第38話【報酬の受け取りと追加報酬の情報】

「こちらの応接室にて依頼と報酬の確認をしますので少々お待ち下さい」


 領主の依頼を終えてから一日ほどゆっくりしてギルドに報告と報酬の受け取り手続きを するために冒険者ギルドに顔を出した。

 既に依頼人からは報告と報酬の払いは完了していたらしく、受付に顔を見せたとたんにギルドマスターの元に案内された。


「先日はお世話になりました。

 領主様も大変喜ばれていましたよ。

 この後詳細を説明しますので紅茶でも飲みながらお待ち下さいね」


 部屋に入ると既にセザンヌが紅茶を準備して待っていた。


「お待たせしました。

 こちらが今回の報告書と報酬になります。お、重い・・・」


 スーラが書類と報酬の袋を抱えてふらふらしながら部屋に入ってきた。


「あら、スーラありがとうね。

 詳細説明は私がするから資料は机にお願い。

 置いたら受付に戻ってもいいわよ」


「えー!そうなんですか!?せっかく内容を覚えてきたのにー」


「まあまあ、実は領主様から直接伝えて欲しい伝言を私が受けているから報告は私に任せてね」


「はーい。それじゃあ仕事に戻ります」


 そう言ってスーラは受付に戻りいった。

 それを確認したセザンヌは僕達の向かい側のソファに座り書類に目を通してから説明を始めた。


「まず、今回の依頼を完了して頂きありがとうございました。

 領主様の依頼を完遂した事は勿論ありがたいのですが、それよりも今まで何人もの治療師達が失敗して他の街へ移住を余儀なくされ、このままだと優秀な治療師達が街から居なくなる危険がありましたが、これで一安心となりました。

 こちらが正規の報酬になります」


 セザンヌはそう言うと机に置いてある袋を僕の前に差し出した。


「正規の報酬と言うと金貨100枚ですか?」


 僕は袋の中身を確認せずに先ずはセザンヌに言葉で確認をした。


「はい。こちらでも確認していますが念のためにご自分でもみてくださいね。

 次にオルトさんが領主様と直接交渉された報酬についてですが、ひとつ目の『お嬢さんが回復しても僕が治したとは周りに言わない事』は家の者達には箝口令を出したそうです。

 何か聞かれたら『旅の薬師が治してくれた』と答えるようにしたそうです。


 ふたつ目の『依頼達成時には僕のギルドランクをCまで上がるように配慮して欲しい』でしたね。

 これに関しては領主様の特別依頼完遂ポイントにて特例措置でランクアップが認められました。

 但し、オルトさんだけです。

 シミリさんは直接的に貢献されていない為と実力不足でランクアップされるとかえって危険にさらされるからとの理由で見送りになりました。申し訳ありません。


 みっつ目の『今後も僕達に過干渉をしないで欲しい』も了解して頂きましたが、今後どうしても頼みたい事案か出た時はギルド経由で指名依頼を出したいと言われておりました。これも出来れば了承ください」


「分かりました。セザンヌさんの立場もあるでしょうから今の内容で了承します。

 ではギルドカードの更新をお願いしますね。あと、金貨に関しては3枚ほど銀貨に両替をお願いしたい。

 今後シミリが商売で使うかも知れないが今は金貨なんて出したら怪しまれる事は間違いないからな」


「今までならばそうですね。

 でも今回オルトさんはCランクにランクアップされますので報酬で金貨を受け取る依頼もあります。

 ですので何かあればギルドカードを提示されれば不用なトラブル回避が出来ると思います。

 ただ、不安なのがオルトさんがCランク相当の実力・・・主に戦闘面の確認がなされていないのがあります。

 その点はどうですか?」


「ああ、特に問題ないと思う。

 必要ならば模擬戦してもいいし、依頼を受けてもいいぞ。

 少なくとも盗賊10人位ならば普通に倒せるから大丈夫だ」


「じゅ10人?それが本当ならばCランクどころじゃないんだけど、今は証明出来ないわね。

 まあ良いでしょう。嘘をついている感じじゃないから信用して自己責任としておきます」


「あと、追加報酬があるそうですので明日にでも領主邸に出向いてください。

 セーラ様の様子確認も兼ねてお願いします。

 セーラ様がお礼を言いたいと言ってらしたそうですよ」


 セザンヌはそう言いながら門兵に見せる通行証を僕達の前に置いた。


(追加報酬か・・・。

 体よく屋敷に誘い込む口実にも見えるが、セーラ嬢の容態も確認しておきたいのもあるんだよな。どうするかな?)


「分かりました。気が向いたら行ってみますね。

 気が向かなかったらセザンヌさんすみませんが怒られてくださいね」


 そう言いながら僕達はギルドから退散して行った。


「いやいやいや!絶対に行ってくださいね!これ以上私のハートに負担をかけないでくださいよ!」


 後ろからセザンヌの悲痛な叫びが聞こえてきていたが僕は華麗にスルーしておいた。

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