第155話 梅シロップデザートパーティ


 買い物を終えて帰宅したなら、手洗いうがいを済ませ、エプロンを装着し……同じく割烹着を装着したコン君と一緒に、梅シロップを使ったデザート作りを、コン君に手伝ってもらいながら始めていく。


 まずは白玉作りだ。

 ボウルに白玉粉を入れて、水を少しずつ入れて……ゆっくりとしっかりかき混ぜる。


 そうしたら適量を手に取り、手の中で転がして丸めてちょうど良い大きさの白玉にしていって……しっかりと形が出来上がったら、真ん中を指先でもってぎゅうっと押し込む。


 真ん中をへこませておくと中まで火が通りやすくなるので、全ての白玉粉を白玉にしたら潰していって……その作業をしている間に、水を入れて火にかけて沸かしておいた鍋の中に、出来上がった潰れ白玉を入れていって……火が通って茹で上がるとぷかりと浮かんでくるので、それを穴あきおたまですくい取り、すくい取ったら水を張ったボウルの中に入れておく。


 そうやって全ての白玉が茹で上がったなら……今度はフルーツを洗い、一つ一つ丁寧に皮を向き、一口サイズに切っていく。


 スイカなどもあり中々大変だが、フルーツさえ切り分けておけば、後は梅シロップと炭酸水を混ぜたものを入れて、そこに白玉を入れたら完成……なのでここが正念場だと、コン君のちっちゃな手を借りながら一生懸命に頑張っていく。


 切り分けたフルーツをボウルにどさりと入れて、ラップをかけておいたなら……次は梅シャーベットだ。


 シャーベットは、ボウルなどの容器に入れて冷凍庫で冷やしてかき混ぜて、また冷やしてかき混ぜて、カチコチにはしないように気をつけながら定期的にかき混ぜるか……カチコチに凍ったものを機械などで細かく砕けば完成となるものだ。


 今回は朝起きた段階で冷凍庫に入れていて、朝食後にかき混ぜていて、歯磨きなどをし出かける前にかき混ぜていて、そうして帰ってきた今かき混ぜていて……そんな頻度でもしっかりとシャーベット状になってくれていたので、それで完成とし……皆が揃うまでは冷凍庫に戻してそこで眠っていてもらう。


 梅シロップヨーグルトは梅シロップとヨーグルトを何かの容器……保存瓶などでも良いから、それに入れてただ混ぜるだけ、のし梅は昨日作ったのがある、梅サイダーも梅サワーも、梅と炭酸水を、梅と炭酸水とりんご酢などのフルーツ酢を、これまた保存瓶などの容器に入れておくだけで良し。


 フルーツの皮むきなどは少し大変だったけども、それでもいつもより簡単過ぎる程に簡単で、ささっと出来てしまう梅デザートをそうやって揃えたなら……テチさんが起きてくるのと、レイさんがやってくるのを静かに待つ。


 朝食時は起きていて、しっかり食事をし顔を洗ったりもしたテチさんだったけども、どうやらそれからすぐに……俺達が出かけた後すぐに眠ってしまったようで、その二度寝から未だに目覚めないでいる。


 レイさんもそろそろ来るという約束だったはずなのだけども、未だにやってこず……そんな風に二人が揃うのを待っていると、台所のテーブルの上でソワソワとしていたコン君が……待ちきれなくなってしまったのか、行動を開始する。


 まず割烹着を脱ぎ始め……脱いだならきっちりと畳んで、それから自分の分のガラス容器とスプーンを棚から取り出し……それを両手で持って俺のことをじぃっと見つめてくる。


 その目はうるうるとしていてキラキラと輝いていて……そこに込められた凄まじいまでの期待感に負けた俺は、フルーツ入りのボウルと、白玉入りのボウルと、梅サイダー入りの保存瓶を順番に居間のちゃぶ台の上へと持っていって……移動が終わったなら席につき、盛り付け用のおたまを構えて……同じく席について両手でもった器を構えているコン君へと声をかける。


「さて、コン君。

 オレンジ、グレープフルーツ、スイカ、パイナップル、キウイ、イチゴ。

 どのフルーツを食べたいですか」


 するとコン君はぱぁっと笑顔を輝かせながら、ボウルの中を見て、自分の手の中にある器の大きさを再確認して、もう一度ボウルの中を見てから……無茶だと分かっていながらも、欲望に抗えなかったのか、


「全部!!」


 との元気な声を上げる。


 その声に大きく頷いた俺は……全部のフルーツを一つずつ、一切れか二切れだけ器に盛り付けていって……そうしてから2つの白玉を盛り付け、梅サイダーをゆっくりと器の中に注ぎ込む。


 フルーツの香りはもちろんのこと、梅の香りもふわっと広がって、サイダーがしゅわしゅわと音を立てて、各種フルーツが色とりどりに輝いていて。


 そんなガラスの器の中の世界をじぃっと見つめたコン君は、それをそっとちゃぶ台の上に置き、スプーンをぐいと構えて……「いただきます!!」と、いつになく力を込めた挨拶を口にしてから、梅サイダー白玉フルーツポンチへと挑みかかる。


 買ったばかりの新鮮なフルーツはもちろん美味しい訳で、できたて白玉も良い食感に出来上がっているようで、梅サイダーの味の割合も全く問題ないようで、スプーンでフルーツをすくって口の中に運び、これまたスプーンでサイダーをすくって口の中に運んだコン君は、懸命に口を動かす。


 リスの耳をぴくぴくと動かし、尻尾をゆらりと揺らし、どんどんどんどんスプーンを動かして……ガラスの器の中をあっという間に空にする。


 空にしたならまた俺がおたまを構えて、コン君は笑顔を輝かせて……もう一杯を盛り付けたなら、コン君がそれを食べている間に、台所の冷蔵庫へと向かう。


 そこからシャーベットを取り出して、別の器に盛り付けて……本体は冷凍庫に戻し、器だけをコン君の下に持っていって……差し出すとコン君は、そちらもまた夢中になって食べ始める。


 そうやって俺とコン君だけの梅シロップデザートパーティがつつがなく進行していると、そこに寝起き眼のテチさんがやってきて、配達車の音をさせながらレイさんがやってきて……そうして二人同時にくわりと目を見開き、異口同音に大きな声を上げてくる。


『待っててくれても良いだろう!』


 そんな二人に俺とコン君は『十分過ぎる程に待っていましたよ』との視線を返し……そうしてから俺はおたまを、コン君はスプーンを動かしていく。


 そんな俺達の様子を見てテチさんとレイさんは、大慌てで行動を開始し……テチさんは顔を洗いに、レイさんは手を洗いに洗面台へと向かい、そうしてから台所へと向かって、自分達のスプーンと器を持って……走りはしないけどもそれでも結構な勢いでもって居間へとやってくるのだった。

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