質量が足りなくて光れない君のこと

スーパーノヴァが明るく照らす夜に

君は静かに呼吸をやめた

小さすぎて光も放てないまま

星に拐かされた君の言葉は慰めにもならない

嘘に苛まれた心の歪みは時を砕き

微塵に散る塵埃のごとき命の名残が夜の底に

白く沈むのだった


粒々と降る流星の鳴き声に耳を澄まして

眠るにはまだはやいと袖を引く君

百三十七億年前の光がふりそそぐ今が

意味のない僕らにとって持っているものすべて

足しにもならない角砂糖四つ分の甘みを口に含み

コーヒーフレッシュの偽りを受け入れる


星の夜に彷徨う蝶は愛に怯え

万物が避けようのない引力は案外弱くて

風から受ける力には抗えない

君から心が漏れていく黒く暗く泣く夜だけなのだ


蔑む君の見る夢はただの幻想だと

空から見下ろすあなたは誰だと神は死んだと

おざなりな謝罪を拒み信心を捨てたことを悔い

死にゆく花の名を覚えず祈る

僕は

ススキの揺れる夕を思い出した


好きだと吐きだしそうだった

夏の花火の音に隠してごまかして

届くはずがなかったのに

隠した蕾は成層圏にからめとられて燃える

届くはずがなかったのに


今日も昨日と変わらない

君のいない世界が続く

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