第350話彼と結婚していたのが、悪いことだったのかもね。

  無言で顔を逸らしては、男の子のことは自分に任せると語りに来ているような美空の様に微笑んでは、ぼんやりと目を細めて行きながら、強く頭を下げては、自分の許しを得ないと頭を上げようとしないでいるような男の子の姿勢に、心をくすぐられているように感じつつ、ぼんやりと彼の夕陽に照らされているような髪の毛を見ていく母親、「ふふ、なんか変ね、」自分の唇からぽつりと上げていた笑い声に見開かされては、漠然とぱちくりして来ては、顔を見上げて来る彼の深紅の瞳を見つめている彼女は言う、「謝り合っているのって。」


  宛ら自分が紡いだ一言を認めているようにと、引き攣っているような右側の口角を上げて行きつつ、照れくさそうにと左手で後頭部を擦っている男の子の仕草に微笑んでは、軽く首を傾げていく母親は、横目でもう公園から離れたがっているようにと不機嫌そうな態度を保ったままで腕を組んで、眉毛を顰めていく美空の横顔に一瞥しては、流し目で彼女と同じ思いを抱えているように、自分の右側にある噴泉に目線を向けていた男の子に尋ねていき、「そう言えば、」自分の声に猛烈な反応をして来るようにと眉毛を跳ねらせては、猛然と顔を自分に向けて来る男の子の萎縮している様に、心をくすぐられているように思えては、少しばかり困っているような気分になっている母親は苦い笑みを浮かべていた、「あなた、名前は?」


  女性が自分に向けに来ている質問に戸惑いつつ、漠然と瞬きしていく男の子は弱っているようにと肩を縮めて行きつつ、ぽつりと弱っていた声を上げていく、「王二 狗子 (おうじ いぬこ)です。」「そう、」王二が自分に名前を知らせてくれていたことにと応えて行くように微笑んでは、チラッと目線を自分たちに見て欲しがっているようにと池の中から飛び跳ねて来る水柱に向けていく母親は、横目で彼を見て言う、「良くここに来るのかしら?」


  「ううん…」宛ら自分だけを構ってくれては、彼女のことを忘れていたような女性の態度に、文句をぶん投げて見たくなっているようにと唇をすぼめては、不満そうにと人差し指を突いている美空の、夕陽に照らされていた綺麗にも思える黒い髪の毛に一瞥してしまう王二は、ぽつりと声を発していき、「たまに、暇つぶしにそこの噴泉を見たりとか、」微かに前のめりになっては、自分に注目しに来る女性の傷跡を間近で見ていることに、不安を強いられているように思いつつ、思わず上半身を軽く後ろに向けて引いてしまいそうな王二は強く両手を握っては、これ以上自分に親切してくれていた優しい彼女の心に傷を残したくはないと強く考えて行きながら、萎縮しているような戦慄している左手の人差し指で、彼女の後ろにある大木を指差しては、ぽつりと声を発していた、「こっそり木を登って見たりとかはしています…」


  「おお…」忽然、まるで自分に彼の実力を証明しに来るようにと、大木を指差していた王二が母親に返していた返答に、唇をこじ開けられているように思いつつ、つい自分たち三人の体を合わせても、全然超えていけないような大木に目を向けていく美空は、ぽつりと少しばかり間の抜けたような声を上げていく、「木を登る。」「えへへ、」自分が紡いだ言葉に感心しているようにと、胸元から声を漏らしていたような美空の横顔に目を向けて行きつつ、照れくさそうにと左手で軽く後頭部を擦っていく彼は軽く言う、「自信はある方よ、結構早かったりするんで。」


  彼女の娘に自慢話をしている自分に淡い笑みを浮かべてくれては、無言で自分の存在を見守ってくれているような女性の慈しみに満ちているような眼に目を向けては、つい彼女の顔に残されていた酷く傷跡に、口角が斜め下の方向に引かれているように感じつつ、軽く歯を噛んでは、何度も鼻翼に力を込めていく王二は、つい善良な彼女に傷つけていた人を許せないと内心で強く思いながら、軽く上げては、彼女の傷跡に触れて見ようとしているような左手を強く握っては、彼女にこれ以上痛い思いをさせるのは控えて行こうと強く思っている彼は、潤んでいる深紅の眼で彼女のぼんやりとしている顔を映し出して行きながら声を発していた、「野良犬に追われそうになったらシューッって上げるんだ。」


