公子、目標をしぼる

 午後になると、ナディアから見舞いに来たいと連絡があった。受け入れると、すぐに彼女は公爵邸にやって来た。


 ナディアを客室に通す。

 部屋には彼女の他に、レオとギルベルトも来た。カティアとヴァレリーもいる。皆、昨夜のことで話したかったらしい。


「それじゃあ、昨日の犯人の情報をまとめるわね」


 最初にナディアが話し始めた。


「昨夜、セリムが捕まえた者たち、マルクを除いて、皆、教会関係者だった」

「そうか」


 俺の治癒能力が目的っぽかったもんなぁ。


「公子が気を失われた後、王国の騎士に事情を聞かれて、私が代わりに答えておきました。我々が昨日マルク卿と話した時、彼がセリム公子を聖王国に連れて行くと言っていたことを伝えました。優秀な治癒術士を確保しようとして、教会が暴走したと、王国は考えているようです」


 ヴァレリーが続けて説明してくれた。


「魔人がいたから、悪魔に操られていたと言い訳できるけど、教会関係者じゃね」


 教会関係者が悪魔の誘惑に負けたなんて、不名誉もいいところだ。


「王国は調査団を作って、王都の教会を徹底的に調べるつもり。教会を潰す勢いでやるでしょうね。王権にとっては、外国に本山がある教会なんて、もともと邪魔者だから。これを機に、聖王国とうちの教会を切り離すかも」


 ナディアの言う通り、野心家の国王は、この機に王家が管理できるように、教会の作り替えを狙っていそうだ。


「……俺も当事者として、1度教会の内部を見ておきたい」


 教会は<神眼>を使って調べるべきだ。レベル70になった時の、新しいクエスト、


《 闇の発生源を探せ 難易度★★★★☆ 》

《  どこかで、悪魔に力を与える穢れが生じています。探し出して浄化しましょう 》


 教会内部に、<闇の発生源>とやらがある気がする。

 昨日の事件には、魔人が6体も関わっていた。魔人へエネルギーを供給する拠点があったはずだ。探そう。


「そうですわねぇ。でも、王家は他貴族の介入を喜ばないと思うわ」

「ああ、そうだな」


 ナディアの指摘通り、王家は教会を封鎖して、自分たちだけで都合よく調べたがっているだろう。


「策としては、王女に依頼するといいんじゃないかしら。セリムと王女の婚約の話が出ているところで、無下にはできないでしょう」


 確かに、婚約の話が出ている王女に頼めば、うまくいきそうだ。

 でも、ナディアの口から、王女に頼れという言葉を聞くとは。ナディアとも、婚約の話が出ていたんだけど……。

 気になって視線を彼女に向けると、ジッと見返された。


「これはどう見ても重要な局面。手段を選んでられないわ。教会の問題の解決に集中しましょう」


 ナディアの言葉に頷いた。

 昨日からいろいろありすぎて混乱しているけど、冷静に1つずついこう。

 悪魔による王都陥落の未来を阻止するための、ここが正念場かもしれない。


「ありがとう。その手でいく」

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