ギャルのパンティの雨(お題:薄汚い小雨)

 天から無数の水滴が降ってくる。


 一般的に「雨」と呼ばれるこの現象に対し、マッドサイエンティストのディネットは疑問を抱いた。


 もし、天から降ってくるものを水滴以外のなにかに変えたら、世の中の光景はどう変化するのだろうと。


「というわけで私が開発したのがこの、『ギャルのパンティおくれ実現マシーン』よ!」


「アホかあぁぁぁぁ!!」


 得意げに語るディネットの頭を、友人のアリスはハリセンでぶったたいた。


「いったぁ!? なにすんのよ! 私、殴られるような悪いことした!?」


「なにすんのよ、じゃないわよ!! 窓の外を見て、自分のしでかした所業を確認なさい!!」


 アリスの指差した窓にディネットは視線を向けた。


 窓の外では、天を埋め尽くさんばかりの女性用下着がこれでもかというほど降り注いでいた。


 地獄絵図である。……一部、喜んでいる変態もいるが。


「あらら、困ったことになっちゃったわね」


「笑い事じゃないわよ! 車道や線路がパンツで埋め尽くされて交通がマヒするわ、変態の誤認逮捕が出るわでとんでもないコトになってんのよ!」


「う~ん。試用実験の段階にはまだ早かったかなぁ」


「今すぐ元に戻しなさい!」


 どこまでもマイペースなディネットに、アリスは正常化を要求する。


 だが自分で言っておいてなんだが、アリスは不可能だと考えていた。


 すでに地上に数え切れないほどのパンツが散らばってるこの状況、後片付けするにしてもとても独力では――


「うん、いいよ。はい、ポチっとな」


 アリスは懐から赤いボタンのついたリモコンを取り出すと、ボタンを押した。


 すると瞬時に、空陸すべてのパンツが透明化・液状化してもとの水の雨に戻ってしまった。




 ――ざーっ!!




 パンツの雨が唐突に土砂降りの雨に変わる。奇襲じみてる。


 当然、傘をさしていない人々は雨水でぐしょ濡れとなる。


「これは使用中の間だけ、雨の水滴を別のモノに形状变化させる装置なんだ。だから装置のスイッチをOFFにすれば元の雨に元通り!」


 えっへんと胸を張るディネットに、アリスは静かに問いかけた。


「……ねぇ。ディネット、なにに使うつもりでこの装置を作ったの?」


「え? イタズラ以外になにがあるのさ?」


 なに聞くまでもないことを聞いてるんだと言わんばかりのディネットの顔を見て、アリスは再びハリセンを握りしめた。


 念入りに素振りする。次の一撃を、会心のものとするために。


「あ、あれ? アリス? なんで素振りしているの? ちょっと、なんで何も言わないの!? こわいよ、アリス! 助けて! 反省するから! ごめんなさああぁぁぁぁぁい!!」

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タイムリミット30分で書いた掌編小説集 田村サブロウ @Shuchan_KKYM

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