第255話勇者なんてものはいらないのですよ、世の中には。


  まったりと硬くなっては上手く自分に吸わせてくれないでいるようにも思える空気に、胸元を膨らまされているのを感じて行きつつ、斗奴雷の自分を敵に回そうとしている態度に眉間に皺寄せられているようにも感じては、成績は悪くない彼がどうしても愚かのように思えては、成績が良いからと言って社会に入ると何もかも自分の思うが儘に運んで行けるのを勘違いしているのではないかと、考えてしまう教師はゆっくりと背筋を伸ばして行きながら顎を上げては、斗奴雷に自分の仕事を影響を及ぼすような真似をさせてはならないと強く考えて行きつつ、まだ社会に心身共に嬲られていない斗奴雷に予習でもしていこうと考えている教師は、彼の向きになっている態度を馬鹿にしているようにと軽く右側の口角を上げては流し目で彼の顔を見ていき、「あなたは勇者なのですか?」


  ゆっくりと右手の人差し指を立てて来ている教師が自分に投げて来ていた一言に、喉を詰まらされているような気がしてならないでいる斗奴雷、「えっ?」間の抜けた声を上げていた斗奴雷のきょとんとしている様に鼻をくすぐられているように思えては、思わず可笑しそうに笑ってしまう竜祥は残念そうに何度も首を横に振っては、勇者であろうとも、ちゃんと事績を世に残して行かないと、誰もが彼の生き様を記録したりはしないんだと考えつつ、斗奴雷は間違いなく勇者の素質を持っているけれども、今、彼がしようとしているのを決して誰か記録されるような出来事ではないんだと思っている。


  斗奴雷の自分が彼に投げていた質問に頭を殴られては、ぼんやりと自分の顔を見るしか出来なくなっている様は少しばかり滑稽にも感じては、クラスメートの為に買って出てはいい気になっている彼は実に可笑しいな存在に感じてしまう教師は、軽く首を彼に向けて伸ばして行きながら声を発していた、「勇者な訳ないものね?」軽く右側の口角を上げては横目で苦しんでいるようにと、眉間に皺寄せている彼の事を見ていく教師、「私は生まれてこの方一度も魔物を目にした事がないのですから。」


  教師が斗奴雷の心を刺激しにいくような話を耳にして行きながら可笑しそうに軽く口角を上げては、自分は人生今まで散々なまでに童話の中でしか出てこない魔物より、ずっと恐ろしい人間の形をしている怪物を見て来ているつもりだと考えてしまう竜祥。教師が口にしていた話に不満を覚えては歯ぎしりしている斗奴雷の横顔に不安を強いられているように感じつつ、切なげに尼姥姥の死に麻痺されていたような鼻を啜ってしまう折尾は、つい賢いはずの斗奴雷は例え教師が紡いだ滅茶苦茶な話に納得していなくとも直接彼に文句を言うより大人しく従っている振りをしては、裏で何かしらの事をするべきなんだと考えている彼女。


  「勇者なんてものはいらないのですよ、」まったりと顎を上げて行きつつ、ゆっくりと左手を胸元に当てていく教師は怒りのあまり上手く言葉を紡ぐことが出来ずにいる斗奴雷の、面白いくらいにどうでもいい人の死に怒っている様を見下ろしていき、「世の中には。」「うっ!」教師が紡いだ自分の心を抉っては、心臓を貫いて来ているような言葉に口角を一瞬にして斜め下の方向に強く引っ張られているような気がしては、勇者になるつもりはないでいる自分はただ、尼姥姥の死を無意味な事にしたくはないだけなんだと強く考えては、教師には二人目の尼姥姥のような存在がクラスに出てしまうのを恐れないのかと彼に問い詰めてみたくなっている斗奴雷は、悔しそうにと歯ぎしりして行きつつ、ゆっくりと椅子から離れていた臀部を椅子に付けては、もし教師に自分の言い分を聞き入れてくれると言うのなら、尼姥姥も我妻に何度も虐められて来なかったのであろうと思っている。


  斗奴雷のまるで自分に説得されているようにとゆっくりと臀部を椅子に付けていく様に、目を細められているようにも思えては、可笑しそうにと軽く鼻で笑っていく教師はいとも簡単に怯んでいる彼は大した事もないんだと内心で考えて行きながら、手紙の中で確実に名前を出されていた彼さえ変な事をしないと言うのなら、クラスメートたちに当たり前だと思うくらいに、尼姥姥は頭の可笑しい奴なんだと仄めかし、まったく彼の死が学校側に、自分と関わっていない証拠を貰えないと言うのなら、彼の遺族も自分をどうにかする事は出来ないと考えている教師は軽く鼻で笑っていき、「あなたは賢い選択をするのを、」まったりと顎を引いては軽く左手を胸元に当てたままで、流し目で斗奴雷の顔を見ていく教師はニヤリと口角を上げては声を発していた、「心から願ってますよ?」


  尼姥姥の手紙を読み上げていた時に悲しんでは、泣いていた自分の演技にも言える程のリアクションを脳内で振り返って見ると、つい自分は教師なんかを止めて役者と言う道を選んでいくべきなんだと内心で自分の事を褒めて行きつつ、自分だって酷く一人の学生を亡くしていたのを悲しんでいるんだと皆に知らせては、自分はあくまでも客観的に尼姥姥は頭が狂ったから死んでいたんだと言う結果を分析しては、皆に伝えていたんだと言う立場でいようと考えていた教師、「皆様も分かりますよね?」


  軽く口角を上げて行きつつ、再び抜け殻となっては項垂れている斗奴雷の事を気にする事無く、彼は特別注意しては他の学生が自分の足を引っかかって来ない事にも気を遣っていくべきだと考えている教師は言う、「このクラスには勇者と自称する頭のねじがちょっと緩い学生がいたら、」尼姥姥は間違いなく頭が可笑しくなっていたから自害していたんだと考えては、彼は一体どんな事に遭って死のうと思っていたのは、自分とは確実に関係している故に、自分とは関係している事になってはならないと強く考えている教師は目を細めていき、「ちゃんと学校側が責任を持ち、」軽く左手の人差し指を立てては流し目で自分が紡いでいる言葉に興味を引かれては、眉間に皺寄せている学生たちの顔を見ていく彼、「カウンセラーを予約致しますよ?」


  「うっ…」教師の自分たちが彼の言う事を聞かないと、彼が尼姥姥の事を頭の可笑しな学生に仕上げていたように、まだちゃんと生きている自分たちにも無理矢理精神の病に苦しめられている事に仕立てようとする様に、頭の奥が炸裂しているようにも感じては、身体の奥からこみ上げて来る無力感に心に曇りを纏われているような気分になれている斗奴雷、「この…」強く右手でガッツポーズを取っては左手を腰に当てて行きながら、自分は何を言っていたのかを上手く理解できているように、恐る恐ると頷いてくれている学生は皆等しく賢くていい子なんだと褒めてみたくなっている教師は、目を細めて行きつつ口角を上げては、皆の事を鼓舞するようにと声を発していた、「皆でこの苦難を乗り越えて行きましょう。」


  教師の既に尼姥姥の死を忘れては、ただ自分たち学生を見張る以外の事を考えていない態度に口角を斜め下の方向に固定されているようにも思えては、辛そうにと力を入れなくなっている顎を上げては、歯を噛んでいく斗奴雷はぽつりと喉から沈んでいるような声を上げていく、「魔物め…」喉を割らしに来ているような怒気に苛まれてはつい自分たちが学校側を裏切ったりしない方が、身のためだと言いに来ていた教師の様に頭を侵されているような気がしつつ、悔しそうにと強く歯を噛んでいく斗奴雷は何度も鼻翼に力を入れては、苦しそうにと両手を握っていた。


  「どうかしたのかな。」呆然と自分の心に巨大な穴を付けに来ていたような暗闇に悩まされては、苦しそうにと軽く歯を噛んでしまう斗奴雷は自分の頭上に投げて来ているような声色を気にする事無く、悔やんでいるようにと歯を噛んでは自分の太股の上に置いていた両手を見つめていく。「おい、」斗奴雷の傷心に耽っているようにと俯いていく様に少しばかり苛立ちを覚えつつ、眉間に皺寄せていく父親はチラっと横目で自分の左側に座っては無言でお椀を持ち上げてはスープを飲んでいく母親の様に一瞥しては、母親のまるで落ち込んでいる斗奴雷の様を見えていないかのような態度に目を細められているように感じては、横目で黙り込んでは項垂れていた斗奴雷の表情を自分の視野から消していたような机の上に置かれていた、彼のお椀の中に座っていたご飯の湯気を見つめていく父親は、軽く右手にある箸で彼のことを指して行き、「話を聞いてんだよ、阿保。」


