第303話あたしの事を、どう思ってるの?

  「これは…」自分の顔を引いて来ているような叔父さんの声色に、顎を上げられているような気がしている野黒新は、ぼんやりと戦慄している両手で画帳を握って行きながら、切なげに項垂れては、自分に握られていた画帳を見下ろしてくれている叔父さんに、漠然と目線を向けていく。「春菜が残していた奴なんだ…」叔父さんが自分に紡いでくれている、自分がとっくに知れていた言葉をぼんやりと聞きながら、ゆっくりと霞んでいた視線を、悲しみに撃沈され上手く立てなくなっていた叔父さんに肩を付けては、震えている右手でティッシュを握りながら、涙と鼻水を拭いていく叔母さんに向けていた。


  「あの子に悪い事をしたかもと思って見てたけど…」叔父さんのまるで懺悔しているような声で紡いだ一言に、口角が斜め下の方向に向けて引っ張られているようにも感じてしまう野黒新は、苦しそうにと歯を噛む気力すら心を潰しに来ていたどす黒い感情に、操られているようにとぼんやりと自分の胸元を見下ろしていく。「これを君に…」悲しみに侵されていような右手で軽く画帳に触れては、脳内に浮かんで来る娘が自分に笑ってくれていた事に、脳内が憤怒に潰されているような気がしてしまう叔父さんは、苦しそうに軽く歯を噛んでいた、「託すと、あの子にとって良いかもしれないって…」


  まるで自分の懸命に震えている声を絞り出している態度を、憐れんでくれているようにと軽く眉毛を顰め、自分にぼんやりと顔を向けて来る野黒新の事を、霞んでいた視野の中で見つめて行きつつ、左目が白い眼帯に隠されていた野黒新の光を無くしては、黒い穴となっていたような右目に、目を向けていく叔父さんはぽつりと呟いていた、「僕が勝手にそう思っていたんだ。」ぼんやりと唇を開けては、まるで言葉を紡ぐ気力すら現実に奪われていたような野黒新が、自分たちに向けて来る様に心を悲しまされているように思えては、恐る恐ると震えている右手を唇のもとから引いて行きつつ、潤んでは充血していく瞳で彼の呆然と佇んでいる姿を映し出していく叔母さんは、ぽつりと声を発していき、「受け取ってくれないかな…野黒君。」


  暗闇に包まられているような軒のもとで佇んでいた二人の沈んでいるような表情を、霞んでいた視野の中で確認してしまうと、つい上手く春菜を守れなかった自分には二人の目の前で立っている資格なんて持っていないんだと、強く自責していく野黒新、苦しそうにと違和感を残して来ては、まるで口内に無理矢理空気を含まれているような感覚を漠然と感じて行きつつ、上手く物を見れなくなり、ただ自分の痺れているような左目をくすぐりに来ている眼帯の感覚は、どうしても自分の事を小馬鹿にしているようにしか思えないでいる彼は何度も鼻翼に力を入れては、苦しみに濁されていた視界の中で自分の戦慄している両手につられているようにと、震えている画帳を見下ろしていき、「うっ…」


  猛然と悲しみで出来上がっていた心の中にある渦から、こみ上げて来ている激痛に唇を否応なしに開けられているような気がしている彼、「うが…(俺が…)」悔しい思いと悲憤に口角が斜め下の方向に向けられているように思えては、ゆっくりと震えている顎を上げて行きながら、自分の事を見つめてくれている春菜の両親に目を向けていく彼は、辛そうにと食いしばっていた歯を解して行きつつ、ぽつりと声を発していき、「ばぼでだぐで…(守れなくて…)」丁寧に戦慄している両手に抱えられていた画帳を、胸元に向けて引いて行きながら、かつて春菜の前で大口を叩いては、彼女を守るヒーローと語っていた自分には、彼女が命と尊厳を踏みにじられていた時に、手も足も出せなかった事を思い出していくと、ついどうして死んでいくのは自分じゃないんだと、心の中で叫んでいく彼は顎を限界なまでに、胸元に向けて引いていき、「ずびばぜん…(すみません…)」


