徐々に閉じていく光の扉を
軽い朝の光をすくって水に浮かべるみたいに
桜の花びらは白く淡く消えてしまいそうだった
春に消えてしまう無数の命のざわめきは遠く
秋に散る色付いた葉のはらはら揺らす風の声すら
耳を澄ましてみても囁きくらい
爽やかな季節の指先が頬にそっと触れた
空に巻く白く高い雲に地上の事物を託して望む
夢見がちな君が描くことのできる色は鮮やかだった
夜は昼の否定として君の存在や尊厳を踏み躙って扉を閉じる
毎日おなじ道を歩いて帰った放課後の憂鬱に似た
変化のないマンネリに溺れて息もできずに逃げる
明日をどうか違う一日にしてと西の空の赤に祈るのに
空になるのは五時を告げる鐘の音と烏の鳴く声
夕闇に藍がにじんで描いたグラデーション
一日の長さとさらに長い夜の憂さが深みを増して
水底から浮かぶ泡沫のような星の光を映す
波一つ立たない凪いだ湖面の水のような静謐を求めて
彷徨する街は偽りの灯火ばかりで寂しくて
本物の熱を欲して性の欠けた穴を誰かで埋めて呻く
優しさだというには乱暴で粗雑な熱に火傷する
君だけが欠けた世界を憎んでいる
東雲に浮く小さな黒い影が近づいた
君のいない朝にも相変わらず太陽がのぼる残酷さを
僕に教えてくれる群れる鳥たちの声に今日も
諦めとともにカーテンの隙間を閉じて
僕は君を探して
もういちど眠ることにした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます