水晶のように透明に澄んで

君が透明なのはもう死んでいるからだと

誰が幽霊が見えないと決めつけたのだと

憤慨した日の太陽は眩しくて

目を細めて黒い瞳を隠して眠る

見る夢はやはり澄んでいたのだ


対岸に浮く球を追いかけて溺れたのは

愛と呼ぶにはいくらか軽くて

恋と呼ぶにはいくらか重い思いを抱えながら

明るい月の夜に渡ろうとしたからね

数多の傷が刻まれたその肉体に

指を這わせて涙を流して

濡れた君のその瞳がどうしても

夜よりも黒くなる暗くなるから病む


河原で鶏鳴を待ちながら君が溺れるのを眺めていた

死が日常にいくらか非日常を運ぶのを

君はよく心得ていた

そうして僕が期待したみたいに膨らむあたりの死とともに

空に急激に上昇して雲の中に飲まれてしまった

憂鬱の雨をいつか降らすのは君

誰かの孤独の隙に染み込むのはいつも君

死んだっていいようって誰かの詩を読んで

もっと読んでよ死んでもいいんだって教えてよ

冷たいあめゆじゅ掴んで泣いてよもう

星空にさよならを唱える夜の君だけが真実であり嘘であり

スルスル抜けて空でそのあゆみを止めた

やめた今日でおしまいって

温かい弁解で自分をいっぱいに満たすのだ


僕らは永遠の少年少女で

優雅な言葉は

昔むかしに公園の砂場に埋めた

恋の物語は始まったばかりなのに呑気な君は死に

原子と分子のまぐわいとは無関係な

素粒子のあどけないたわむれとともに

宇宙の不確定な運命やら宿命とやらを

今日ももてあそんでいる

僕はもてあそばれているのだ

それが少し

嬉しいのだけども

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