなにも特徴のない『一般市民』じゃないか
でももう無理なのかな……俺はあいつらと歩んでいく気力がなくなってきた。
エミリア……皆、ごめん俺もう無理だ。
その時、俺の背中に暖かい温もりを感じとった。
(お兄ちゃん……私はまだ生きてるよ!お願い私を見つけて!そしてまた暮らそう?)
それは前世で俺の妹だった歩美の声だった。
「歩……美……?」
俺の目からはポロポロと涙が零れ落ちそれにびっくりしたのかレッドルは驚く。
「まさか!?この状況化でも心が壊れないとは」
そうだ。歩美あいつは確かに『生きてる』っと言った。なら!俺はそれに答える。
俺は歩美のお兄ちゃんだ!
エミリアも皆も歩美も全員俺が助ける!!!
だから決心しろ!レッドルを倒す為に俺は俺の心を捨てろ!
「おやおやこれは面白そうですね?」
「待たせたな!レッドル、今度こそ地獄送りにしてやるよ!」
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