  「あ…」突然、少しばかり切れているような父親の声色で紡いだ些か優しさが込められているようにも思える言葉に、眉毛を跳ねらせているような気がしてはぼんやりと額を上げていく斗奴雷、「いや…」悲しんでいるような自分の顔を映し出してくれている父親の怒っているようにと、眉間に皺寄せている様から顔を逸らしていく斗奴雷はついまるで自分の視界を退かしに来ているような母親が着こなしていた淡い赤い色のワンピースから目線を左側に向けては、ぽつりと弱っている声を発していた、「別に何でもないよ…」


  「そう?」斗奴雷の項垂れてはご飯を食べる気にもなれないでいる様に戸惑いつつ、軽く鼻翼に力を入れてしまう父親はゆっくりと左手にあるお椀を食卓に置いて行きながら、彼の左頬に浮かんでいた小さな瘤に目を細められているような気がしている彼は、ぽつりと声を上げていき、「そうには見えないけれど?」まったりと右手にある箸をお椀の上に置いてはは、ゆっくりと背中を椅子に付けて行きつつ、頑なに自分と顔を合わせようとしないでいる彼の顔を見つめていく父親、「何が遭ったんだ?」まるで自分にこれ以上彼に話しかけて欲しくないと知らせに来ているように、眉毛をひそめては歯ぎしりして行きつつ、何度も首を横に振っていく母親の態度を気にする事無く、流し目で項垂れては、悔やんでいるように軽く唇を噤んでいる斗奴雷の不機嫌そうな表情を見ていく父親は、冗談交じりに声を発していき、「便秘か?彼女に振られちまったのか?」


  宛ら自分のことを小馬鹿にして来ているような父親の本当に、自分のことを心配してくれているのかどうかも定かではない喋り方に少しばかり不満を覚えつつ、悔しそうにと軽く歯を噛んでいく斗奴雷は、つい教師が自分に向けて来ていた話のせいで心が酷く嬲られ、上手く立ち直れそうにないような気分になっているのにと父親に文句を言ってみたくなっては、自分を嘲笑って来ているような父親の自分の落ち込んでいる様をからかって来ているように上げていた口角に目線を向けていく彼はぽつりと声を発していた、「違うし…」潤んでは少しばかり血走っていた深い紫色の瞳で父親の白髪で出来上がっていたような前髪を映し出して行きながら、不満そうにと軽く唇を噛んでしまう斗奴雷はぽつりと呟いていく、「彼女を作った事ないし…」


  斗奴雷のまたしても自分から目を逸らしていた行動に口角を上に固定されているように感じては、滅多に落ち込んでいる様を自分たちに見せてくれないでいる彼がようやく子供らしい姿を自分たちに見せてくれるようになってくれた事を思うと、ついここは一つ、人生の経験を彼の二倍以上に積んで来ていた自分が何かしらのアドバイスして行こうと考えている父親は、まったりと腕を組んでは納得しているように何度も頷いていき、「だからか…」


  父親のまるで自分の追い詰められては、どうしようもないくらいの悩みを見破ってくれているような様に戸惑いつつ、ぼんやりと眉毛をひそめては小首を傾げていく斗奴雷は父親が自分に向けて来ている勿体ぶっている様に、体を引かれているようにも思えては、ぽつりと渇いた唇を開けていた、「なんですか…?」斗奴雷の自ら自分のことを頼ろうとする様に口角を上げられているような気がしてならないでいる父親は、軽く左手の人差し指を立てては深い紫色の瞳を睨むように見つめていき、「だから拗ねてんだな?」眉間に皺寄せては自分が紡いだふざけた話を理解できていない彼に笑っていく父親は、自慢しているようにと軽く顎を上げて言う、「いい年して彼女の何十人も作ったらどうだ?」


  ”チャンー!”突然、まるで自分と父親の会話は五月蠅いぞと語って来ているようにと強く右手にあるお椀と、左手で握っていた橋を食卓に向けて叩きつけていた母親の態度に驚かされては、ビクッと肩を跳ねらされていた斗奴雷は恐る恐ると肩を縮めて行きつつ、ごくりと固唾を飲み込んでは横目でまるで自分にさっきの呆けに突っ込んで欲しいと語って来ているような父親の白い歯を見せては、満面の笑みに心を責められているように感じつつ、自分の何もかも嫌っている母親がきっと自分の声を耳にするものおぞましいと考えてるのに違いないはずだとぼんやりと考えて行きつつ、軽く歯を噛んでは、汗ばんでいる両手を握っては悩んでいる故に中々返事をしようとしないでいる自分に不満を覚えているようにと、鼻翼に力を入れている父親の態度に心を潰されて仕舞いそうなくらいに握られているような気分を味わっては、チラっと母親の血走っている眼で食卓にある彼女のお椀を睨んでいる様に一瞥していく斗奴雷。


