並ぶ数字と命と詩と死がうたう
自殺と他殺に線引きができない僕と君の不器用なだけの言葉遊びが詩にならずにその糸で遠くのひかりを引き寄せるに十分を張力を発揮するか危うい断末魔のような遠いとおい穏やかな輝きこそが死なのだと君は言う。
憤りを胸に抱いて抗う僕を嘲笑うように踊りながら歌をうたった君がどうしてそんなに悲しそうなのかわからないまま命運たちに揺さぶられてにわかに降る死が理不尽だと嘆いたって散って燃えて土と煙だけが結果なのだと諦めてしまっては僕たちが生きた意味などなかったと否定しているみたいで嫌だ。
君は赤い風船がふわふわのぼっていくのを見てヘリウムは空気よりも密度が小さいからだと説明することを拒んだ結果が空を美しく見せてしまって憧れたのだろう危うく脆い夢のような偽りだらけの死という物語に。
目を細めてみても見えない遠くの雲の姿が誰かがかつて残した詩の断片に思えるのは愛の幻想を論じあげた過去の恥と悔いを逃げ腰のまま捨てきれずにずるずる重たく引きずっていることで囚われ続けているのだろうか。
秋にひそかな喧騒が訪れ君との過去の気配がしのびよって喉の奥をくすぐるみたいに僕を咳き込ませる。
未知のウイルスが世界中を覆い尽くして不幸をばら撒いてくれと願った君がもういないのに今日もどこかで誰かが死んでただの数字に変わっていくシステマティックな僕と君以外の人々の表れに虚しさすら感じないくらいに慣れてしまった。
鮮烈な紅のようにほとばしる命を散らして夏の花火にしたはずだった。
君がいた余韻すらも夜は飲み込み闇に閉じた。
音のない世界や光のない世界が想像できないのは無知のせいではなかった。
人と人との繋がりが煩わしくて拒んで孤独が嬉しいのに寂しいのは君のせい。
宇宙が夜からたくさん降ってくるのが怖くて眠るのも恐れて逃げた。
虚無に憧れるのにいつでも君はそこにいるから死が詩を生むのだ。
逃げ出したい木曜日の憂鬱は週を折り返した希望とまだ二日残っているという悲哀とを足して二で割った値に等しいだろうかと隣の人に尋ねてみたくても遠い。
自らの卑しい笑みを食い尽くしても表情が失われてくれないのはとうに感情が失われてしまったからだと非合理に僕を投げ入れてくれるくらい滔々と湧きだすなにかのきっかけすら見つけられずさまよいまよいよいの暗闇に過ぎ去った夢ばかり探してひろいあつめて繋ぎ合わせて詩にすることをくだらないと君は笑うだろうね。
君は意味に囚われている。とか。
傘をささないで歩いて濡れて視線を集めて孤独の色を深めることに僕の意味があるのだとしたら死んだ方が少しはましかもしれないなんて言葉で遊んでみても君は遠いのだ。
遠い遠い。でも詩を書くのはどうしてだろうか。僕は相変わらず君と意味に囚われている。
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