第41話 オーガ
葵はクラスでも中心的存在なのか、学校生活も毎日楽しそうなので、話を聞いている俺まで嬉しくなってくる。
「葵、今週の金曜日なんだけど、学校終わってから買い物に行かないか」
「金曜日にですか?」
「そう、一緒に行きたいんだけどダメかな」
「ううん、ダメじゃないです。行きましょう」
「それじゃあ、学校が終わったら一度荷物置いてから行こうか」
「はい」
ふ〜。とりあえず無事に葵を誘うことができて良かったが普段一緒にいるのに買い物に誘うだけで緊張してしまった。
『『ピピッ』』
家に向かって歩いていると俺達の端末に通知が来た。
普段学校にいる間は通知が来ない設定になっているのでこの時間に通知が来る事は珍しい。
俺と葵は急いで部屋まで戻り、装備を整えてからロードサイクルに跨り現場へと急いだ。
十五分程で現場に着いたので自転車を置いてモンスターのところへ向かうと二体のモンスターが暴れているのが見えた。
「あれはEランクのオーガとジャガーマンですね」
あれがあの有名なオーガか。
大きさはオークとほぼ同じ二メートルちょっとぐらいなのでトロールと比べると小さく感じるが、ブヨブヨのオークとは違い身体は全身筋肉で覆われておりムキムキマッチョだ。
「葵、俺がオーガをもらってもいいか?」
「はい、もちろんです。それでは私がジャガーマンを倒しますね。もし危ない様ならスイッチするのですぐに言ってくださいね」
「ああ、頼んだよ」
正直ジャガーマンの事はよく知らないので、それであれば少しでも知識のあるオーガを俺が担当した方が勝率が上がる。
少し不甲斐ない気もするが、俺が倒し易いモンスターを優先して選んだ方が良い。
俺は葵よりも弱い。Eランクの葵に付随しているだけのFランクに過ぎない。俺が調子にのって判断を誤る事はパーティの壊滅を意味する。
俺が危険な目に遭うだけならまだいいが、俺が戦えなくなる事は葵が危険に晒される事に直結するので、それだけは避けなければならない。
俺にも豆粒ほどの見栄とプライドはあるが、そんなもの天秤にかけるまでも無い。
「とにかく倒す。『ファイアボール』 『ファイアボール』 『ファイアボール』」
オーガの耐久力と出方を見るために『ファイアボール』を連発するが、残念ながら『ファイアボール』はオーガにダメージを与える事は無く、着弾すると煩わしそうに払い除けられてしまった。
俺の『ファイアボール』の威力が低すぎるのもあるが、オーガの魔法耐性が高いのか炎への耐性が高いのか全くの無傷なのは予想外だった。
『ファイアボール』を全弾撃ちつくしながら頭の中で作戦を練る。
「これでっ! 『ウィンドカッター』」
トロールの足を切り刻んだのと同じ様にオーガの足を狙いスキルを発動する。
風の刃がオーガの足に向かって飛んで行くが、察知したオーガは身長ほどもある高さをジャンプして避けてしまった。
「飛びすぎだろ……」
オーガの筋肉は伊達では無く、今の跳躍を見る限り今までのモンスターの中では一番身体能力に優れている様だ。
横目で葵を確認する。駆けながらスキルを放っているが、ジャガーマンと呼ばれるモンスターは、四つ足となり物凄い速さで左右に移動を繰り返し直撃を避けている。
さすがにEランクのモンスターだ。あっちも簡単にはいかないな。
俺は再び意識をオーガだけに集中する。
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