第22話それじゃ、出てきてくれる?

  「待って。」忽然、否応なしに自分に向けては左手の手のひらを見せて来ている母親の行動に見開かされている春菜、ぱちくりしている彼女はごくりと固唾を飲み込んではぼんやりと首を縦に振っていた、「うん…」軽く息を吸い込んでは目を細めている母親、宛ら自分の怒涛のように流れている心境を抑えるかのように、息を吸い込んでいた彼女は切なげに眉をひそめてしまい、「あんたのことを叱ったりはしないけど、だけどね?」春菜にプレッシャーを感じて欲しくないでいる母親はぼんやりと自分の顔を見つめている春菜に向けては丁重に言葉を紡いでいる、「また今度で何かがあった時に、先ずは私か、」軽く左手を胸元に当てている母親は弱っている声を上げながら、軽く視線をドアの方向に向けながら春菜に言う、「お父さんと相談してくれないかな?」


  まるで自分が言っていた言葉に納得しては、約束してくれているように首を縦に振っている春菜の事を見てしまうと、ちゃんと自分の返事に答えてくれている彼女の可愛い顔立ちに心の防波堤が潰されて仕舞ったように思えている母親、「本当に…」視界が霞んでは鼻の奥が痺れているように感じている母親はまるで叱れていた子供のように弱々しい声を上げていた、「本当にめっちゃくち心配してたんだからさ…?」「うぐっ…」母親の泣き出してしまいそうな瞳を見てしまうと、自分の事を叱ってくれないでいる母親に心が苦しめられているように感じている春菜、左手で画帖を握っていた彼女は霞んでいる視界の中で母親の事を見つめては猛然と前のめりになって、両手を伸ばして行き、「ごめん…なさい…」


  温かい体から伝わって来ている赤い髪の毛の匂いに軽く笑っている母親、目を細めている彼女は春菜の事を慰めているかのように左手で春菜の背中を撫でながら春菜を慰めているかのようにまったりと体を左右に揺らしながら彼女に尋ねている、「うん…それで…?」横目で春菜の赤くなっている耳殻に一瞥した母親はゆっくりと春菜の熱い頬から体を引いては彼女に尋ねている、「どうしてこんなことをしたのかな?」


  強く両手で母親の体を抱いていた春菜、ゆっくりと自分から離れては真剣な眼差しを自分に向けて来ている母親から感じてくる無言のプレッシャーに打ちひしがれてしまいそうにと感じている春菜、軽く左手で自分の左側で眠っていたかのような画帖に一瞥した彼女は軽く歯を噛んでしまい、野黒新の事を勝手に母親に言うべきじゃないと思いつつ、彼の事を言わないと母親に説明が付けないと思っている春菜。


  歯を噛んでは画帖を握っている春菜の悩まされているような姿に軽く口角を上げられているように感じている母親、ぽつりと渇いた唇を開けては彼女に微笑んでいる母親は両手を顎に付けながら彼女に言う、「その画帖と関わっていることなんだよね。」母親のまるで自分が言おうとしている言葉を先に感じ取って仕舞ったかのような一言に見開かされては絶句している春菜、「え?」


  あんぐり口を開けている春菜の戸惑っているような仕草に微笑んでいる母親、目を細めている彼女は軽く左手を伸ばしては春菜の軽く画帖を握っている両手に触れてしまい、「病院まで送っていた途中、」ゆっくりと視線をまるで瞬きを忘れたかのように自分の事を見つめている春菜に向けている母親は苦い笑みを浮かべて言う、「どうしてもその画帖を放したくないあなたの手から奪って見てたわ。」


  母親のことを一瞬エスパーだと思って仕舞った春菜、彼女が紡いだ言葉に納得しているかのように軽く首を縦に振っている彼女はぽつりと呟いてしまい、「そ、そう…?」ぼんやりと自分が軽く握っている画帖を見下ろしていた彼女は照れくさそうに額を上げては母親の顔を見つめてしまい、「放さなかったんだ…?」「うん、」春菜の紅潮している頬に飾り付けられている微かに疑っているような眼差しに口角を上げては、軽く首を縦に振っていた母親はチラッと彼女の手にある画帖に目を向けてしまい、「もうこれでもかよ!」強く両手を握っては力を込めているような声を上げていた母親、春菜のぼんやりとしている姿に淡い笑みを見せている彼女、軽く左手を伸ばしては春菜の目の下にある涙の粒を拭いて言う、「って、思ってしまうぐらいにね。」