  軽く歯を噛んでは、戦慄しているようにも思える心の畏怖を抑えて行きつつ、ゆっくりと目線を肩で呼吸しているようにと体を起伏させている母親の体から逸らしていく彼、「何十人って…」引き攣っているような右側の口角を上げて行きながら、困っているようにと軽く右手の人差し指でこめかみを掻いては、まるで自分たちと共にご飯を食べているような母親の向こう側に置かれていたお椀に目線を向けていく斗奴雷、「僕はそんな暇はないよ…」


  ごくりと固唾を飲み込んではつい天井にあるライトに照らされていた金色の額縁の中に封じられていた雨依の幼い頃の写真に、心を軽く嬲られているように思えては、母親に顔を向けているはずの写真がどうしても自分に笑って来ているように思えては、つい自分は彼女を家から連れ出すべきではなかったんだと、心の中で数え切れない程に悔やんでいる思いと、尼姥姥が自分に向けて来ていた最後の詫びに頭を潰されてしまいそうなくらいに痛くなっているような気がしている彼は軽く歯を噛んでは、何度も首を横に振っては、落ち込んでいるだけだとなんの解決にもなれないんだと思っている彼は、ぽつりと渇いた唇を開けていく、「まだいい大学に入るための勉強をしないとだし…」


  斗奴雷の雨依の写真を見つめては何度も首を横に振っていた様に、歯ぎしりしてみたくなっている母親はどうしても彼は自分が死んでいた娘のことを、いつまでたっても引き摺っては雨依の死から抜け出せないでいる事を馬鹿にしては、首を横に振る事で無言で抗議しに来て挑発しに来ているような気がしつつ、斗奴雷の落ち込んでは項垂れている頭を睨むとつい彼を、このまま家から追い出そうと強く考えてしまう母親、彼のことを目にすればする程に内心にある憤怒が募っているような気がしてならないでいる母親は、悔しそうにと強く歯を噛んでは、自分がしようとしている事を阻んで来ているように無言で彼の横顔を見つめては、彼の落ち込んでは自分たちに同情して欲しい演技に騙されている父親に顔を向けていく母親、「最近、」軽く両手を握りながら、自分が上げていた怒りに満たされている声に興味を引かれているようにと眉毛をひそめて行きつつ、自分の顔を見つめて来ている父親の瞳を睨んでいく母親は彼の顔を見つめたままで、斗奴雷の事を見たくないと強く願っている彼女は軽く顎で彼の方を指していく、「学校から連絡が来てこいつの成績が落ちているんだと言ってたよ。」

 

  ”ドクンー”突然、まるで自分の酷く弱っては消えなくなってしまいそうな心に追い打ちをかけに来ているような母親と、教師がしていたコラボレーションに心臓を抉られては、体に無理矢理クレーターを植え付けられていたような気がしてならないでいる斗奴雷、「うっ…?!」酷く悔やんでいるような唸り声を漏らしていた斗奴雷の様に目を細めて行きつつ、納得しているようにと軽く首を縦に振っていく父親は言う、「やっぱりか、」何度も首を横に振っては斗奴雷の左頬にある小さな瘤は、間違いなく好きな子の為に誰かと喧嘩していたせいで出来ていたものなんだと考えてしまう父親は、軽く右手で額を擦っていき、「彼女がいないからいけないのか…」


  父親の本気で自分が彼女がいないせいで悩んでいるんだと思い込んでいる様に目を半開きさせて行きつつ、飽きれているようにと口角を斜め下の方向に向けてしまう斗奴雷は、つい自分にはそんな贅沢にも言える悩みをしていく暇はないんだと父親に向けてみたいと思っている、「違うよ…」父親の悩んでは何度も首を横に振っていく様に心を少しばかり救われているような気分になれては、彼は自分と同じように世の中にある全ての汚らしいもので作り上げていたような斗奴雷のことを、まともに見るべきではないんだと心の底から考えている母親は言う、「担任の先生から学校の周りに変な連中がうろついているのを知らせに来てたわ、」軽く鼻翼に力を入れては猛然と刃の如く鋭い眼差しを斗奴雷に投げていく母親、「絡むなとも言ってきてたよ。」


