地上の漆黒を逃れる術は案外簡単なのだと語った

暗い海にも波は繰り返し寄せては返り

一度して同じ波などないと泣いた

カモメの鳴き声と高い空を飛ぶとんび

宛名のない手紙に託した言葉は

エルの欠けた世界の縮図に過ぎない

意味のない営みだった


海の声が聞きたいと君は言った

奥津宮を越えて見える海の向こうにすら

自由の国などないのだ

花の散るのを見て流す涙の欺瞞を見破る

そんな無粋を海で洗う

空から降る孤独こそが涙なのだと笑う

濡れ鼠になった君は憧れを空に託した


僅かに顔を出した岩礁の先端に立って

両手を広げて跳ぶ真似をしてみる君は

さっき見たばかりのフンボルトペンギンみたいだ

だから君は飛べないと

僕は高をくくっていたのだ

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