第31話 葵と出会えてよかった
「結構上手くいったな」
初めてなので特段連携とかが上手く取れた訳ではないが、結果として五体のFランクのモンスターを危なげなく倒す事が出来た。
俺的には『エクスプロージョン』を使える様になったのが大きい。
そして葵のオリジナルスキルは思った以上でEランクは伊達ではないなと思わせる戦いぶりだった。
葵もソロで戦っている時はイレギュラーに対応出来ない時もあったのだと思うが、俺が加わる事で点ではなく面での攻撃が可能になり、ソロの時と比べると格段に安定感が増したと思う。
今までの仮パーティでは補助的な役割しか担って来なかったので、ソロとパーティの違いは本当の意味では理解できていなかったが、今回の戦闘でパーティを組む事の有用性を痛感させられた。
それはみんなパーティを組みたがるはずだよ。
高火力タイプが組む事でシナジー効果を発揮して、ソロの時の3倍ぐらいの効果を上げていた気がする。
「やっぱり凛くんはすごいです」
「いや、すごいのは葵の方でしょ」
「いえ、凛くんですよ。一人だとあれ程怖かったモンスター五体が何の問題も無くあっさり倒す事が出来ましたし、何より凛くんと一緒だと思うと全然怖くありませんでした」
「それは、俺も同じだよ。この前はギリギリだったけど今回はまだ余力が残ってるし、葵のお陰が大きいよ」
「ふふっ、それじゃあ二人のおかげですねっ!」
「まあ、そうかな」
葵の笑顔が眩しい。
戦闘後にお互いに労える相手がいるってこんなに楽しいんだな。
今までは、露骨に蔑まれるか、陰口を叩かれることがほとんどで良くて事務的な会話だけだった。それが、こんなに可愛い女の子とお互いを称え合う事が出来るなんて夢の様だ。
まさか全部夢じゃないよな。流石にこれが夢だったら立ち直れないかもしれない。
俺達は魔核を回収して家路についたがFランクの魔核が五個でおよそ十五万円。二人で分けても1人あたり七万五千円だ。
ちょっと稼ぎが多すぎてびびってしまうが、これも葵と組んだお陰で対応出来るモンスターの幅と数が増えたからだ。俺にとってはメリットしか感じられないが、葵は本当に俺と組んで後悔はないのだろうか?
「葵、本当に俺で良かったの? もし後悔してるなら……」
「凛くん! 流石に怒りますよ! 言ったじゃないですか。私は凛くんがいいんです! そんな事2度と言わないでくださいね」
「あ、ああ、ごめん」
初めて見る表情だ。葵が本気で怒っている。
怒らせたと思い後悔する自分と、俺がいいと本気で怒ってくれた事に対する嬉しさが入り混じり、なんとも言えない感情が湧いて来た。
偶然からだったが葵に出会えて本当によかった。
あの時助ける事が出来て本当によかった。
葵とパーティを組めて本当によかったと思う。
葵が俺を受け入れてくれて本当によかった。
誰かが俺の事を認めてくれる事がこんなに嬉しいとは思っていなかったが、この数日の出来事は以前までのボッチの俺には全部無かった物だ。
この数日は俺が高校生になってから初めて楽しいと思える生活を送れているのかもしれない。俺の生活を一変させてくれた葵には感謝しかない。
俺が葵にしてあげられる事は何か無いだろうか? 俺はこの日ロードサイクルで家に着くまでそんな事ばかり考えていた。
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