  母親が紡いだ一言に左側の眉毛をビクッと跳ねらされていたように思えては、唇を先手を取って来ていたような教師に無理矢理こじ開けられているように感じては、心を崖に追い詰められているような気がしてしまう斗奴雷。母親が声に乗せていた言葉に戸惑いつつ、困っているようにと眉毛をひそめては右手で顎を擦っていく父親は、横目で激昂になっては少しばかり赤くなっている母親の顔を見ていく、「変な連中って?」


  父親が自分に投げて来ている質問に困らせてはぼんやりと小首を傾げてしまう母親、「さぁ…?」悩んでいるようにと自分を凝視しに来ている父親のやけに担任の教師が語っていた変な連中について、知りたがっている様に苦笑いしてみたくなっては、まったりと暖かい空気を吸い込んで行きつつ、大人しそうに両手を太股の上に置いていく彼女、「なんか自害していた学生がいて、」”ドクンー”忽然、またしても自分の心を殴りに来ているような母親が口にしていた、自分が考えていた真実であるはずの尼姥姥の死を証明してくれていた言葉に歯ぎしりしてみたくなっては、教師は尼姥姥が自殺していくくらいの事に遭っていたのを知りながらも、自分の教え子が一体どんな事に遭ってたからそこまでの事をしていたのかを調べてくれないで、それどころか自分たちに遺族に協力するなと知らせに来ていた態度を思うと、つい心底名門校であるはずの教師の事を嫌っては、教師であるべく人間ではないんだと強く思っている。


  「それでその子供の両親は学校にケチをつけに来ているらしい。」ぼんやりと腕を組んだままで自分に説明してくれている母親の話を耳にして行きながら、納得しているようにと軽く頷いていく父親は横目で悔やんでは歯ぎしりしている斗奴雷の横顔を見ていく。軽く右手の人差し指を立てては、結構良い学校のはずなのにそのような学生が存在していた事と、どうしても問題しか体にない斗奴雷がその学校に入れた事を思うと、一瞬にして学生が何人自害しても可笑しくないと納得してしまう母親は、きっとその学校は斗奴雷のように問題しかいない学校であるのだろうなと考えつつ、まだ自分に担任の教師が紡いだ言葉を聞きたがっているような父親の瞳を見ていく彼女は言う、「子供に変な事を言わないでと言い寄られないことを注意しに来ていたよ?」


  「へー」母親が紡いだ話をぼんやりと耳にして行きつつ、チラっと横目でまるで母親に馬鹿にされて来ては、酷く落ち込んでいる斗奴雷の事を鼓舞しているように彼に笑っているような雨依の写真に目を細められているように思えては、頑なに雨依の写真と共にご飯を食べたいと語って来ていた母親が置いていた雨依の写真を目にする度に、心に小さな穴を開けられているような気分を味わっているような気がしてならないでいる父親、「そうなんだ、」


  額縁に向けていた視野は少しばかり霞んでいるように感じては、胸元の奥からこみ上げて来ている傷心に悩まされては、鼻声になっている父親、「どうでもいいけど、」まったりと右手で自分の視野を隠していくようにとこめかみを押さえて行きつつ、チラっと目線を自分の指の間に隠されて仕舞いそうな斗奴雷に向けていく彼は軽く鼻を啜っては、ごくりと固唾を飲み込んでいく、「お前、しょっちゅう勉強してんのに成績が落ちているのって…」自分が上げていた微かに震えているような声色に驚かされているようにと、急いで雨依の写真から自分に目を向けて来ている斗奴雷の顔を見つめて行きつつ、軽く鼻翼に力を入れては、ずっと黙り込んでは何もかも一人で抱えて来ていた息子も自害していた学生のような真似をして仕舞うんじゃないかと不安になり、一瞬にしてちゃんと自分の目の前にいるはずの斗奴雷が霞んでいる視野の中で、雨依と同じような写真になっていたように見えてしまう父親、「うっ…!」