  「うっ…」突然、春菜と同じように地獄のような体験を経ていた野黒新の、自分たちに謝りに来ている態度に口角を斜め下の方向に向けては、強く引っ張られていたような気がしてならないでいる叔母さん、「いいのよ…」切なげに眉毛を顰めて行きながら、恐る恐ると戦慄しては、悲しみに打ちひしがれているせいで、上手く力を込める事が出来なくなっていた右手を軽く彼の肩に当てていた叔母さんは、無言で自分の事を支えてくれているようにと右手で軽く自分の戦慄している肩を握ってくれている叔父さんの存在に、微かな安心感を覚えては、向きになっているようにと頭を上げようとしないでいる野黒新の事を見下ろしていた、「あなたは何一つ悪いことをしていないんだもの…」


  軽く歯を噛んでは、まるで自分の言い分を拒んでいるようにと、何度も小刻みに首を横に振っていく彼の鼻先から滴り落ちていく涙の粒と、彼が漏れている苦しんでいるような唸り声に、心臓を刺さられているような気分を味わっている叔母さんは、悶絶してしまいそうなくらいに苦しんでいる思いを抑えて行きつつ、軽く赤くなっていた鼻を啜っては、震えている右手を胸元に当てていく、「むしろごめんね…あの子が気にかけてたから…」まるで自分が紡いだ言葉に驚かされているようにと、猛然と額を上げて来ている彼の絶望に侵されている顔を見つめて行きつつ、優しい彼が負い目を覚える事なんて何一つもいないんだと強く考えては、残念そうにと口角を上げていく叔母さんは言う、「あなたがこんな目に遭っていたんだよね…」


  叔母さんが自責している自分の事を許してくれている言葉を投げて来ている態度に、心の中にある悲憤がより刺激されているような気がしならないでいる野黒新は、思わず上手く二人の大切な娘を守れなかった自分の事をこっぴどく叱って欲しいと切に願っては、助けを求めているようにと霞んでいた視野の中で、顔を自分の方から逸らしては、軒を見上げようとしている叔父さんの横顔に目を向けていき。


  突然、まるで自分の叱って欲しいと言う思いに、顔を引かれているようにと、自分に目を向けてくれている叔父さんの苦しんでいるように眉毛を顰めては、宛ら叔母さんと同じような言葉を自分に向けてくれているようにと、痙攣しているような口角を上げてくれている態度に見開かされては、口角が、自分の顔を苦しんでいるようにと地面に入りたがっているようなくらいに、斜め下の方向に向けていく事に、鼻腔の奥に溜まっていた悲しみが一気に爆発しては、脳に上っているような気がしならないでいる彼、「ううぐっ…」とめどなく自分の目の下を濡らしに来ては眼帯を濡らして来ていて、自分の皮膚にくっつかせて貰っているような涙の粒の感覚に、大泣きする事しか出来ない自分の弱さに苦しめられては、真っ赤になっているような脳内と痺れては、上手く自分に呼吸を許してくれないでいる鼻腔の存在を感じてしまうと、ついいっそのことこのまま世からいなくなればいいと強く願っている彼は、心の中に募って来ている春菜と彼女の両親への思いに顎を引かれては、恐る恐ると霞んでいた視界の中で悲憤に負かされては、酷く震えていて、上手く立つ事すら出来なくなっている両足を見下ろしていく、「ずびばぜん…」


  またしても頭を下げて来ては、自分たちに何度も謝りに来ている野黒新の態度に困らされているように感じつつ、どうして世界は優しい子である二人も苦しめてしまうのだろうかと、心の中でぼんやりと考えて行きながら、ゆっくりと震えている左手を彼の肩に向けてしまう叔父さんは言う、「謝らないで…君は悪くないって…」苦しそうにと鼻を啜っては、自分の慰めは聞かないと語って来ているようにと、何度も首を横に振っている彼に苦笑いして見たくなっている叔父さんは、ぽつりと激昂になっているせいで荒くなっている息遣いが混じっている声を発していく、「僕たちはちゃんと分かってるんだよ…?」


  ”ドクンー”突然、叔父さんが自分に紡いでくれていた一言に、心臓を潰されているようにも思えている野黒新、「うぐっ…」辛い呻吟の声を漏らして行きながら、自分が勝手に春菜に期待をいっぱい抱えさせていて、自分を何でも出来る英雄だと、彼女の前で愚かなまでに自慢していたのに、肝心な時に彼女を助けるどころか、彼女の傍で支えてやることすら出来なくなっていた出来事を思い出していくと、ただ自分にとっては一番大切な人を苦しめていく事しか出来ない自分には、一体何のために生きているんだと苦しんでいる彼。


