第16話【冒険者ギルド登録と新人いじり】

「シミリの商人ギルドはあっさり登録出来たな。

 もう少し揉めるかと思ったが、まあ良かったよ」


「私のお父さんもここエーフリの商人ギルドの登録商人だったから知り合いや記録が残ってたからだと思います。

 そして、登録料を一括で払った事も大きいのではないかと思います。

 銀貨20枚なんて簡単に払える金額では無いのにそれが出せる人。

 しかも他人の財布から出たとなるとマイさんはオルト君を『商売主スポンサー』だと思ったはずです。

 この辺りではよくある事なんですよ。

 天職が商人でなければ商売は出来ませんから商売をやりたい商売主スポンサーが費用を持って商人を雇う事は」


(ふーん、そうなのか。

 って言うか天職にある仕事しか出来ないとかある意味ブラック過ぎないか?

 商売が嫌いな商人とかはどうすればいいんだろ?ああ、だから“冒険者”があるのか天職に左右されない最後の砦が・・・)


 僕はシミリの説明に(なるほどな)と思いながら冒険者ギルドに向かった。


 ーーーカランカラン


 冒険者ギルドのドアを開けた僕達は中に居る冒険者達の視線を一斉に受けた。


 僕は特に気にならなかったがシミリは視線の多さにしり込みして顔がひきつっていた。


 僕達は部屋を見回すと右奥に受付のカウンターが並んでいたので空いていた一番左の窓口に向かった。


「ようこそエーフリ冒険者ギルドへ。

 本日のご用件は何でしょうか?私イリルが承りますよ」


「冒険者の新規登録でお願いする。

 登録するのはふたりで頼む」


「新規登録ですね。

 スキップ制度についてご説明しますね。

 冒険者ギルドのランクは上がSランクから下はFランクまであります。

 S→A→B→C→D→E→Fの7段階になりますが最初は基本Fランクでの登録になります。

 ですが能力がある方を一律Fランク登録することはギルド制度の損失であるとの考えから新規登録時にスキップ制度を導入しています。

 判断基準は皆さんにステータスプレートを提示して貰い、能力が高い方は上のランクから登録出来るようにしたものです」


 イリルはそこまで話すと登録紙を取り出して僕達の前に置き説明を続けた。


「ちなみにFランクから始められるのは、まだ成人していない未成年の方が殆んどで成人されている方はスキップでEランクになる方が殆んどですがおふたりはどうされますか?」


「ふたりともFランクでいい。

 こっちの用紙に名前を書けばいいんだな」


「えっ?スキップ申請をしないのですか?

 この魔道具にステータスプレートをかざして職員が確認するだけですよ。

 それにFランクの仕事は比較的安全ですが報酬も安価なものが多いですよ?」


「問題ないからそれで登録をお願いする。

 書類はこれでいいか?」


 僕は書類に名前を書いて幾つかの質問にも適当に答えておいた。


「そうですか、わかりました。

 ですが、一度登録を確定すると功績ポイントを貯めないとランクアップは出来ませんので気をつけてください。

 ポイントの確認は各ギルドに設置されている魔道具で確認出来ますのでポイントが貯まったら受付に申請すると内容確認後ランクアップ手続きをさせて頂きます。

 他に何か質問はありますか?」


 イリルは冒険者Fランクカードを提示して最終確認をした。


 僕達はカードを確認すると依頼ボードの確認もせずに出口に向かった。


「登録だけして依頼を見ないのか?

 さすがFランクで登録するだけあるな!ガハハハハ!

 お嬢ちゃんそんな腰抜け見限って俺達のパーティーにこいよ。

 可愛がってやるからよ!」


「おい、グジーがまた若い新人に絡んでるよ。

 あまりジロジロ見てるとこっちまでとばっちりを食うぜ。誰か止めてやれよ」


 僕は絡んできた冒険者を鑑定スキルで見て雑魚だと分かると気にも止めないで出口に向かおうとしたが無視をされたと思ったグジーが激昂し怒鳴りつけてきた。


「Fランクのど新人がDランク冒険者のグジー様を無視するとはいい度胸じゃねぇか!

 その澄ました顔見れなくしてやろうか!」


(やれやれ、どこの世界にも弱いと見た者にだけ虚勢を張って威張る馬鹿がいるんだな。

 あまり目立ちたくないんだけど舐められたままだと面倒だな。

 仕方ない出来るだけ穏便に対応してみるか)


 ギルド内に不穏な空気が漂う中、僕はグジーに向きなおして言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る