第91話 帰り道で

無事に装備を試す事が出来たので、ほぼ目的は果たしたようなものだが、葵は少し不満顔だ。


「凛くんがカッコ良く剣とクロスボウでモンスターを倒したのに、私のスタンバトンは出番がありませんでした」


やっぱりあまり理解してくれて無かったのか。スタンバトンを使う機会が無くて本当に良かった。


「俺もアーマードインナーは性能を発揮する機会は無かったから同じだよ」

「凛くん、アーマードインナーの性能を発揮する機会なんて必要ありません。びっくりする事を言わないでください」


まるまるその言葉は葵に返したくなったが、グッと出かかった言葉を飲み込み魔核を集めて、ロードサイクルで帰路につく。

いつも通り危なく無いように縦一列になりロードサイクルを漕ぐ。

今回の戦闘でわかった事は、クロスボウは練習すれば精度が上がる気がする。ゴブリンより上位のモンスターでも頭などの急所に命中させる事が出来れば倒す事が可能かもしれない。

強化セラミックの剣は今回ゴブリンの命を刈り取ったが、今後使っていく為にはかなりの修練を必要とする気がする。

剣が凄くても使うのが素人同然の俺ではモンスター相手にはかなり厳しい。

どこか剣術道場に通えばいいのかもしれないが、モンスターと白兵戦を演じるには技だけで無く体力も足りない気がするので、それらをカバーするようなスキルが手に入らないものだろうか。


「凛くん! モンスターです」


後方から葵の声が聞こえて来たので、前方をしっかりと見るが、確かに小さくモンスターらしき姿が確認できる。

だが俺達に要請は来ていないので他のサバイバーの獲物なのだろう。


「凛くん、あのモンスターはDランクのリザードマンです」


Dランク。以前戦ったギガントオーガ達と同ランクの格上モンスターだがサバイバーの姿はここからでは確認出来ない。

巻き込まれ無いように、ロードサイクルを降りて状況をその場から見守る。


「あっ!」


最初は一体だけ確認出来ていたリザードマンだが、見ていると後からもう二体現れ、合計三体のリザードマンが集結している。

Dランクのモンスターが三体もいるとは……

これはDランクのサバイバーでも苦戦するはずだ。

モンスターが出現したばかりだったのかサバイバーはまだ現れる様子は無い。

Dランク三体が暴れ始めたらこの辺りもただでは済まないだろう。

最悪俺と葵で倒すか? ただあのリザードマンがギガントオーガと比べてどうなのかがわからない。

可能性としてギガントオーガはDランク下位であのリザードマンは上位だという事もありえるので出来る限りリスクは回避したい。

目の前の状況に判断を迷い躊躇していると、視界の端に人影が見えた。

ようやくか。

どうやら担当のサバイバーが到着したようだ。

ほっとしながら到着したサバイバーの方を見て、俺は驚いて声をあげてしまった。


「えっ?」

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