  母親の力を目一杯込めていたような姿勢に口角が斜め下の方向に引っ張られているような気がしている春菜は思わず照れくさい唸り声を上げている、「うう…」「それで、画帖が救急車に落ちていた時にチラッと見えたりしてね?」春菜の戸惑っているかのように自分に頬を撫でながらぼんやりと項垂れている姿を見ている母親、宛ら彼女の視線についていくかのように彼女が手にしていた画帖に一瞥した母親は苦い笑みを浮かべてしまい、「ごめんね?」まるで自分が紡いだ言葉に疑問を持っているかのように小首を傾げては、自分のことを見つめて来ている春菜に申し訳なさそうな眼差しを送っている母親はぽつりと呟いていた、「あんたのプライバシーを覗いてたりしててさ。」


  母親の自分が馬鹿なことをしていたはずなのに叱ってくれる事なく、それどころか謝って来ている姿勢に目を細めては自分は母親にとってはどれだけ大事な存在なのかを知れて仕舞ったように思えては、感動を覚えている彼女、「う、ううん…」霞んでいる視界に苛まれては軽く首を横に振っている春菜はゆっくりと視線を画帖から母親に向けて行き、「私の方こそ…」軽くオブラートに包まれていたかのようなピンク色の唇を噛んでいた彼女、項垂れている春菜は申し訳なさそうに母親に顔を向けてはぽつりと唇を開けていた、「ごめんなさい。」


  春菜がもう一度自分に謝って来ている姿に口角がくすぐられているように思える母親、腰の硬くなっていたかのような感覚に耐えながら背筋を伸ばしている母親は右手でガッツポーズを取って言う、「それじゃ、ヒーローを助けに行こうかな?」「えっ?」母親が紡いだ一言に見開かされては、ぱちくりしている春菜は小首を傾げて、恐る恐ると両手にある画帖を上げては自分の唇を隠してしまい、「どうして…?」


  母親の自分の弱っている声を耳にしてしまうと、ニヤリと口角を上げている姿に体がやけに熱くなっているように思える春菜、ごくりと固唾を飲み込んでいた彼女はぱちくりながら母親に尋ねてしまい、「ヒーローは実在するって事を…」歯がゆい気持ちになっている春菜は母親の自分の事をからかっているような表情を見てしまうと、思わず鼻翼に力を入れて、目をつぶっては大きな声を上げてしまい、「ど、どこまで見てたのですか!チラッとって!言ってたのに!」


  春菜の驚かされては恥ずかしがっている表情を楽しんでいるかのような母親は嬉々とした笑みを彼女に見せては、右手の人差し指を立てている、「お母さんには全てがお見通しよ~?」不満そうに唇をすぼめている春菜の事を見ている母親は軽く腕を組んではニヤリと口角を上げてしまい、流し目で彼女の事を見ている母親は言う、「分かるのかね、春菜ちゃん?」眉間に皺寄せている春菜は母親の含みのある笑みを警戒しながらぽつりと呟いていた、「何がですか…」軽く左手を顎に付けている母親は鋭い光が過っていた視線を春菜に向けてはニヤリと口角を上げてしまい、「人はね、好奇心という悪魔に操られて来た生き物なのよ?」ゆっくりと両手で握っていた画帖を下ろしている春菜は横目で母親の事を見ながら彼女に尋ねてしまい、「そ、その心は…?」


  「えへへ、」とぼけているかのように左手で後頭部を擦っている母親は申し訳なさそうに横目で春菜の事を見ながら口角を上げてしまい、「チラッと見ちゃったから気になっててさ?」眉間に皺寄せている春菜の恐る恐ると首を縦に振っている姿を見ている母親はチラッと画帖に一瞥して言う、「画帖なのに日記に使うのかよ!って!」急に大きな声を上げていた母親に見開かされては喉が詰まらせたように思える春菜、「うっ!」絶句してはあんぐり口を開けている春菜のことを見ている母親、軽く笑っている彼女は右手の人差し指を立てては提案しているように彼女に言う、「いい日記帳を買ってあげようか?」


