第34話 攫われた日

閻炎魔とは最強の三大王の内の1人であり炎を司り悪魔を従えるのだ。


本来のストーリーであれば勇者リノアが討伐するのだが……黎悪魔ザクエン

が倒された事により悪魔の中でも最も位の高い4柱の内1人が欠けた事により


閻炎魔は残りの3柱……


翠悪魔リバイタ・素悪魔フリート・緋悪魔レッドルに命令を下した。


「お前達……黎悪魔が倒されたことは知っておるな……」


「「知っております!」」


「黎悪魔が倒されたことにより我達の戦争は上手くいかぬ……それは何故か分かるか?」


「恐らく……黎悪魔ザクエンが倒されたことが原因かと……」


翠悪魔リバイタはその質問に答えた。


「そうだ……そして今回集めたのはほかでもない……黎悪魔を殺した奴を殺し我の元に届けよ!」


閻炎魔は立ち上がり命令を下す。


「「はっ!!」」


それから悪魔達は他の下位悪魔を連れてオストがいる場所に向かった。


「なぁなぁ!素悪魔フリート!殺すならさ!嬲なぶり殺す?苦しませながら殺す?どっちがいいと思う?」


「翠悪魔リバイタよ……今は任務中だ……集中しろ」


「ちぇ……あんま仕事に真面目になってたら駄目だよ…」


「2人とも……見えてきたぞ……そろそろ目的地だ」


ーー場所は変わりオスト達はーー


「いやっほーーい!」


「ザァベストあまりはしゃぐなよ〜!他の人に迷惑かかるから!」


「分かってるって!」


そう、俺達は今ーー海に来ているのだ!


それは……さかのぼること一昨日の話。

シルク達はコンコンっとドアをノックし部屋に入ってきた。


「え!?シルク達!?ここ男子寮なんだけど……」


「夏休みなのでバレずに来ました」


「そ、そっすか……それで?何の用だ?」


「実は……皆で海に行きませんか?」


どうやら提案者はリベストアでありエミリア達はそれに賛同をし俺達を呼びに来たとの事。

ちなみに……ザァベストは『おまけ』ということらしかった。


(しかし……女子の水着っていつ見ても……飽きないよなぁ……)


美少女4人組が水着を来ているのだ……泳ぎが得意じゃない俺でもずっと見てられる。


その時、エミリアがこっちに走ってきた。


「オスト君も泳ぎましょうよ!」


「え?俺はいいよ……泳げないし」


「なら泳げるようになるまで練習しましょう!手伝いますよ!」


「分かった分かった」


仕方ないと思った俺は密かに魔法創作で【水中移動】を作り出した。


(本当は……初めから作っとけば良かったんだけどめんどくさいんだよね)


そんな事を思いながらも皆と泳いだり遊んだりし夕方になった。


「フゥ〜!遊び疲れたァァァ!」


「そうですねぇ〜!リベストアなんて寝てしまいましたからね」


「ハハそうだな!オストが婚約者じゃなかったらおんぶして帰れなかったな!」


「本当……よく眠ってるよ……」


宿泊場所に帰ろうと歩いていると後ろから物凄い魔力数を察知した。

俺はすぐに後ろを向き辺りを確認するが誰もいない。


(き……のせいか?いやでもおかしい)


その時、後ろで「きゃ!」っと声が聞こえ向くとエミリアが空中に浮いていた。


「エミリア!」


「んん"!」


どうやら魔法障害的なものでエミリアを浮かせている本人がいるようだ。


〘魔法禁止〙


魔法を無理やり禁止にさせ使わせなくする魔法だ。

それを使うと現れたのは3人の悪魔だった。


「なんだお前たちは……」


「我々は閻炎魔様に仕えし4柱の内の1柱…素悪魔フリート」


「俺は!4柱の内の1柱…翠悪魔リバイタ!」


「僕は……4柱の内の1柱…緋悪魔のレッドル」


「まさか!?黎悪魔ザクエンの仲間か!」


「その通りだ!感謝しろよ?人間」


俺に復讐してきたのか、3人の悪魔は上から見下ろす。


「何故……ここに来た」


「そりゃ〜勿論復讐ですよ」


緋悪魔がそう言うとニヤニヤしながらこちらを見てくる。


(ここでアイツらを守りながら3人を相手にするのは厳しい、なら!)


