第71話 前門の虎後門の狼
俺は距離を取りながら次々にスキルを発動させ叩き込んで行くが、ギガントオーガは消滅してくれない。
「まだダメか……硬すぎるだろ」
ついに『エクスプロージョン』も使用回数上限に達してしまった。
残念ながら完全に火力不足だ。命を断ち切る事が出来ない。
ボロボロになりながらもギガントオーガが一歩ずつゆっくりとこちらに向かって来る。
やばい……
俺は後ろに下がろうとするが、俺の後方では葵達がもう一体のギガントオーガと交戦していた。
これ以上は下がれない。
これ以上下がってしまうと、葵達に影響が出てしまう。
ここでやるしか無い。
俺は手にサバイバルナイフを握りしめ、向かって来るギガントオーガに向けて残る『ウインドカッター』と『アイスジャベリン』を発動しなくなるまで浴びせかけてやった。
「まだダメなのか……」
どう見てもボロボロだがギガントオーガは倒れる事なくこちらに向かって来ている。
やはり俺の使えるスキルの中では神木さんのスキルの火力が飛び抜けており、それ以外のスキルではギガントオーガをしとめる事が出来そうに無い。
これで完全にスキルを撃ち尽くしてしまったので、俺にはもう手に握っているサバイバルナイフしか無い。
ゴブリンにも劣る俺の近接戦闘がギガントオーガに通じるとは思えない。
だが、ここを引いてしまうと葵たちに押し付ける形になってしまう。
今は葵達が押してはいる様だが、2体同時に相手では全く状況が変わってしまうので、ここで俺が逃げ出す事は出来ない。
前門の虎後門の狼とはまさにこの事だな。
「ははっ……」
この場面で柄にも無く昔の故事が浮かんで来たことにおかしくなって笑ってしまったが、俺がやられると葵も逃げきれなくなる。それを回避する為に極限の状況の中で俺は頭をフル回転させていた。
何か無いか? この場を切り抜ける方法は何か無いのか?
迫って来るギガントオーガから目を逸らさずに勝利への糸口を模索する。
余裕のある状況ならこの微かな違和感には気づかなかったかも知れない。
ただ極限まで神経を集中した今だから気づけた。
さっき『アイスジャベリン』と『ウィンドカッター』を撃ち切るまで夢中でギガントオーガに放ったが、よく考えてみるとおかしい。
『アイスジャベリン』も『ウィンドカッター』も発動しなくなるまでの回数がいつもより一回多かった。
いつもはスキルの上限回数を把握しながら戦っている。たださっきは追い詰められてスキルが発動されなくなるまでスキルを連呼していたので回数など気にしている余裕が無かったが、今思い返すとレイドが始まってから使用したスキルの回数が一回ずつ多い。
スキルは使用上限回数を超えて使える事は絶対に無い。
どんなに集中しようが気合を入れようが使える事はあり得ない。
となると可能性は二つしか無い。
単純に俺の数え間違い。これであれば、もう俺には手がない。本当に詰みなのでサバイバルナイフを構えて特攻する事しか残されていない。
もう一つの可能性は戦闘中のレベルアップによるスキル使用回数の増加だ。
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