  まるで野黒新の頭を下げたままで大切に画帳を抱えながら涙を零している様に、困らされているようにと眉間に皺寄せて行きつつ、悲しみに負けたくないでいるようにと左手を鼻水を垂らしてしまう鼻先に添えては、顔を逸らしていく叔父さんの横顔につられているようにと、波の如く段々強くなり、脳内を苦しめに来ている悲しみに白眼を向かされてしまいそうな気がしならないでいる叔母さんは言う、「私たちは…」ごくりと固唾を飲み込んでは、何とか心の中にある悲しみを抑えて行こうと、強く思っていく彼女は上手く自分の声を聞き取る為に、必死に涙を堪えようとする野黒新の健気な様を見つめていき、「引っ越すんだ…だから…」無理矢理口角を上げて行きつつ、春菜の為に重傷を負っては、二度と上手く言葉を喋る事すら出来なくなっていた彼を、そんなに悲しまないでと慰めて行きたいと、願っている叔母さん、「きっとあの子もそう思っているのでしょ…」

  

  軽く右手で野黒新の左肩に置き、彼が丁寧に抱えては、画帳に微かな皺も残したがないでいる様を見つめていく叔母さんはつい、彼も自分たち同様に娘の事を酷く愛しているんだと、心の中で感じていく彼女は苦しそうにと、ぽつりと渇いた唇を開けていた、「あなたにちゃんと立ち直って欲しい…って…」突然、脳内に浮かんで来る春菜の天真爛漫な姿に、脳天を嬲られているように感じては、どうして彼女にそんなにも酷く事ばっかりと言う思いに、脳内を満たされているような気がしている叔母さん、「うぐっ…」


  「もういい…」自分の右側で佇んでは、まるで自分の胸元から離れていくと、直ぐにも倒れ込んでしまいそうなくらいに酷く震えている彼女の弱り切っている体を、大切に抱えて行きつつ、彼女が発していた自分の鼓膜を殴って来ているような声色に、顔を引かれては、猛然と霞んでいた視野の中で彼女の窶れていた顔を見つめていく叔父さん、「もういいよ…」ゆっくりと両手で軽く彼女の体を抱えて行きつつ、彼女の黄ばんでいるような皮膚を見つめていく叔父さんは、ぽつりと懇願しているようなニュアンスが込められていた声を発していき、「行こう…?」


  「どうして…」自分を慰めに来ているような叔父さんの態度に、心にある苦しみを止める防波堤が完膚なきまで潰されているような気がしならないでいる叔母さんは、思わず猛然と右手を彼の胸元に当てて行きつつ、辛そうにと彼の喉元に額を当てていき、「どうしてあの子が…!」悔しそうにと歯ぎしりして行きながら、とめどなく自分の唇をこじ開けに来ては、自分を取り付いて来ている牢屋のようにと感じている文句を、絶望に満ちている声に乗せていく叔母さん、「どうしてあんなにも優しい春菜が心臓だけではなく…!」現実を受け入れたくないと、体で語っているように小刻みに華奢な肩を前後に振らして行きながら、悔しそうにと軽く震えている右手を叔父さんの胸元に当ててしまう彼女、「こんな目にまでぇ…!」


  自分を攻めて来ているような叔母さんの行動に苦しめられては、口角が斜め下の方向に固定されているような気がしている叔父さんは、辛そうにと歯を食いしばっては、ぼんやりと自分の握りしめていた左手を見下ろしていく、「僕だって…知りたいよぉ…」春菜の両親が親愛なる娘を亡くしていたせいで酷く悔やんでは、喧嘩しているような形相に眉毛をゆっくりと恐怖に上げられているように感じては、上手く鬼どもから彼女を守れなかった自分が全般的に悪いんだと強く思ってしまう野黒新、「ずびばぜん…」猛然と頭を下げては、自分の腰を折らそうとしているようにと、前のめりになっていく彼、一瞬にして胸元の奥から脳に上って来ては、自分の視野を真っ黒に仕上げて来ているような悲しみを、気にかけていく余裕を無くされては、必死に二人に謝って行こうとする彼、「ずびばぜん…」


