乱れた水面の空の反映にすら
僕たちが奪われた不確実性を補完するような狂気がときどき理不尽に誰かを傷つけるとしても薄い虹色の光を反射するただ美しいだけの泡の中でずっと息して、いたかった、苦しかっただけの夕景色にかすかに揺れる楽しげなすすきに混ざる黄色い花に見えないはずのまだ終わらない闘争を見出しては、傷つけることで自ら傷つく不都合を無視して破壊へと世界を推し進めることばかり考えていた君のエゴを僕が忘れてしまうなんて思わないでよ。
何度も一緒に渡ったはずの橋の越える今日に君はいない伽藍堂のような広々とした空っぽの電車の中で遠くの扉まで見通せるのに窓の外では鈍色の雲にわずかに紫が混ざりながら流れて夜を誘うように暗く黒く僕の心とは無関係な色に染めていく。
川を越えた。一人で電車に乗っていた。
乱れた水面の空の反映にすら時の不可逆を見出してしまう人間の感覚の鋭さを恨んだところで宇宙のエントロピーはいたずらに増え続けて愛も憎しみも同じ熱をごちゃごちゃにかき混ぜてしまう過程の一つに過ぎずにいつか訪れる均一でなめらかで完全に混ざり合った光のない世界で再び君に会えることを願う。
無から生まれた宇宙には時間は存在できずに可能性という意味では一回と複数の間に差異を見出せずに一回は無限回と等しい証明になる。
時間はこの宇宙にしかなく、不条理な法則が生み出す悲しみだけが、君の不在だけが、僕に愛を確信させる。
かつて僕は君に会って愛を知った。僕はまだ君に会っていない。何度も繰り返して、これからも何度も繰り返す。これからなど、どこにもないのに。
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