  王二が母親に向けていく説明の話は少しばかり格好悪く思うと同時に、野良犬から逃れるくらいに早い速度で大木に登れていた彼はやはり凄い人間なんだと、心の中で彼に敬意を持ち始めている美空は、ぽつりと小さな声を漏らしていく、「凄いね…」王二の美空に褒められては、恥ずかしがっているようにと軽く渇いた唇を噤んでは、俯いて行きながら、左手で後頭部を擦っている様をぼんやりと見ていく母親、「野良犬か…」ゆっくりと背筋を伸ばしては、困り果てているようにと眉間に皺寄せていく母親は、彼に敬意を持っている眼差しを向けている美空の華奢な体に目線を向けては、万が一自分が不在の時に、彼女が野良犬に遭ってしまったら酷く危険のように感じている母親は言う、「確かにここも安全じゃないもんね…」

  

  女性の娘の存在を気にかけている様に向けて軽く頷いては、油断していると、つい何処から湧いてくるのかはまったく分からない野良犬に、襲撃を食らってしまうかもしれないと強く思っている、「そうですね…」軽く右手の人差し指を立てて行きながら、視野の中にある視界を阻んでくるような鼻先にくっついていた絆創膏の事を気にする事無く、女性を凝視していく彼は、真剣な眼差しを彼女に向けて行きつつ、何とか二人の力になってやりたいと強く考えている彼は言う、「偶にあったりするので、気を付けた方がいいと思いますよ、」宛ら自分の忠告を受け入れているようにと、丁寧に頷いてくる女性からまったりと目を美空に向けていく彼、「落ち込んでてた君。」


  「えっ?」急に話題を自分に振って来ていた王二に見開かされては、唇がこじ開けられているような気がしてならないでいる美空は、思わず軽く少しばかり熱くなっているようにと感じてしまう首を伸ばしては、左手の人差し指で自分の顔を指差して言う、「わたし?」まるで自分がさっき彼女の母親に向けていた説明を聞こえなかったようにと、驚愕の表情を自分にぶつけに来ている美空の様に、目を半開きさせて見たくなっている王二は、丁寧に首を一回だけ強く縦に振っていた、「うん。」


  王二の本気で自分の存在に気をかけてくれているような態度に、目を細められているように思いつつ、ぼんやりと弱っているような目線を地面に向けていく美空は、軽く赤くなっていた鼻翼に力を込めていき、「気を付けておくわ…」漠然と自分の心を苛んでくるような、右腕に浮かんでいた深い緑色に見えて来る痣と、使い古された長い手袋に隠されていたような左腕にある傷跡に、心を縮められているような気分になれている彼女は悔しそうにと軽く唇を白い歯で噛んでは、ぽつりと呟いていた、「犬に食われてた方が人生はマシになるのかな…」


  ”ドクンー”刹那、自分に彼女が今までどれだけ酷い目に遭わされて来ていたのかを、彼女の母親の顔に浮かべていた傷跡と共に告げに来るような気分を味わってしまう王二、「え?」恐る恐ると霞んでいた目線を自分の両腕を守ってくれていたような布に向けに来る王二の強く眉間に皺寄せては、宛ら布に隠されていた腕にある傷跡に気が付いているような彼の様に、苦い笑みを浮かべて見たくなってしまう母親は、軽く左手の人差し指を立てては、残されていた指でビニール袋を抱えて行きつつ、深紅の眼にある自分の酷く無理しては、額が微かに汗ばんでいる様を見ていく彼女は言う、「ほら、無駄話をしていないでさ、」ぱちくりながら呆然と佇んでは、自分の紡ごうとする言葉を聞いてくれている彼に目を細められては、これ以上自分たちに関わっても大して意味のないような気がしては、そもそも急いで家に戻らないと、またぶん殴られてしまうんだと、脳内に浮かべて未来のビジョンに、心臓を起爆されてしまいそうな気がしてならないでいる母親は、何度も鼻翼に力を込めて行きつつ、ぽつりと渇いた唇を開けていき、「もう日が暮れてしまうから、王二君もお家に帰って頂戴?」