  自分にはもうこれ以上子供を亡くしてはなれないんだと強く思っては、斗奴雷まで亡くして行くと自分にはもう生きたくはないと強く考えている父親は、猛然と右手をこめかみから引いては強く机に置いて斗奴雷の顔を睨むようと見つめていく、「もしかしたらその事に関係してたりするのか…!?」「ううん…」父親の雨依の写真に悲しみを覚えては、またしても涙目になっていく様に口角を斜め下の方向に向けられているように思えては、悔しそうにと軽く歯を噛んでいく斗奴雷は切なげに鼻を啜っては、自分さえ雨依を部屋から連れ出す事をしていなかったらと、雨依の病気が悪化していたトリガーは別に自分ではない事を知りながらも、どうしても自分のせいだと考えては、鼻腔の奥が麻痺されているように思えては、自分がいなかったら、両親は和気藹々と自分の椅子に座っていた雨依と楽しんでご飯を食えているのではないかと思い、自分の頭を刺激しに来ているような苦しみに負けて仕舞いそうな気がしている斗奴雷は、項垂れている自分に熱気を放っているような眼差しを投げて来ている父親の態度に困らせては、何度も首を横に振っていく彼、「別に…」軽く赤くなっている鼻翼に力を入れては、自分が消えて亡くなった所で雨依はもう帰って来ないんだと思いつつ、自分は雨依の死から逃げるのではなくちゃんと向き合っては、彼女の死から感じて来ている悲しみから抜け出しては、両親を苦しみの渦から連れ出すんだと強く考えている彼は、ぽつりと戦慄しているような声を漏らしていた、「関係ないよ…」


  「そっか…」斗奴雷が彼が自害していた学生と大して関わっていない事を知れるとつい安心しては、亡くなっていた学生に申し訳なく思いつつ、自分の息子が無事でいてくれるのなら、自分にはそれでいいんだと考えてしまう父親、「ならいいけど、」軽く右手で息子が自分たちから離れては、二度と自分のもとに戻ってこない事を思っていたせいで酷く痙攣していた胸元をなで下ろして行きながら、斗奴雷の軽く鼻を啜っている様を見つめていく、「ちゃんとその言葉を貫いて行けよ?」


  軽く唾液を飲み込んでは、横目で自分の顔を見つめて来ては斗奴雷の落ち込んでいる様を見たくないでいる母親の態度に一瞥しては、雨依を亡くして十数年を経っても悲しみから抜け出せないでいる自分たちの態度を思って行きつつ、急に我が子を亡くしていた両親はきっと酷く狂っても可笑しくない傷心に嬲られているんだと思い、何度も鼻翼に力を入れてはやけに甘く思える息子が変な事をしないのを注意してやらねばと、強く考えている父親は眉毛をひそめては厳かな表情を浮かんで行きつつ、潤んでは赤い糸に囲まれているような深い紫色の瞳の中にある自分の顔を見つめていく、「面倒くさい事は避けたいんだからな。」


  「うっ…」安堵の吐息を吐いていた父親が自害していた学生は自分とは関係していない事を知れていた瞬間で、あからさまに落ち着いていたのに、亡くなっていた生徒の家族は今にもさっきの彼と同じ心境でいては、如何にかすることも出来ないでいることを知れようとも、父親もきっと今のように平然と生活して行くのであろうとぼんやりと考えては、どうしても父親の方が正しいように感じつつ、尼姥姥は自分とはあんまり関わっていないはずなんだ、しわざわざ彼のために酷く面倒な事に首を突っ込む必要はないんだと内心で自分に言い聞かせて行きながら悔しそうにと強く歯を噛んでは、ごくりと固唾を飲み込んでいく斗奴雷は眉毛をひそめて行きつつ、潤んでは血走っている眼でお椀を手に取ろとしている父親の顔を映し出していた、「亡くなっていた人のことをどうだっていいって…」


  チラっとお椀から注意を自分に向けて来ては、軽く眉毛をひそめている父親の顔を見つめては、戦慄しているようにも思える視界の中で彼の事を見据えて、自分はどうしたらいいのかと酷く悩んでいる斗奴雷はぽつりと渇いた唇を開けては、震えている声を発していき、「思っているのかな…?」息子が自分に投げて来ていた言葉に目を細められているようにも感じてはぼんやりと目を細めて行きつつ、彼の悩みに体を支配されては上手く隣りに座っていた母親の戦慄している体に気が付いていない態度に、口角を硬直されているようにも思えている父親は軽く息を鼻で吐き出しては、目を瞑っていた。


  


  


  

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