第25話 パーティ結成
「そもそも若葉さんはどこに住んでるの? 俺は湊町なんだけど」
「私は小石町です」
「ごめん、やっぱり、パーティを組むのは無理だよ。住んでいる所が遠すぎて合流できないよ。一昨日はたまたまお互いの中間地点だったけど俺は基本的に自転車移動だから一緒には無理だよ」
「それは問題ありません。大丈夫です」
「? どう言う意味かな?」
「私、今も一人暮らしなので凛くんの近くに引っ越します」
「……!? 本気で言ってるの?」
「当たり前です。凛くんがOKしてくれたらすぐにでも引っ越します。今までソロでやって来たお陰でお金はそれなりにありますので、大丈夫です」
信じられない事だが俺とパーティを組むために近くに引っ越して来るとまで言ってくれている。
という事は問題は無くなったという事か?
「……わかったよ。よろしくお願いします」
「本当ですか? きゃ〜っ。うれし〜!」
目の前で若葉さんが弾ける様な笑顔で喜んでくれている。本当に俺とのパーティ結成を喜んでくれているみたいだ。
まだ信じられないが、この天使の様な笑顔に嘘などあるはずがない。
こうして俺は十二月の屋上の寒空の中で学園のアイドル若葉凛と人生で初めての正規パーティを組むことになった。
それからというもの若葉さんは毎日休み時間になると俺のところにやってくる様になった。
初めはクラスメイトから奇異の目で見られていたが、若葉さんが俺に対して楽しそうに接しているのをみて、だんだんと周りの視線の種類も変わって来ている気がする。
「若葉さん」
「葵です」
「……葵さん」
「葵です」
「……葵」
「はいっ!」
パーティを組むことが決まってから若葉さんの俺への距離感がやたらと近い気がする。
俺としては仲良くしてくれてありがたい限りなのだが、時々応対に困ってしまうことがある。
「葵はもう引っ越す場所とか決まったのか?」
「はい、もう決まりましたよ。今週末に引っ越しますよ」
「場所はどの辺? 湊町なのか?」
「もちろんですよ。凛くんの近くじゃないと引っ越しの意味がないですからね。詳しい場所は内緒です」
これはあれか? もしかして俺警戒されてるのか? 家を知られたら危ないみたいな感じか?
別に襲いに行ったりしなのにちょっと傷ついてしまう。パーティを組むんだからもう少し信用してくれても良いのに。
というか彼女がいた事の無い俺が、学園のアイドルである葵に何かをしでかす事などあり得ないのだから。
「そういえば聞いてなかったけど、葵ってレベルは幾つなの?」
「私はレベル11ですよ」
「レベル11!? と言う事は、前も話を聞いていてもしかしてと思ったけど葵はEランクなのか?」
「そうですよ。結構すごいでしょ」
「いやいや、凄いどころじゃないです。高校一年生でEランクって異常だよ。凄すぎだよ」
「ふふっ、凛くん異常はやめてください。傷つきますよ。でも私頑張ったんです。でも凛くんの方が全然すごいです。レベル6で私よりずっと強いんですから」
「それは買い被りすぎだと思うけどなぁ」
「でも、もうすぐ引っ越しでパーティを組めると思うと、毎日が楽しみで仕方がないんです」
学園のアイドルにこんな風に言われて嬉しく無いはずがないし俺も葵とパーティを組めるその日が待ち遠しくて仕方が無い。
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