  「ううう…!」母親に辱しめを受けているように感じている春菜、猛然と両手で画帖を抱えては母親から画帖のことを隠している春菜は、強く鼻翼に力を入れては不満そうな声を上げている、「いいよ!大事なのは思い出なんだから!」唇を尖らせている春菜は怒っているかのように前のめりになっては母親に言う、「どんなものでもいいよ!」春菜のすっかり元気になれている姿を見ると、嬉しそうに笑っている母親は何度も首を縦に振ってしまい、「左様ですか~」


  両手を腰に当てては背筋を伸ばしている母親の威張っている姿勢に眉間に皺寄せている春菜、「じゃ、じゃ…」艶やかな唇をすぼめている彼女は横目で母親の事を見ながらぽつりと声を上げてしまい、「さっき何で全部のことを言わなかったのよさ…!」春菜が上げていた物事の核心に触れて来た質問に軽く口角を上げている母親、「誠実で、友達思いで、」左手を伸ばしては汗に濡らされていた赤い髪の毛を撫でている彼女は微笑みながら言葉を紡いで行き、「素直な子に育てていく春菜ちゃんの事を見ると、」顎を引いてはまるで自分の事を警戒してきているような春菜に淡い笑みを見せている母親は言う、「お母さんは嬉しい限りだわ。」


  母親の嘘偽りのない笑みに心が打たれているように思える春菜、つい目を細めている彼女は昨日ぼんやりと聞こえていた母親の悲鳴のような泣き声を思い出してしまうと、どうしても母親の事を怒れないでいる、「も、もう!!」宛ら拗ねているような彼女はぷいと首を横に向けては母親に素直にお礼を言えないでいる、「お母さんが嘘つきであることを知れた娘は悲しいよぉ!」照れ隠ししているように目をつぶっては自分に顔を向けて来ていた春菜の行動に淡い笑みを浮かべている母親は言う、「でも叱って上げてなかったから、心配した分と、」軽く左手に視線を向けている母親は立てていた人差し指と親指を見ながら軽く中指を出して行き、「訳を知りたい不安の分と、お医者さんに診てもらった分の報酬と、」軽く視線で春菜が握っていた画帖を指している母親は言う、「見なしてもらってもよろしいのかね?」

  

  「うう…」母親が平然とした口調で紡いだ心配してくれていた言葉を耳にしてしまうと、彼女が自分の為に必死に泣いていたせいで、声が上手く上げれないでいるかのようにしわがれていた事と彼女の酷く腫れていた瞼を見てしまうと、つい辞儀をしては彼女にもう一度謝りたくなっている春菜、項垂れている彼女は悔しそうに両手を握ってはぽつりと声を上げている、「今回だけですからね…」


  「うん。」春菜の少し元気を無くしているような一言に軽く口角を上げている母親は言う、「ほら、お粥を食べて、薬を飲んでから、」目を細めている母親は春菜が大事そうに握っていた画帖に一瞥しては、彼女に淡い笑みを見せながら声を上げていた、「彼に会いに行きましょう?」「うん…」まるで自分の意向を伺ってきているような母親の仕草を目にすると、心が温かくなれているように思える春菜はぽつりと呟いてしまい、「ありがとう…お母さん…」ゆっくりと椅子から起き上がっている母親は軽く右手で項垂れている春菜の頭を撫でながら言葉を紡いで行き、「それはお父さんに言って上げて?」眉間に皺寄せては戸惑っている春菜が自分に理由を尋ねて来ているような眼差しに微笑んでいる母親は言う、「今まで見たことないぐらいに泣いてたわよ?お父さん。」


  まるで何かしらの事を思い出したかのようにあんぐり口を開けては、自分の事を見上げている春菜から視線をドアに向けては苦い笑みを浮かべている母親はぽつりと呟いていた、「そしてもう一度元気になれるあんたと一緒に暮らせるのなら、」母親が平然と言葉を紡ごうとしている口調が酷く震えているようにと感じている春菜、目を細めている彼女は昨日の二人は自分はもうダメだと思っていた事を間接的に知らされていた。