  唯々諾々と自分の顔を見つめたままで、頷いてくれている大人しくなっているような彼の態度に、淡い笑みを浮かべて行こうと思ってしまう母親は、自分に笑うなと語りに来るような、口角を上げようとする度に酷く疼く頬に泣かされてしまいそうに感じつつ、痛みに操られていたような顰めていく眉毛に、不安と心配を強いられているようにと軽く顔を自分に近づいて来る王二に、心を微かに弾まされているような気がしている母親は言う、「何処に住んでいたの?送るよ?」


  「う、ううん、」左手でちゃんと右手にあるビニール袋を支えて行かないと、上手く野菜が詰まったビニール袋を持って行けないでいるような女性が、わざわざ自分の為に回り道をしようとしてくれているような言葉に見開かされては、大慌てで両手を上げて行きつつ、何度も首を横に振っていく王二、「すぐ近くにいるので、」無理矢理口角を上げて行きながら、軽く右手の親指を立てていく彼はごくりと固唾を飲み込んでは、まだ自分を送ろうと諦めてくれないでいるような女性の表情に困らされては、思わず苦い笑みを浮かべて見たくなっている彼は、急いでいるようにと胸元を噴泉の方向に向けて行きつつ声を上げていく、「走って戻ります。」

  

  軽く両足を上げては、地面に擦っていたせいで傷を負っていた両膝に刺激されては、体に沁みるような痛みを耐えて行こうと強く考えている彼は、揺るぎない眼差しを女性と美空に向けていた、「そ、それじゃさようなら。」「うん、」自分たちに送られたくないでいるような王二の傷を負っていたのに、酷く健気にも思える様に目を細められているように思いながら、丁寧に頷いていく母親は言う、「さようならね?」強く頷いてくれては、急いでいるようにと背中を自分に向けては、歩き出していく王二の両足に見捨てられていたような地面に、付けられていた靴紐に目線を向けていく母親は、宛ら不安に背中を押されているようにとパーカーを着こなしていた彼の後頭部に向けては、声を発していく、「ちゃんと靴紐に気を付けてね?」


  自分が彼に投げていた言い聞かせている言葉に、体の行動を無理矢理止められていたようにと体を跳ねらせては、急いで歯を食いしばっては屈んで行きつつ、両手を靴紐に向けている忙しく感じて来る王二の様に、笑って見たくなっている母親は言う、「もう転んだりしないでよ?」母親の酷く王二に気を付けている様に目を半開きさせて行きながら、まったりと腕を組んでは、不満そうにと何度も鼻翼に力を込めていく美空は無言で唇を尖らされては、彼女の顔を見上げている。


  急いで自分が彼に投げていた言葉をちゃんと実行していたようにと、雑にも感じてしまうくらいに靴紐を結んでは、大慌てで立ち上がってくる彼が自分に向けに来ている、やや気まずく思える表情に淡い笑みを見せてしまう母親は、冗談交じりに言葉を紡いでいた、「ティッシュも絆創膏ももうないからね?」顔が重傷を負っていたはずなのに、絆創膏を彼女自身ではなく、自分に使ってくれていた女性の冗談交じりに紡いでくれていた言葉に、目を細められているように思いつつ、心が蕩けているような気分を味わっている王二は、拗ねているようにと軽く唇を噛んでは、彼女の充血していたけれども、愛おしく思える瞳に向けて強く頷いては、何度も鼻翼に力を込めていく彼、「う、うん…!」ごくりと固唾を飲み込んでは、眉間に皺寄せて行きながら、強く両手を握っていく彼は揺るぎない眼差しを彼女に向けては言い放った、「気を付けます。」


  忽然、急いで体を動かしていたようにも見えてしまう王二のポケットから零れて来ては、自分の興味と目線を引っ張ろうとするようにも思えるくらいの、深い緑色のカードの存在にぱちくりして見ようと思っていく美空は、思わず軽く右手を彼の方に向けて伸ばしていき、「ちょっと!」突然、まるで己の目線を引こうとしているようにも思えるくらいの、美空が自分の方に向けに来る可愛らしく思える声に、ぱちくりして見ようとする王二は、漠然とした眼を急いでいるようにと、小さな両手でカードを握ってくれている美空の、丁寧に自分の方に自分が持っていたヒーローのように思えるカードを、返そうとする状態にやや見開かされているような気がしてしまい。


