砕ける玉が高く鳴った
桜の丸い蕾を摘んだ君の指先は
微かに赤く爛れ
ささくれからは血が滲んでいた
春が待ち遠しいから
まだ知らない土地の川の水音に耳をすませるように
風の鳴るのに耳を傾け
訪れの時期を探る横顔と短い髪
脳裏に張り付いて引き剥がせない記憶の断片が
桜の花びらよりも早く散った
取り戻せない
色も香りも失われた春に
春があるのだろうか
星の輝きだけを心の慰みにして
君がいないことを救いのように思って
終わりのないように思える
空虚でねばついて重苦しい人生に
ふと投げかけられる詩たち
僕は費やされる
絶えず溢れ出す感情と言葉と映像と写真と絵と
いくらスクロールしても終わりのない
深い水の底を這うみたいに生きて
電子よりも素粒子よりも細かななにかが
きっと君の生き死にを決めてしまった
梅の花が咲いた
春が近い
諦めたはずの恋や愛の予感が
にわかに匂い立ち
僕は憂鬱になる
落ちる
堕ちる
早く君に落ちておけば良かったのだという後悔も
とうに西の空に沈んだのだ
玉は散った
散った塵は細かく空にちりばめられ
宝石のような星が
ひそかに光ったのだった
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