  「二度とあんたを一人で家にいさせたりしないって、」春菜の反省しているように俯いている姿に目を細めている母親はぽつりと声を上げていた、「そう誓ってたわよ?お父さん。」自分がしていた軽率な行動のせいで二人にいっぱい迷惑をかけてしまった事に悔やんでいる春菜、野黒新の事を助ける以外の事を思っていなかった自分は愚かなのかと思い始めている彼女は軽く首を縦に振っていた、「う、うん…」軽くピンク色の指先で自分の体温で温かくなっているような画帖を握っている春菜、目を細めている彼女は自分が本当に野黒新の事を部屋から出すことが出来たら、両親には申し訳ないけれど、後悔はしないと思っている春菜は迷わずに両手で画帖を捲ろうとしている。


  繊細な指先が少し硬い画帖の向日葵がプリントされていた表紙を捲って行き、目を細めている春菜は自分の両手にある画帖から自分のコーヒー色の床に踏んでいた両足を見下ろしてしまい、軽く鼻翼に力を入れている彼女はごくりと固唾を飲み込んではゆっくりと額を上げてしまい、”とんとん”恐る恐ると右手を軽く握ってはひんやりとしたドアを叩いていた春菜、「新?」切なげに眉をひそめている春菜は軽く左手で握っていた画帖を胸元に付けては弱っている声を上げている、「いるの?いるんでしょう?私よ。」ぼんやりと部屋の外から聞こえて来る春菜の一人で質問しては自分で答えていた声に戸惑っている野黒新、呆然とベッドの上に座っては無言でテレビで放送しているアニメーションを見つめている彼、春菜が急に自分の家に入って来ていた事に戸惑っている彼は充血している瞳をドアに向けながら小首を傾げている。


  「こら孫よ、」宛ら自分の事を叱って来ているような爺さんの声に見開かされては、恐る恐ると足先に力を入れては淡い青色のシーツを足先で掴んでいる野黒新。「春菜ちゃんはな、わざわざお前の為に病院送りになってたんだぞ!」両手で膝を抱えては体を縮めたいと思っていた野黒新、ドアに視線が固定されているように思える彼は爺さんが上げていた声に眉間に皺寄せてはつい背筋を伸ばしてしまい、「病院送りって…」春菜の体の具合が気になり始めている彼はついドアの方向に体を寄せている。


  激昂になっている爺さんは自分の右側で立っては唇を噤んでいる春菜に一瞥してしまうと、何としても春菜に野黒新の事を見させてやらないとと思ってしまう彼は言う、「一目ぐらい見たらどうじゃ!」目の前にあるドアが微動だにしない事を目にすると、思わず歯を噛んでしまいそうになっている爺さん、忽然、胸元の奥からこみ上げて来ている熱い気に胸元が押されているように感じている彼は猛然と右手を上げては自分の唇を押さえてしまい、「こほこほ!」ぼんやりと自分の足先を見ていた春菜、自分の左側から聞こえて来ていた爺さんの咳をしている声に見開かされている彼女は大慌てで頭を上げては苦しそうに咳をしている爺さんの事を見つめてしまい、「だ、大丈夫ですか?!」


  「お、落ち着いて行きましょう?」爺さんの咳しているせいで赤くなっている頬を覗き込んでいる母親、爺さんの左側で立っては春菜の事を見守ろうと思っていた彼女は右手で彼の背中を擦りながら彼の気持ちを宥めようとしている、「ね?おじいちゃん?」少しずつ冷静になれているかのような爺さん、目を細めている彼は白い眉毛をひそめてはドアに目を向けてしまい。チラッと部屋のドアを開けようとは思わないでいるかのような野黒新に一瞥した母親、目を細めている彼女はぽつりと声を上げてしまい、「新も大変なことにあって、どうしたらいいのかが分からなくなっているんだからさ?」爺さんを一階に連れては彼にまったりと座れる場所を用意して上げようと考えている母親、自分の左手に支えられているかのような爺さんの背中を軽く押しながら彼の足元に気を付けては悲しそうに項垂れている彼に言う、「彼の事を叱らないで上げて?」


