第10話 正体

俺はコンマラスと契約を結び〘転移〙で自分の部屋に帰ると目の前には悪巧み王女のベノア・ベンフォントがいた。


「え?オスト!どっから出てきたの!?」


「え?えーっと………分かりません!っていうかなんでここにいるんですか!?」


「晩御飯を呼びに来たんだけど」


「くっ………」


「それより…さっきまで居なかったのになんでいきなり現れるのかな?」


「………うっ」


流石に言い訳はできなかった……もう既に目の前で見られているのだ……。

アリア見たいな天然ドジっ子なら誤魔化せるが…ベノア姉はキツい……


「見逃してください!」


俺は小さな体で90度に土下座をしスっと顔を上げると目の前には何やら悪巧みをしている姉の姿があった。


「オスト〜」


「はい!」


「そう言えばこの間のケーキ?ってデザートがあったよね?」


「はい………」


「それを私が欲しい数だけくれたら見逃して上げてもいいかな?」


「それはちょっと………」


俺は違う方向に顔を向けるとベノア姉は【前を向け】っと言った瞬間、俺は問答無用で前を向けさせられた。


それはベノア姉だけが持つ固有魔法だ……。

固有魔法とはその己自身が持つことが出来る魔法でありベノア姉は言葉に魔力を乗せ放つことが出来る魔法〘強制言葉きょうせいわーど〙だ。


「オストは黙ってて欲しいのよね?」


ベノア姉は怖い顔でこちらを睨んでくる………。


俺はそれに耐えきれず頷いてしまった。


「それじゃー他の人に見つからないようにいつでもいいように用意しといてね」


「ういっす……」


ベノア姉はそう言い残すと俺の部屋を後にした。


「くっそ………俺はまたやらかしてしまったのか……」


俺は床に手をついて落ち込んでいると俺の影からコンマラスがひょこっと出てきた

何故俺の影から?っと言うと、従魔を連れて行きやすくするために闇属性魔法の〘人影〙を作り、その中にコンマラスが入れるようにしたのだ。


するとコンマラスは俺に話しかけた。


「主……その言い方だと前回もあったのか?」


「あぁーそうだよ!こんちくしょーめ」


その時だった、俺のドアが再び開いた。


「オスト様〜」


「ど、どうしたのアリア?」


コンマラスは一瞬で〘人影〙の中に入り身を隠した。


「あれ?もうひとりいませんでした?気のせいかな?」


「そうじゃない?ってそれよりどうしたの?」


「あぁーそうでしたァ!あと5分後にお夕食なので食堂に来てくださいね!」


「わ、分かったよ」


アリアはそう言うとバタン!っとドアを閉めた。


「ふぅー危なかったァ」


「ほんとだな……主が言ってたことは正しかった…」


「だろ?」


そう、俺はここに来るまでにある約束をコンマラスとしたのだった。


内容は、、、


王城の人達全員に見つかるなっと言う約束をな………


「でも、1番見つかったらあかん人に見つかってもうた………」


「でも、主が…その条件させすればベノア様?も言わないんじゃ」


「そうなんだけどねぇ〜、、はぁ〜一体何個要求してくるんだか……」


そうして俺は食堂に来た。


すると目の前では物凄い威圧を放ってくる親父がいた。


「オスト来たか……」


「な、なんでしょうか?」


「取り敢えず座りなさい…」


「はい…」


俺は椅子に腰を掛けると親父が口を開いた。


「オスト……実はな」


「?」


俺はごくりっと唾を飲み込み…なにかとんでもないことがあったのか?っとでも思いながら座ってみていた。


「実はな………この間のケーキってやつをもっかい食卓にディナーとして出してくれんか?」


「……………はい?」


「いやだから食後のデザートとしてどしてくれないかなぉって父親からの頼みなんだが……」


「………」


俺はものすごく考えた……その結果……。


「ん〜仕方ないなぁ」


「いいのか!?」


もはや父親としての威厳はスっと消え去るとまるで子供のような笑顔を俺にみせた。