俺は先手必勝っと思い3人の悪魔に迫った。


「な!!!」


最初に素悪魔の手を掴み戦式を放つ。


〖可憐に舞うは洗練された花びらーー戦式 花吹雪〗


めいいっぱいの力で悪魔の腹部に膝を入れる。

素悪魔はガハっと血を吐き地面に降りた。


「喰らいやがれ!」


〘針撃〙


初級魔法の無属性魔法の針撃は俺に向かって撃ったが……避けたが素悪魔は更に撃ち続けるがしかしそれを俺は避けまたもや戦式を繰り出す。


〖無数の数は殲滅しひれ伏せーー戦式 無壱〗


俺の拳が素悪魔の胸に当たると次の瞬間、素悪魔には大きな穴が身体中に空いた。


そう……無壱とは拳が当たると最後その物が絶滅するまで見えない衝撃が体中に走るとされている技だ。


「き、、さ、ま」


「まだ生きてるのか……やっぱ上級悪魔はしぶといな」


「何をしている……素悪魔フリート」


「黙れ!翠悪魔リバイタお前はそこで見とけ!」


フリートは指をさしながらリバイタにキレた。


「やれやれ……フリート貴方だけでは勝ち目はありませんよ」


「おい…お前俺ではこいつに勝てないみたいな言い方をしてるな?レッドル」


「だからそう言ってるのです……貴方では勝てませんよ」


「黙れ………黙れ!黙れ!黙れ!俺がこいつを殺る!」


「リバイタ……フリートを止めてください」


「チッ……仕方ねーな」


〘風遮〙


風属性魔法で作りだした四角いキューブの形をした魔法で素悪魔を閉じ込める。


「なんのつもりだ……緋悪魔」


俺は緋悪魔を睨めつけながら質問をする。


「別に貴方には関係ないですよ……ただこちらとしても戦力を失うのは辛いことでしてね……」


ニヤリと笑い次の瞬間後ろにいたエミリアが「オスト君!」と言いながら炎の渦に囲まれ消えた。


「エミリア!?!?」


「その方はこちらですよ……」


緋悪魔の方を見るとエミリアが炎の渦の中に閉じ込められていた。


「お前……エミリアを離せ!!」


俺は怒りに飲まれ2人に飛び掛かった。


〘第1式 炎灯華〙


その炎を緋悪魔に投げる……しかしまるで息をするかのようにそれを緋悪魔は止める。


「な!?」


「やれやれ……わたしが黎悪魔や素悪魔より弱いと思いました?」


「くっ………」


「ではそろそろわたし達は引くとしましょうか……リバイタ」


「おう!」


翠悪魔リバイタは地面に向い風属性魔法を撃ち煙を立てた。


「ま、待て!」


俺はその時……見てしまった。


緋悪魔達が煙で覆い被さる時…緋悪魔は俺に向いニヤリと笑い口を開いた。


「く・や・し・け・れ・ば・こ・い!」


声は聞こえなかったが口の動き感情その2つで俺は察した。


煙が無くなるとあいつらの姿はなくなり同じくエミリアの姿もなくなった。


「オー君!大丈夫?」


「オスト大丈夫か!?」


「オスト……大丈夫ですか?」


「3人ともありがとうな」


3人に暖かい言葉で言われたが俺はエミリアを攫われた悲しみにより


拳で自分の顔を殴った


「オー君やめて!」


「シルク……ごめんなザァベストもリベストアも」


「わたくしは大丈夫です、、エミリアさんが攫われたのは残念ですが」


「俺も大丈夫だけど……オスト」


(俺のせいだ……俺がしっかりしてなかったからだ……俺の俺のせいだ!!)