  ゆっくりと母親と一緒に一階に向かって歩いて行く爺さんの背中を見届けている春菜、爺さんの事が心配になっては目を細めている彼女は軽く唇を噤んでは項垂れてしまいそうになっている、ぼんやりと自分の両手で握っていた画帖を見下ろしている彼女はチラッと野黒新の部屋のドアに目を向けてしまい、自分の為にドアを開けてくれないでいる彼に絶望を覚えては、自分にはもう彼の助けになれる方法を全てを無くしてしまったのではないかと思い込んでいる。


  ”ガター”忽然、まるで自分の鼓膜にノックしてきているような音に見開かされてはあんぐり口を開けている春菜は猛然と額を上げている。コーヒー色のドアとドアフレームの間で隠れているかのような赤い糸に苛まれている琥珀色の瞳を緑色の瞳で映し出している春菜、恐る恐ると左手をドアの縁に付けていた野黒新の腫れていたピンク色の瞼の下にある瞳がまるで鏡の如き、自分の姿を映し出してくれている事に感謝すらを覚えて始めている春菜、口角が自然と上げている彼女は淡い笑みを浮かべてはぽつりと渇いた唇を開けている、「やっと、会いに来てくれたのね?」


  春菜が嬉しそうに紡いだ言葉に見開かされてはぱちくりしている野黒新、ドアで体を隠していた彼はぼんやりと春菜の顔を見つめては、顔色が優れない彼女の事が心配になっている彼はつい体をドアとドアフレームの間に出してしまい、眉をひそめている彼は心配そうな眼差しを春菜に向けながら声を上げてしまい、「どうしたの…?病院に行ったって…」春菜の体の調子が気になってはつい前のめりになっている野黒新は鋭い眼光を彼女に向けてながら春菜に尋ねてしまい、「本当なの…?体は大丈夫なの…?」


  鼻声になっては声がしわがれていた野黒新がマシンガンの如く自分に投げて来ている質問に口角がくすぐられているように思える春菜、彼が自分の事を気にかけてはドアを開けてくれていた事に嬉しく思いつつ、満面の笑みを浮かべている彼女、ぼんやりと視線を自分の両手で握っていた画帖に向けていた春菜、野黒新と会えていたせいで心がやけに強く鼓動を刻んでいるような気がしている彼女はゆっくりと視線を彼の皺だらけの黄色の長袖シャツから彼の心配そうな表情に目を向けて行き、「これを見せたかったんだ。」


  春菜の潤んでいる緑色の瞳に視線が固定されているような気がしていた野黒新、彼女がぽつりと上げていた声に細い眉毛を上げられてはつい間の抜けた発して仕舞った彼、「え?」左手の親指を画帖に食い込んでいた春菜は軽く画帖を捲っては野黒新に自分が昨日からずっと見せたかった物をやっと彼に見せる事が出来ると思うと、幸せそうな笑みを浮かべている。ぼんやりとまるで太陽の如く自分の顔を照らしてくれている春菜の笑みに見とれていた野黒新、ぱちくりしている彼は小首を傾げては彼女の繊細な両手で握っていた画帖のページに視線を向けている。


  赤いクレヨンで描かれていた赤い髪の毛をしていた満面の笑みを浮かべていた女の子の右側にある”2”の数字をぼんやりと見ている野黒新、チラッとページの右側に描かれていた白いショートヘアーをしていた女の子の隣りにある”1”の文字を潤んでいる琥珀色の瞳で映し出している野黒新、心臓の鼓動が徐々に加速しているようにと感じている彼。画帖にある拙い絵に感動されている野黒新の事を目にしてしまうと、宛らもう答えを貰ったような質問を口にしている春菜は言う、「まだ覚えているのかな?」鼻腔の奥が痺れては上手く息を吸いこめないでいる野黒新は強く首を縦に振っていた、「うん…!」


  画帖にある二人の絵を見れば見るほどに悔しそうに歯を噛んでいる野黒新、左手で掴んでいたドアノブを放しては、まるで春菜を見るのを恐れているかのような彼は項垂れては辛そうに両手を握り締めてしまい、強く赤くなっていた鼻先に力を入れている彼は震えている声を上げている、「けど…俺には…!」体の芯が戦慄しているように感じている彼は上手く声を上げる事が出来ずにいる、強く唇を噛んでいた彼は首を横に振りながら言葉を紡ごうとしている、「ヒーローなんて…!」