  「ううん…」額を地面に付けてしまいそうなくらいに、頭を下げに来ている野黒新の様に苦しめられているように思えては、つい心の中にある悲しみは一旦放っておいては、傷だらけになっていた彼を慰めて行きたいと、願っていく叔母さんは何度も首を横に振っていきつつ、軽く右手にあるティッシュで鼻先から垂れていく鼻水を拭いては、ぽつりと渇いた唇を開けていき、「あなたを責めていたんじゃないの…ごめんなさい…」自分が自分たちと同じように傷付いられては、上手く悲しみから立ち直れないでいる彼の前で涙を零していたのは、責任感の強い彼から見ると、きっと叱っているようにも見えてしまうのであろうと思っていく叔母さんは軽く歯を噛んでは、辛そうにと眉毛を顰めては、彼から顔を逸らしていき、「私は…ちゃんと春菜の代わりにあなたにここから離れる挨拶しようって…」斜め下の方向に固定されていた口角が上手く上げる事が出来ずにいるような気がしている叔母さんは、苦しそうにと俯いては、ぽつりと声を発していた、「思っていたのに…」


  野黒新の彼女の悔やんでいる声色に、顔を引かれているようにと額を上げては、自分に溺水を連想させに来る暗闇となっていた瞳に、心を苛まれているようにも感じつつ、傷だらけになっていた彼は、自分たちが話をすればするほどに、傷口は開いてしまうように感じている叔父さんは、腕の中で戦慄している叔母さんの存在を感じて行きつつ、苦しそうにと目を細めては、泣きじゃくる子供のようにと顎を上げては、辛そうに何とか空気を吸い込もうとしている叔母さんの事に、不安を覚えている彼は体中を嬲られているように感じては、叔母さんが悲しみのあまり気絶してしまうんじゃないかと不安になり、急いで離れて行こうと考えている叔父さん、「それじゃ…グダグダになっちゃったけど…」軽く左手で体が痙攣している叔母さんを支えて行きつつ、引き攣っているような口角を上げては、自分に顔を向けて来ている野黒新の瞳を見つめていく叔父さんは言う、「もう行くね…?」


  内心にある悲憤に困らされては、上手く野黒新に笑ってやれないでいる自分は大人としては完全に失格だなと、心の中で自嘲気味になっている叔父さんは悲しそうにと彼に言う、「達者でね…野黒君…」「うぐっ…」突然、自分よりずっと酷く傷つけられていたはずの叔父さんは、自分の気持ちを優先にしてくれては、苦しみのあまり上手く話を紡げなくなっている叔母さんを連れて行こうとする様に、体の芯にある悲しみを刺激されては、上手く叔母さんの肩を擦って行きつつ、寄り添って行くようにと離れている二人の背中姿を見れなくなっている彼は、苦しそうにと俯いては、軽く鼻腔を震わせていた、「うん…」


  まるで自分に悲しまないでと語って来ているような、自分の両手に抱えられていた画帳に苦しめられているように思いつつ、画帳を見れば見るほどに、春菜を守ると語って来ていた傲慢だった自分を恨んでしまう野黒新は、悔しそうにと強く歯を噛んでは、何とか体を潰しては、二度と上手く立ち上がらせようとしないでいる悲しみを抑えて行こうと、強く考えている彼はゆっくりと両手で画帳を開いていた。まったりと自分に笑ってくれているような夕陽を、漠然としている瞳を映し出して行きつつ、憂いに瞳を照らされているような白野は、ぼんやりと椅子に座っては、軽く頬杖を付いていた。


  漠然と両手で教科書を掴んでは、宛ら黄昏に耽っているような白野の横顔に、心を引かれているように思いつつ、軽く鼻翼に力を入れては、彼女の自分に向けようとしないでいる悲しみに溺れているような横顔に、つられているようにと悲しんでは、悔しそうにと唇を噤んでいく和流、目を細められているように感じつつ、自分の両手にある教科書に目線を落としていくと、つい自分たちしかいなくなっていたのに、言いたい事は必ずしもあるはずなのに、何も言えないでいる自分たちの間には、黄昏に橙色に染め上げられていた教室の中にはいない春菜と野黒新が挟まっているような気がしては、苦しそうにと歯を噛んでは、春菜の突然の死は自分は酷く悲しく感じていて、彼女の死を間近で見たはずでいて、彼女と少しばかり曖昧な雰囲気の中にいた野黒新は酷く落ち込んでいて、傷を治している事も心配に思いつつ、二人が遭っていた事故に悲憤を覚えているけれども。