  王二のまるで自分の手からちゃんとカードを貰っていくべきなのかどうかで悩んでいるようにと、恥ずかしがっているようにも思える視線を自分の方に向けに来る王二に、微笑んでいく美空は言う、「落し物が。」美空の自分に笑ってくれては、自分の心臓を奪おうとするようにも見えるくらいの笑顔に、口角が軽くくすぐられているような気がしている王二は目を細めにいき、「君に送るよ。」


  突然、急に決して食べ物でもなければ、お金になれるような代物って訳でもないであるちょっと格好良く見えては、綺麗以外に大して意味を持てなさそうなカードを自分に送ろうとする王二の一言に、戸惑う感情を強いられているようにと強く実感する美空は思わずぱちくりしにいき、「え?」


  チラッと目線を彼女の母親の無言で自分らの存在を見守ろうとしているようにと、丁寧に頬にある苦しみを我慢しては、自分らに笑おうとする状態に向けては、視野がやや細められているような気がしている王二は、軽く口角を上げては、美空の方に目を向け直していく王二は軽く胸を張っては、美空にいい印象を残してやりたいのだと強く思っていく王二は言い放った、「僕はもうヒーローに頼る必要はなくなったから。」きょとんとしているような眼で自分の顔を映し出してくれている美空の、ぼんやりと小さな両手でカードを握ろうとする姿に笑って見ようとする王二、「君を守ってくれると思うよ、そのカードは。」


  一瞬にして自分のカードへの興味を引いて来ていたようにも思えるくらいの台詞を、自分の方に向けに来ていた王二の話に、やや見開かされているような気がしてならないでいる美空は、思わず猛然と揺るぎない眼差しを小さな両手にあるカードの方に向けにいき、「そう!?」美空の無邪気なまでに、自分が彼女の方に向けに行った台詞を信用してくれている姿に、目を細められているような気がしては、つい可愛らしく思える彼女の存在に、心を引かれているような気分になり、思わず軽く口角を上げにいく王二は強く頷いていき、「うん。」ぼんやりと美空の手にあるカードに一瞥しては、きっと自分の守護神のようにも思えるくらいのカードは、己の存在を守ってくれては、美空ともう一度出会えるようなきっかけを作り出してくれるはずなのだと、内心で強く思っていく王二は急いで二人のもとから離れては、自分の腹部に殴り込んで来ているような尿意を如何にかすっきりしていこうと、内心で強く思っては、礼儀としては自分に注目しに来る二人に見っともない姿を見せたくはないのだと、内心で強く考えていく彼は元気に満ちているような声色で言い放った、「それじゃあ…!」


  やや震えているようにも思えては、鼻先にある傷跡から伝わっていく痛みを、克服しては、我慢しようとしている故に、無理をして元気に振る舞おうとする可愛らしく思える王二の、再び自分たちに背中を向けようとしているような姿と、まるでまだ自分のおふるを着ていた美空のことが気になっているようにと、彼女に目線を向けていることに、鼻腔の奥をくすぐられているように感じつつ、流し目で大事そうにとカードをポケットの中に仕舞い込んで行こうとする美空の姿を見にいく母親。


  自分にちゃんと別れる友達に挨拶を交わして来なさいと、語って来ているような母親の目線に目を半開きさせて行きつつ、つい赤の他人に訳の分からないくらいに優しい彼女に飽きれては、首を横に振ってみたくなっている美空は横目でぼんやりと佇んでは、胸元を前方に向けているのに、顔を出来る限り自分たちの方向に向けて来ていた王二に苦笑いして見たくなっている彼女は、まったりと左手を上げては、やる気のない声を発していく、「バイバイ。」

  

