公子、ドワーフの里へ行く2

「こちらは、剣以外の武器を開発する工房ね。村人が自衛するのに、剣を使えない人もいるから、使いやすい武器を考案しているの」


 工房の中には、魔物の動きを止める罠や、ボウガンのような武器が置かれていた。

 付与魔法文字を刻まれた品も多い。


「色々あって面白いな」


 見ていると、久しぶりに何か作りたくなってきた。

 学園に入学するまでの俺の趣味は、魔道具作りだった。


「ちょっと、机と紙を借りるぞ」


 俺は近くの机に置いてあった紙に、設計図を書き始めた。

 手の空いたドワーフが、俺の設計図を覗き込んでくる。


「何だこれは? これじゃあ、魔力がムダに滞留するだけで……、いや、静電気……!?」


 俺の書く設計図を不審げに見ていたドワーフは、途中から黙って、俺の手が動くのを見つめていた。

 氷属性の魔力で摩擦を起こす。それで出来た静電気を集めて……


「威力はそこまで出ないが、敵の身体の一部にでも当てれば、感電して動きを止められる。形状はただの棒で良いから、量産化もしやすい。便利そうだろう?」


 俺の書いた設計図を見ていたドワーフは、目を丸くして固まってしまった。

 その様子に、他のドワーフたちが寄ってきて、同じように設計図を見て固まっていった。


「……人間の付与魔術師は、こんなものを簡単に書いてしまうのか?」


 呆気にとられたまま、ドワーフたちは隣のナディアに尋ねた。


「いえ。この人は色々と規格外なの。……まさか、まだこんな能力を隠し持っていたなんて。びっくり箱もいいところね」


 がしりと、ドワーフに腕を掴まれた。


「ちょっと来てくれ!」


 それから、ドワーフたちは知り合いの鍛冶師を集めて、俺に兵器の設計図から、作りかけの掘削機まで、あらゆる物を見せて意見を求めてきた。

 設計図を見るのは楽しいから良いんだが、これって、ルヴィエ家の機密情報を見まくっているんじゃないか?

 俺、無事にルヴィエ領から出られるんだろうか。


 その晩は、いつまでもドワーフが設計の話を続けるのを、寝ないと俺の魔力が回復しないという理由で、ナディアが追い出していた。

 次の日も、俺が治療する患者の隣に、ドワーフたちは設計図を持ち込んで、ああだこうだ言い合っていた。

 昼過ぎには下山すると伝えると、大ブーイングで、


「ナディア姫様、絶対に彼を婿にして、連れてきてください!」

「いえ、彼は公爵家を継ぐの。私が向こうに嫁入りするのよ」

「こんな天才の時間を、領地経営の雑務で無駄にするなんて勿体ない。研究室に閉じ込めましょう!」


 ドワーフたちの愛が重い。

 大騒ぎするドワーフたちに、必ずまた来るように約束させられて、俺たちは山を下りた。




《 セリム・ベルクマン 男 16歳 》

《 求道者Lv: 87 次のレベルまでの経験値:4800/8800 》

《 MP: 1591 / 8723 治癒スキル熟練: 7001 聖属性スキル熟練: 2599 》


《 スキル 》

《  治癒 》

《   簡易治療…小さな切り傷やすり傷を治す 》

《   体力支援…闘病中の相手に体力の支援をする 》

《   免疫操作…免疫で抵抗可能な病気を治す 》

《   並行操作…免疫操作を7名まで同時にかける 》

《   再生治療…あらゆる身体の損傷を治す 》

《  聖属性 》

《   神眼…聖属性と闇属性を知覚する 》

《   聖鎖結界…闇に近い敵を捕縛し、継続ダメージを与える 》

《   聖守護結界…味方にかけると、あらゆる闇属性の攻撃を無効化する 》

《   浄化…悪魔の力の温床となる闇の穢れを消し去る 》

《   天声…闇に傾きかけた人の目を覚ます 》

《   聖なる開花…使用者の周辺に花を咲かせる 花の付近の人間は絶望から守られる 3日程度の持続効果あり 》

《  森林浴…植物から余剰の生命エネルギーを受け取り、空腹を満たす 僅かだがMPも回復する 》

《  海水浴…海から余剰の生命エネルギーを受け取り、空腹を満たす 僅かだがMPも回復する 》



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