  野黒新のまるで閉ざしていたかのような心を自分に開いてくれていたような反応に軽くピンク色の口角を上げている春菜、「ううん。」平然とした声を上げながら目を細めている彼女は軽く首を横に振りながら野黒新が言おうしていた言葉を遮ってしまい、ぼんやりと自分に潤んでは涙をこぼしてしまいそうな瞳を向けて来ている野黒新を見つめている彼女、左手で白い髪の毛をしていた女の子の左側にある”1”の数字から手を放しては、軽く繊細な人差し指で赤い髪の毛をしていた女の子を指差している春菜は屈託のない笑みを彼に見せては、言い放った、「あなたは、私のヒーローなんだよ?」


  ”ドクンー”忽然、体が仰向けになってしまいそうな衝撃を受けていたような感覚に見開かされては、春菜が自分の顔を映し出してくれている緑色の瞳に自分が吸い込まれているような錯覚に襲われてしまう野黒新、「うっ…!」思わず唸り声を上げていた彼は苦しそうに強く鼓動を刻んでいる胸元を左手で押さえてしまい、眉間に皺寄せては俯いている彼は春菜と視線を合わせる事が出来ずにいる、「俺は…俺なんかは…」


  まるで自己否定しているように苦しそうに首を小刻みに横に向けて振っている野黒新の事を見つめている春菜、「誰にも一人じゃどうしようもない時ぐらいはあるよ?」目を細めている彼女は軽く左手で野黒新の右肩に当てては彼のことを慰めているかのように柔らかい綿のような声色で言葉を紡いでいく、「だから、私たちがいるじゃない。」「うぐ…」自分の心をからかいに来ているかのように彼女の声色に感動を覚えては、左側の口角が斜め下の方向に向けて引っ張られているように思えている野黒新、悔しそうに歯を噛んでいる彼は体が戦慄している感覚に耐えながら恐る恐ると額を上げては自分のことを照らしてきているような春菜を見つめてしまい、「けど…」


  「けどじゃないよ?」軽く右手に力を入れては画帖から力を貰えているように感じている春菜、目を細めている彼女は微笑みながら軽く首を傾げて言う、「一人で全てを抱え込むのはやめよう?」「どうして…」まるで自分の為に自分を苦しめて来る黒い負の感情で出来上がっていた渦の中に入ろうとしている春菜の行動に苛まれては、息苦しく感じている野黒新はぽつりと声を上げていた、「お前まで…辛い事に巻き込みたくないよぉ…」


  顔が徐々に赤くなっては額に青筋が立てている野黒新の悲しみと絶望に苦しめられている姿を見つめている春菜、宛ら彼が紡いだ言葉を否定しようとしているかのように軽く首を横に振っている彼女は言う、「あなたは私のヒーローなんだから、あなたが苦しまれている時に、」軽く左手を野黒新の戦慄している体から離れては画帖にある二人の女の子を指差している春菜は屈託のない笑みを浮かべている、「私とこの子があなたのことを支えて上げないと誰が支えるって話なんじゃないのかな?」


  優しく打ちひしがれている自分の事を受けいれようとしている春菜の姿勢に感動を覚えては軽く歯を噛んでいた野黒新、「春菜…ちゃん…」ぽつりとまるでオブラートに包まれていたかのような渇いた唇から飛び出ていた単語に口角を上げている春菜、「一緒に行こう?学校に行って、」野黒新が受けていた傷が自分が治すことが出来なくとも、彼の傍で一緒に傷が治る日まで一緒にいてあげたいと切に思っている春菜は微笑んだ、「皆と会おう?」