  宛ら自分が彼に投げていく適当な一言に、鼓舞されているようにと口角を強く上げては、頷いてくれている王二の迷わずに振り返っては、夕陽に照らされながら、遠くに向けて走り出していく背中姿を、ぼんやりと潤んでいた琥珀色の瞳で追ってしまう美空は、ぽつりと渇いた小さな唇を開けていき、「ねぇ、お母さん。」遠くを見つめたままで自分に弱っているような声を向けに来る美空の、困惑気味になっていたような声に微笑んでは、まったりと目線を自分たちの横顔を照らしてくれているような、沈んでいくように見えて来ると同時に、酷く目映く感じて来る夕陽に向けていく母親は言う、「いい事をするのよ。」


  まるで自分の心臓を軽く殴って来ているような母親が紡いだ一言に見開かされては、唇が否応なしにこじ開けられているような気がしている美空は、漠然と彼女に目線を向けていき、「え?」「どうして彼に大事なティッシュと絆創膏を使っていたって、」まったりと目線を自分に間の抜けた表情を向けに来る娘に向けていく母親は、微笑みながら彼女に言う、「言いたいのでしょ?」「うっ、」有無を言わさずに自分の口角を斜め下の方向に向けていたような、母親が紡いだ一言に困らされているように思いつつ、呆然と胸元を彼女の方向に向けて行きながら、落ち込んでいるようにと項垂れていく彼女、「うん…」


  娘が抱えてしまうのが当然のようにも思える問題に、目を細められているように感じつつ、右手にあるビニール袋を軽く地面にいて行こうとしているように、ゆっくりと屈んでしまう母親、「ほら、」丁寧にビニール袋の帯に赤い跡を残されていた右手を解放して行くようにと、ビニール袋を小汚い地面に置いていた左手を上げていく母親は、軽く体を落としている自分に目線を向けに来る彼女に淡い笑みを見せて行きつつ、言葉を紡いでいく、「我々の傷って、小さな絆創膏じゃ、」ぽつりと自分の渇いた唇から零れていた言葉に、体中にある傷跡を苛まれているような気がしてならないでいる母親は、漠然と潤んでいる眼で自分の顔を見つめてくれている彼女に言う、「如何にか守って貰えないじゃない?」


  「うう…」母親が紡いだ心をみじん切りにしているような一言に、顎を下に向けて強く引かれているような気がしてならないでいる美空は、苦しそうにと歯を噛んでは、弱り切っているようにと頷いていく、「うん…そうね…」「だから、」軽く右手程じゃないけれども、自分の胸元を焼いて来るような痛みを残して来ている左手で、美空の油っこく感じてしまう煙草の臭いがこびりついていた黒い髪の毛を擦っていく母親は言う、「より必要な人に、それを譲るのが当たり前じゃない?」


  「うう…」母親が自分に投げて来ている酷く当たり前のように伝わって来る一言に、悩まされているように思いつつ、彼女の言っている言葉は強ち間違っていないような気がし始めている美空は、困り果てているようにと眉間に皺寄せていき、「そう…かな。」「そうよ、」まったりと体を上げて行きつつ、自分の体に目線を引かれているような娘の本気で悩んでいるような瞳を見つめていく母親は、軽く左手の人差し指を立てていた、「いいか、美空。」


  ぼんやりと小首を傾げて行きつつ、真面目に自分に話しかけて来る母親の態度に困らされては、漠然と彼女の潤んでいた眼を見つめていく美空、「うん?」「いい事をするの、」軽く顎を引いては、ゆっくりと左手を胸元に当てていく母親は、自分の精神論を聞きたがらないでいるようにと、自分の本気の眼差しから目を逸らしていく彼女に苦笑いして見たくなっている、「まともな人間になるの。」


  母親が自分に向けに来ていた酷く虚しく伝わって来る言葉に、目を細められているように感じつつ、軽く鼻翼に力を入れて行きながら、自分はともかく、かなりいい事をして来ていたはずの彼女は、彼女が口にしていたまともな人間になれていたのに違いないはずの母親は、これと言って得するようなことに、あっていないような気がしている美空、「うん…」「そしたらきっと、」まったりと頬にある痛みに霞まされているような視野の中で、微かに紺色になって行く空に浮かべていた自分に挨拶を交わしに来るようにと、瞬いている星を見上げて言う、「いい事があなたのもとに来るのよ。」