  チラッと潤んでいた黄色の眼を白野のぼんやりとしている顔に向けていくと、悔しそうにと鼻翼に力を入れては、野黒新と春菜に向けていた思いは一切の嘘偽りのないもの何だと心で感じて行きつつ、自分と同じように親友が遭っていた突如の出来事に憂いを覚えている白野の事を思うと、つい野黒新にやけに好意を抱いて来ていた彼女にとっては、恋敵になる前に、春菜がいなくなっていたのは、好都合と言うあんまりにも酷く感じながらも、その言葉は当てはまるんだと漠然と考えていく和流。


  「うっ…」忽然、脳内に浮かんでいた天真爛漫な白野を酷く打算的で、それも友人の死と、片思いをしている相手の酷く弱っている時に、つき込むような輩に仕立てあげていた事に不満を覚えては、そのような思いを抱いている自分の方こそが、一番汚らしい存在なんじゃないかと強く考えては、白野は弱っている野黒新の事を放っておくことはできないのだろうと思いつつ、二人の間には、自分の方が邪魔者みたいな感じになっているんだと思っては、辛そうにと唇を噤んでは、彼女に野黒新についてどう思っているのかどうかを、はっきりにする度胸は自分には持てるはずもないんだと内心で強く思っては、急いで教室から離れて行こうと強く考えている彼はごくりと固唾を飲み込んでいた。


  ”ギィー”まるで自分の耳に差し込んで来ているような、椅子が床を擦っていた音に見開かされては、思わず猛然と音をしていた方向に目線を向けていく白野、ぼんやりと一刻も早く自分のもとから離れたがっているような、灰色の髪の毛を引いていくような制服を着こなしていた和流の横顔に見開かされては、呆然と艶やかな唇を開けていく彼女、「あんた…」突然、否応なしに自分のドアに向けて踏み出そうとしていたような両足を、止めに来ていたような白野の酷く弱っては、勝手にも思えるくらいに、彼女は自分を必要としていて、自分を求めているような気がしている和流、ぼんやりと俯いては、彼女の憂いに侵されていた表情は、出来る限り見ないようにと心掛けては、彼女の横顔を見てしまうと、つい話しかけて見たくなるけれど、彼女に、実は野黒新の事が気にかけていて、物凄く心配しているんだと、親友ならば酷く当たり前のようにも伝わって来る言葉のはずなのに、野黒新に滅茶苦茶好意を抱いている彼女の口から、そのような言葉を聞いてしまうと、つい自分にはもうこれっぽちのチャンスも残されていないと、心の中で思っては、勝手に悲しんでしまうんだと考えている和流。


  引き攣っているような左側の口角を上げて行きつつ、右手で握りしめていた鞄が少しばかり力を抜けていた右手に、捨てられているようにと少しばかり床に近づいていたように感じている彼、「何か、用かな?」忽然、和流が自分に向けて来る話に、繊細な左側の眉毛がビクッと跳ねらせているような気分になれている白野は、ぼんやりとぱちくりして行きつつ困っているようにと左手を上げて行きながら、軽くこめかを掻いていき、「用は…特に…ううん、」軽く首を横に振っては、チラッと自分が机の引き出しに置いていた黄色の封筒に一瞥してしまう彼女は、まったりと目線を机にある黄色のアヒルが小さな白い帯と戯れていたような筆箱に、付けていた降参していたようにと両手を上げては、胡坐をかいていたパンダのキーホルダーに一瞥していく、「なくもない…けどさ。」


  白野のまだ自分と話をしたがっている様に、口角をくすぐられているように思いつつ、まったりと右手にある鞄を机の上に置いていく和流は淡い笑みを浮かべては、夕焼けを背にしているような、酷く麗しく思える彼女に尋ねていき、「ぼーっとしてたぞ?」自分がぽつりと声に乗せていた一言に見開かされては、嘘だと言いに来ているようにとあんぐり口を開けている彼女の瞳を見つめていく和流、「さっきからずっと。」