「やめて!!!」


シルクが大きな声で叫ぶ。


「エミリアが攫われたのは残念だけどオー君も傷つくのはやめて!」


「シルク……」


「オスト……俺もなんでも手伝うからさ!お前もしっかりしろよ!」


「ザァベスト……」


「そうですわ!エミリアさんを取り返すことにまずは集中しましょう?」


「リベストア……」


俺は改めて思った事がある……それはーー。


(こんな……優しい奴らに囲まれて幸せだな……前世と比べ物にならない)


「ありがとうな……お前達……」


俺は3人の慰めを受け精神を持ち堪える……しかしエミリアを攫われたのは、俺が原因だ……だから今度は俺がこいつらを守っていくんだーーだから


何としてでも俺がこいつらを守ってやらないといけない。


(この事態は俺が解決する……こいつらには迷惑になって欲しくない)


「オスト!いまからお前の親父に報告しに行って対策を立てようぜ!」


「………」


「オスト?」


「悪いな……ザァベストこの事態は俺が片付けるだから安心しといてくれ」


「な、何を言って……」


「そうだよ!?オー君何を言ってるの!?」


心配そうに見つめるシルク達……頼むからそんな顔をしないでくれ……。


しかし今になって思ったこともあった。


俺は昔からいや前世の頃から怖かったんだ……【何かを失う】って事が誰よりも怖くて仕方がなかったんだ。


だから10年前の時もエミリア達には幸せになって欲しい俺なんかと関わって欲しくない……これが心の片隅にあり敢えて違う道を選んでしまった。


でもこの学園に入学してからは楽しかったんだな……。


元婚約者だったエミリアにシルクやリベストア……寮で知り合った男友達のザァベストに模擬戦で戦ったロン達……。

色んな奴らと関わってきて……俺は変わったと思った。


でもーー実際は変わってなかった。


前世むかしのように妹の歩美を失ったり尊敬していた両親の顔を知ってしまったり俺はそのトラウマを神様と会った時に解消していたの思っていた。


でも違ったんだな……。


俺はその為に動く……その為に使命をまっとうする……その為に幸せにする。


でも1つ気になってることがあった。


どうして俺が存在するキャラとしてでは無く存在しないキャラとして生まれてきたのかを……


それが今になってわかった、例え俺が死んでも代わりが居てリノアも居ていつ…俺が死んでもいいようにこの世界は作られていたのかを


今ここに来て初めて分かった。


ならいいぜ………その考えに賛同してやるよ…誰が作ったか分からない世界だが何度だって俺は戦い世界を変え何度だって俺はこの世界の最強となってやるよ!


俺は世界を守りーー世界は俺を利用するーーいい駒って訳か……。


待っていろ……エミリア必ず俺はお前を助ける……例え俺が死のうとも待っていてくれ……。


でもその前にこいつらには礼ぐらいしておかないとな。


「ザァベスト、シルク、リベストア」


3人はキョトンとしながら心配そうに見る。


「ありがとうな……いままで楽しかったよ……」


「オー君?」


「シルク…お前には色々助かった…あの日あの場所でお前と出会ってなければ今の俺はなかったのかもしれない」


「オ、オー君………」


「オスト!!なんだよいきなり!」


「ザァベストもありがとうな…初めて俺は男友達を作れたんだ感謝してるよ」


「は?お前………まさか」


「リベストアもありがとう……最初はお嬢様っぽいなって思ったけど誰よりも優しくて色んな人から好意を持たれてて尊敬したよ」


「オスト………」


感謝の言葉を言い終えるとザァベストは半泣きになりシルクとリベストアは泣いていた。


「ありがとうな……3人とも俺はお前たちのおかげで今の俺があるんだ……」


(離れたくない……これからもこいつらと一緒にいたい……でも行かないと)


後ろを振り向き俺は歩く……でも後ろでは俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。


悔しい……離れたくない……死にたくない……。

でも俺が行かないとエミリアは助からない……。


俺はそこで立ち止まり無属性魔法の【転移】を使った。

消えていく定かあいつらの方向を見ると悲しい気持ちでいっぱいになった。


その時……俺はある言葉を口にした。


「さ・よ・う・な・ら」っと。


そして俺はその場を消えた。

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