  母親の自分が内心で拒んでいる言葉を、彼女の弱り切っているような声に乗せていたことに苛立ちを覚えては、不服そうにとピンク色の唇を尖らされては、何度も鼻翼に力を入れてしまう美空は、困り果てているようにと眉間に皺寄せていき、「お母さんは…悪いことをしていないのに、」刹那、自分が何度も自分の胸元を訳の分からない言葉で突いていた彼女に返していた反論に、見開かされている母親の顔を見つめていく美空は強く両手を握っては彼女に尋ねていた、「どうしてそんなにも父さんに殴られないといけないの…?」


  「それは…」自分の喉を詰まらせに来るような美空の一言に、泣かされてしまいそうに感じつつ、ぼんやりと霞んでは、少しばかり麻痺されているような感覚を自分に与えてくれている視野の中で、自分が足元に置いていたビニール袋を探してしまう母親、苦しそうにと軽く唇を噛んでは、自分だってその答えを知ってみたいと強く思っている彼女は、まったりと脳内を過っていく返答に、硬直して行く口角を軽く上げられているように感じながら、美空に目線を向けて言う、「彼と結婚していたのが、悪いことだったのかもね。」


  ”ドクンー”刹那、母親が自分に投げに来る全くもって反論することができない一言に、唇が否応なしにこじ開けられているような気がしてならないでいる美空は、漠然と彼女の無理をして笑っているような顔を見つめていき、「え…」娘の自分が彼女に返していた返答は、決して間違っていないような気分を感じさせに来る体中にある痛みと、ぼやけていた視野に、目頭を温かい液体の粒の感覚に撫でられているような気がしている母親は、急いで重たくなっているように感じて来る腰を曲がらせては、左手で重たいビニール袋を抱えて行きつつ、彼女に顔を向けては、言葉を紡いでいく、「ほら、大至急戻らないと、」ぽつりと自分の唇から零れていく言葉が針のようにも感じては、心臓を刺さられているような気分になれている母親は、苦しそうにと笑って行きながら、弱っている声を上げていた、「またこっぴどく殴られちゃうわよ?」


  「うううう…」母親のまるで自分に永遠に帰りたくはないでいる家に向けて、背中を押して来るような話を投げて来ていたことに、口角が斜め下の方向に向けられているような気がし始めている美空は、苦しそうにと軽く歯を噛んでは、ごくりと喉に引っ掛かって来ていたような唾液を飲み込んでは、母親に潤んでいる琥珀色の瞳を向けて言う、「かえり…たく…」ぱちくりながら言い淀んでいる自分の心境に察してくれているようにと、淡い笑みを浮かべてくれている母親の顔に付けていた消えても直ぐに新しい傷が浮かべてしまう頬に、絶望を覚えしまう美空はぽつりと呟いていた、「ないよ…」


  「奇遇ね…」ぼんやりと俯いていきつつ、自分の両手にあるビニール袋を見下ろしてしまう母親は、悲しみに脳内を撃沈されているような気分になりつつ、視野を一瞬にして黒く染め上げられていたような気がしては、辛そうにと大慌てで両足に力を込めては、如何にか脳内の奥からこみ上げに来る、ボクサーに顎をぶん殴られていたような気分を耐えて行こうと強く思っては、体の奥からまったりと全身に向かって広がっていく体を冷やしに来るような冷たい感覚に、苦笑いして見たくなっている彼女はチラッと困っているような眼差しを自分に向けて来ている美空を見ては、言葉を紡いでいく、「私もだよ。」


  母親のこれからどれだけ自分たちの無力な体にぶつけて来るかも知れないでいる痛みと、恐怖に打ちひしがれては、立ちくらみしていたような様に目を細められているように思えては、苦しそうにと両手を握っていく美空は、軽く彼女のもとに向けて両足をずらして言う、「逃げない…の?」「にげる…」娘が自分に投げて来ていたどれだけ叶えたいと、常々思って来ていた言葉に、口角が斜め下の方向に固定されているような気分を味わっている母親はまったりと視線を、オウム返ししていた自分に強く頷いて来ては、彼女の思いを強く伝えようとしているような美空の態度に、目を細められているように感じながら、ゆっくりと目線を遠くにある段々沈んでいく夕陽に向けている母親、「逃げるか…」