  目を細めている春菜のまるで自分と同じように泣き出してしまいそうなぐらいに潤んでいる緑色の瞳を見つめている野黒新、「う…」苦しそうな唸り声を上げていた野黒新の事を見てしまうと、平然とした笑みを浮かべている春菜は言う、「大丈夫だよ、どんな時でも、」軽く左手を握っては自分の胸元に付けている彼女は自分の心臓の高鳴りを感じながら、散乱した髪型をしていた野黒新の事を見つめては言葉を紡いで行く、「私はあなたの傍にいてあげるからさ?」軽く顎を引いている彼女は野黒新に嘘偽りのなく言葉を紡いでいる自分のことを信じて貰いたいと思いながら揺るぎない声を上げていた、「逃げたり、隠れてたりなんかしないわ。」


  「本当に…?」悲しそうに眉毛をひそめている野黒新は恐る恐ると春菜に顔を近づきながら彼女に尋ねてしまい、「お母さんと…お父さんのようにならない…?」まるで捨てられていた子犬のような潤んでいる琥珀色の瞳を自分に近づいて来ている野黒新の事を見ている春菜、迷わずに首を縦に振ろうと思っていた彼女はチラッと自分の胸元に一瞥しては悩んでいる唸り声を上げてしまい、「うーん…」野黒新の自分の事を信じたいと思っているような潤んで瞳を見てしまうと、どうしても彼の事を騙すのは出来なくなっているように思える春菜、辛そうに苦い笑みを浮かべている彼女はぽつりと声を上げていた、「ならないとは言い切れないかな…」


  春菜が素直に紡いでくれていた言葉に冷静を取り戻せたように思えている野黒新、項垂れては軽く体を引いている彼はぽつりと呟いていた、「騙したりは…しないんだね…」野黒新が自分に言ってきた言葉を耳にしてしまうと自嘲気味になっては軽く笑ってしまう春菜は言う、「そんなことをしたら、」軽く自分の胸元に左手の人差し指を当てては自分と野黒新を交互に指差している彼女は言う、「お互い、悲しむからさ。」


  春菜が言っていた言葉は間違ってはいないと思いつつ、アニメや漫画とゲーム以外にも、誰かに傍で自分と一緒に遊んだり、楽しい時間を過ごしてみたいと思ってしまう野黒新はぽつりと呟いた、「そう…」「でもね?」軽く左手を伸ばしては野黒新の悔しそうに握っては震えている右手の手首を握っていた春菜、まるで自分の左手に視線を自分の顔まで吸い寄せられているかのように、ゆっくりと自分の事を見て来ている野黒新に屈託のない笑みを見せている春菜は言う、「私が決められる限りは、ずっと傍にいるよ?」


  まるで自分の平坦な声で紡いだ話に衝撃を受けていたかのように眉毛が上げていた野黒新の潤んでいる瞳の奥を覗いて見たいと思っている春菜はぽつりと声を上げていた、「それだと…ダメかな?」恐る恐ると肩を縮めてはまるで自分に拒絶される事を怖がっているような春菜の仕草に口角がくすぐられては淡い笑みを浮かべている野黒新、「ううん…」目を細めては軽く首を横に振っている彼はぽつりと声を上げていた、「ありがとう…」


  野黒新が自分に見せてくれている淡い笑みを見てしまうと、自分がしていた行動は決して間違ってはいなかったと思えるようになっている春菜、「それじゃ、出てきてくれる?」チラッと緑色の瞳で階段を指していた彼女は母親と会話している爺さんの体の事が心配になっては一刻も早く爺さんに野黒新は部屋から出れたという事を伝えてあげたいと、切に思っている春菜は野黒新に言う、「おじいちゃんはあなたのことをずっと気にかけてたから、」野黒新の右腕を掴んでいた左手で無理矢理彼の体を引っ張り出してしまったら彼にとっては逆効果になってしまうんじゃないかと懸念している春菜は、彼に補足するように言葉を紡いで行き、「ちゃんと挨拶しに行こうか?」宛ら自分がまた部屋に入って仕舞って、出なくなるんじゃないかと懸念しているかのように自分の右手を軽く握っては震えているような春菜の心配そうな眼差しに目を向けている野黒新、チラッと彼女が握っていた画帖に一瞥してしまうと、自分はしっかりしないとと思えるようになっている彼は軽く首を縦に振っていた、「うん…」野黒新が頷いては迷わずに彼の左側にあるドアを退かしている姿に目を細めては微笑んでしまう春菜。

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