「ただ作る人はコックの人でいいよね?」


「それで大丈夫だ!」


「分かった…それじゃー後でコックにレシピとか伝えとく」


俺は親父達とそう約束をし晩御飯を食べ終えると皆が食堂を出ていく中、ベノア姉と俺だけになってしまった。


俺は自室に戻ろうとするとベノア姉は俺を呼び止めた。


「オスト」


「?」


「さっきの約束覚えてるよね?」


「さっきの約束?あぁー覚えてるよ!コックにはちゃんと伝えるからさ!」


「違うわよ……私との個人の約束よ」


「そっちか………」


そう、、俺はベノア姉に弱みを握られたままだったのだ。


「それで今から作れと?」


「えぇーそうよ」


「まぁーすぐ終わるしいいか……」


俺はこっそりキッチンに行き手早くケーキを作るとベノア姉に持っていった。


「はい……どーぞ」


「ありがとうーー」


(ったく笑顔だけなら美人な人なんだけど性格が………腹黒いんだよなぁ)


「なによ……オスト私の顔になにか付いてる?」


「なんにもついてないよ」


それからベノア姉がケーキを要求したのはたった1個だけだった。

俺は自室に戻った。


「主………」


「うわびっくりした」


すると俺の影からいきなりコンマラスが出てきた。


「なんだよ………」


「実はケーキってものをわしも食ってみたいんだが……」


「駄目だよ?今の時間に食べたら胃とかもたれるよ、明日ね」


「分かったのじゃ…………」


俺はそう説得するとコンマラスは渋々と影に戻って行った。


(まぁー本当はご飯とか従魔には要らないんだけどね………)


そう、、本来であれば従魔契約をしたものは主の魔力を糧とする為殆ど食費が掛からないのだ。


「さてと明日はクリシスさんとの訓練は休みだし、明日は思いっきり魔法の特訓が出来るぞ!!」


俺はベットに寝転がりながらそんなことを考えていると、ドアからコンコンっと音が聞こえた。


「はい」


「オスト、私だ……入るぞ」


「あ、父さん………」


親父は部屋に入ってくると後ろから第一王子のノスト・ベンフォントも同行していた。


「ノスト兄さんまでどうしたの?」


「やっほーオスト」


「それは私から話そう………」


そう言うと父さんは改まった様子で俺に問いかけてきた。


「オスト、お前は結婚願望とかあるか?」


「結婚願望?一応出来ればいいかなぐらいには」


「そうか…………」


「それでそれがどうしたの?」


いきなり結婚願望とかあるか?っと聞かれた俺は頭の上に?マークを思い浮かべたままなんでいきなりそんな話をするんだろうっと思いながら親父とノスト兄を見ていた。


するとノスト兄が笑いだしたのだ。


「ははは、父上…僕から言うよ……実はねオストに婚約者候補が出来たんだよ」


「婚約者?」


「そそ…まだ仮みたいな感じだけど…一応候補人数としては3人だね」


「意外と多い!?」


俺は予想を上回るほどにびっくりしてしまった………。


だって俺、、前世でも学生だもん!恋愛経験皆無だし!!


っとまぁーそんなことは置いといてっと………。

ノスト兄がそれを話すと父さんはプルプルしながら泣いたのだ。


「うぅー私の可愛い子供のオストが婿にうっうっ………」


「大丈夫だってば、、父さん……俺はまだ5歳だし」


(え?父さんってこんなに心弱かったけ?)


「それじゃー僕達は行くね!婚約の件に関してはまた今度ね!それじゃーまた明日」


「オスト〜おやすみ〜」


「はいーおやすみなさい」


2人は俺の部屋を後にし、部屋から出ていった。

そのとき俺の脳内にはあることが浮かんだ………。


(あれ?何気に今世で親が泣くシーンを見たのってこれが初だよな………?)


その日、俺は初めて親が泣くシーンを見てしまった日であった。

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