  腫れては、物理的にも精神的にも未来に対する不安に、強張られているような口角を上げて行こうとする母親は、ゆっくりと小さな両手を握り締めて行きながら、揺るぎない眼差しを自分に向けに来る美空の、今でも自分と共に家から逃げ出したがっているような様に、心を追い詰められているように感じては、自分はともかく、まだ幼い彼女まで自分と同じような苦しみを味わって欲しくはないと、切に存在しているのかどうかも定かではない神に祈りを込めて見たくなっている彼女は、ぽつりと渇いた唇を開けていく、「でも、逃げ道なんて…」


  内心からこみ上げに来ては視野を一思いに綺麗にしてくれようとするような、眼を囲んでいる涙の粒を目から追い出そうとする苦しみに、眉毛を顰められているような気がしてならないでいる彼女は、辛そうにと渇いた唇を軽く噛んでは、瞬きを忘れていたようにと自分のこと見つめてくれていて、自分に彼女を自由な暮らしに向けて連れて欲しがっているような願望に、心を苛まれているような気分になれている母親は言う、「どこにもないんじゃない、女二人で上手くやっていけないものよ。」


  忽然、自分が彼女に投げていた、幼い彼女に断念して貰うような一言に体を嬲られているようにと、俯いていく美空の様を見つめては、自分が上手く逃れる事が出来ても、幼い彼女を放っておくと、彼女はどうなってしまうのかは思ってみるだけで、心臓が握り潰されてしまいそうなくらいに、痛く思えてしまう母親は苦しそうにと軽く白い歯を噛んでいた、「社会は結構厳しいものなんだからね…」


  母親の虚しい思いが込められていた言葉のニュアンスに、鼻腔の奥を麻痺されているように思いつつ、視野が絶望に霞まされているような気がしてならないでいる美空は、宛ら誰かに殴られずに済むような理想な未来を、諦めていくようにと握りしめていた両手をゆっくりと下して行きながら、ぽつりと小さな声を零していく、「そう…」「うん、だからもう行こう?」軽く首を彼女に向けて伸ばしては、地獄のようにも感じてしまう日々の中で、少しでも楽な思いを求めてみようと思っている母親は、漠然と緊張と畏怖に操られては、汗ばんでいる額を上げては、自分に困り果てては、涙を零すことすらままならないでいるような琥珀色の瞳を向けに来る彼女につられては、必死に抑えている涙を零してしまいそうな気がしている母親は、虚しさを極めていたような口調で言葉を紡いでいた、「あの人の気分がいいなら大怪我を負わずに済むかもしれないしさ。」


  まるで自分の事を無言で催促しに来るようにと、振り返っていく母親の背中姿に体を引かれているように感じつつ、もし自分が彼女のもとから離れていくと、子供である自分にはきっと上手く生活をやっていけないのであろうと思っている美空は、急いでいるようにと母親の左側を目掛けては走り出していく、「ねぇ、お母さん。」急にやけに本気の声で自分を呼んで来ていた娘に、眉毛を軽く上げられているような気がしては、ぼんやりと彼女に目線を向けていく母親は両手をビニール袋を抱えて行きながら、彼女に尋ねていき、「うん?」


  「もし逃げるようになれたら、」刹那、強く両手を握っていた自分の口から飛び出ていた一言に、驚かされているようにと急いでいた両足の動きを止めに来るような母親の瞳を見つめては、強く眉間に皺寄せてしまう美空はごくりと固唾を飲み込んでは、体の芯を震わせに来るような一言を喉から声を絞り出していた、「わたしも連れていってくれる…?」


  「美空…」娘が自分に懇願しに来るような、家から逃げ出したいと語って来る言葉に、頬にある傷跡を裂けているような気がしては、自分たちが置かれている暮らしはどれだけ酷いものなのかを、彼女の態度に知らされているように思いつつ、自分の両手にあるゴミにも思える野菜を見下ろしていく母親、「もし上手く逃げ切れたら、」軽く鼻翼に力を入れては、自分の実の子供にこれ以上酷い思いを抱えさせる訳には行かないと、内心で強く思っている母親はゆっくりと決意が秘めているような眼差しを彼女に向けて言う、「あなたを連れていくわ。」



  


  

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