  忽然、彼が紡いだ軽く自分の心をくすぐりに来ているような話に、無理矢理唇を閉ざされては、心にある興奮を刺激しに来ては、まるで自分の胸元を引いて来ているような彼に顔を近づいていく彼女、「さ、さっきからずっとって…」ぱちくりして行きつつ、宛ら自分が上げていた少しばかり弱っているような口調で、何かしらの事を感知しているようにとビクッと眉毛を跳ねらせていた彼の顔を見つめて行きつつ、照れくさそうにと軽く左手の人差し指でこめかみを掻いて行きながら、横目で彼の顔を見ていく白野はぽつりとピンク色の唇を開けていき、「み、見てたのかよ…あたしの事を…」


  「えっ?」刹那、否応なしに自分の顔を逸らして来ているような言葉を投げに来ていた白野の、夕焼けに照らされているせいで微かに紅潮しているようにも見えて来る頬が、やけに可愛く感じている和流はつい顔を逸らしていたのに、まだ眼で彼女の顔を追っている自分の素直過ぎた瞳に、文句を向けて見たくなりつつ、何度も鼻翼に力を入れては、軽く左手の人差し指でこめかみを掻いていく彼、「い、いや?」


  大袈裟なまでに肩を竦めては、自分は別に完全に彼女の事しか見えていないって、訳ではないんだと言うニュアンスを話に込めていこうと、強く思ってしまう彼、「別に…」唇をすぼめて行きつつ、自分が机の上に置いていた鞄に左側の眉毛がビクッと跳ねらせているようにも思えては、ヒントを貰えたような気がしてならないでいる軽く猛然と右手の人差し指を立てていく、「宿題を片付けてから、家に戻って大学の資料とかを調べていくつもりだから、」猛然と額を上げては軽く繊細な眉毛に力を入れては、自分の言葉の信憑性を増していこうと強く考えている彼、「たまたま見えたって言うか、」引き攣っているような右側の口角を上げて行きつつ、軽く人差し指で頬を掻いていく彼は、チラッと教室の前にある黒板から彼女に目線を向けていき、「見せられてたって感じ?」

  

  あからさまに少しばかり戸惑っているような雰囲気を醸し出して来ている和流の態度に、眉毛を軽く跳ねらされているように感じては、口角が斜め下の方向に向けられているような気がしている白野、「そ、そうなんだ…」ごくりと固唾を飲み込んでは、恐る恐ると肩を縮めては、軽く左手を橙色のスカーフを付けていたような机に付けていく彼女は、ゆっくりと臀部を椅子から離れて行きつつ、向きになっている子供のように自分と顔を合わせようとしないでいる和流の横顔を見つめていき、「あのね…」


  宛ら何かしらの酷く衝撃を受けているようにと、弱っている声を発して来ている白野の態度に心を引かれては、猛然と黒板から彼女に顔を向けていく和流、「うん、」自分に伺っているような態度を見せてくれている白野の眼を見つめては、自ずと彼女の存在に口角を上げられているように思えては、軽く左手を胸元に当てて行きつつ、丁寧に頷いていく彼、「ちゃんと聞いてる。」和流の自分の顔を映し出してくれている黄色の瞳と、夕陽に照らされているような、紅潮していた皮膚に目を細められているように思いつつ、チラッとやけに静かになれていた教室に一瞥してしまう白野、背中に当たって来る夕焼けに体を押されているように思えては、心の奥からこみ上げて来るもどかしい思いに、口角を苛まれているような気がしては、思わず軽く歯を噛んでいく彼女は軽く眉間に皺寄せては、猛然と潤んでいた深いピンク色の瞳を彼に向けていた、「あたしの事を、どう思ってるの?」


  ”ドクンー”刹那、やけに愛嬌のある様を自分に見せてくれては、否応なしに強く自分の心を抉りに来ているような白野の一言に見開かされては、唇が否応なしにこじ開けられているような気がしてならないでいる和流、自分の身体を固定しに来ているような白野の眼に、体の芯を揺さぶられているような気分を味わっている彼は、恐る恐ると戦慄している目線を彼女から離れていき、「ど、どう思ってるのって…?」

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